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40代から変わる人生「記憶の道具」20

英語上達法 2  同時通訳者の記憶術

 知人に同時通訳をしている人がいるので、どうやって覚えているのか訊いたことがあります。 答えは、知らない単語が出てきたら「ムッと睨んで覚える」のだそうです。試してみました。確かに覚えられます。

  そこでどのぐらい覚えているか、「キオクの達人」に入れておきました。普通だと2~3日もすると思い出せなくなるのにムッと睨むと、1週間以上たっても覚えているのです。さすがプロのノウハウ、効果あります。
 でもね、3か月ほどして「キオクの達人」から出てきたときには、すっかり忘れていました。私の場合、この90日(±30日)というのが大きな分かれ目なのです。人によって違うと思いますが、ある期間以上たつとメタ記憶までも失われてしまいます。友人の同時通訳者は、私より記憶力が良く、職業柄同じ表現に出くわす頻度も10倍は多いでしょうからいいのでしょうが、私の場合は、ムッと睨むだけではダメなようです。出くわす頻度不足を補う方法が必要です。
 私はそのためにiPhoneアプリ「キオクの達人」を使っているのですが、これ、毎日記憶力テストをしているようなものです。以前、そういう話しましたね。どのくらいの期間覚えているのか、数字で知ることができるので自分の記憶パターンも見えてきます。そのパターンからタイパのいい学習方法が見つかってきます。
 私の場合、整理すると次の3つです。
① 覚えようとしなくていい。アプトプットを意識して3回リプロダクション
② 1つより、10ある方が覚えやすい!
③ フレーズで覚えると語感が身に着く

簡単に説明しましょう。
覚えようとしなくていい。アプトプットを意識して3回リプロダクション
 リプロダクションというは、再生産という意味です。何も見ないで、いま見たものを復唱することをリプロダクションといいます。使いたいものを覚えるわけですから、その使う場面をイメージして、3回ゆっくり、リプロダクションする。覚えようとするとストレスになります。覚えることは意識しないで、アウトプット場面を意識してカンニングせずに3回繰り返す。それだけで効果があります。1回目はたどたどしくても、3回目にはかなりスムーズになるので、記憶への浸透を実感します。

1つより、10ある方が覚えやすい!
 人間の脳は同じことを繰り返すと、すぐ飽きるようです。飽きるというのは省エネモードに入って働かなくなるということ。だから、一つのことを繰り返しても効果が少ないということですね。繰り返しは3回程度にして、新しいことをする、また忘れたころに戻ってきて3回繰り返す。1つのことを何十回も繰り返すより、次々新しいことを覚えていく方がよさそうです。ちょうど10個ぐらい覚えるころに、1回目の記憶があいまいになっているので、もう一度繰り返す。10分ぐらい時間があるときは、こういう繰り返しがよさそうです。

Editorial cartoon U.S. Economy Janet Yellen, Published December 22, 2015

フレーズで覚えると語感が身に着く
 
ジャネット・イエレン財務長官がまだアメリカの連邦準備銀行(FRB)の議長をしていたころ、”I strongly doubt relief will stoke inflation pressure.” (金融緩和がインフレ圧力を煽るという説には強い疑念を持っている)という発言をしたのが耳に残りまりました。このstoke inflation pressureという表現、カッコいいなと思ったので、「キオクの達人」に入れて覚えることにしました。その後、ふとニュアンスが気になったので、キンドルに入っている英語の本でstokeを検索してみました。すると、ビル・クリントン元大統領共著の小説 “The President is missing.”(邦訳「大統領失踪」)、イギリスの歴史家、 ローレンス・フリードマンの大作 “Strategy A History” (邦訳「戦略の世界史」)、ユヴァル・ノア・ハラリの “Homo Deus” (邦訳「ホモ・デウス」)のどれでもヒットしません。あまり使われない表現なのですね。ところがオバマ元大統領の自伝、“A Promised Land” (邦訳「約束の地」)を調べると3回も出てきました。
 イエレンがこの表現を使った場面が公聴会のような場だったので硬い表現だとは思っていましたが、こうして小説、歴史本、政治家の自伝の4冊を調べてみて、やはりちょっと高尚な、気取ったニュアンスのある言葉なのだろうとニュアンスが伝わってきました。
 語感というのは、使われた場面・コンテクストと一緒に身につくものだと思いますが、こうして実際に使われた場面を意識して覚えていくと程度語感が身につくような気がします。


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