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「変わる組織」はどこが違うのか? 20

プロセスデザイン2 発散の方法

 発散はできるけれど収束ができない、という相談をよく受けます。ところが私の経験はこの逆で、実は発散が難しい。既存の考えからなかなか抜けられないことがほとんどです。見かけ上、たくさん出てきますが、本当の意味での発散になっていないのです。このような経験の人たちも多いようで、ブレストをしても良いアイデアは出ないという極論を言う人も、いますよね。

そこで今回のテーマは、発散のコツです。
私のコツは、次の3つです。
① 事前に考えてきてもらう
② 事前に観察してきてもらう
③ 連想を利用する

ひとつずつ解説しましょう。
① 事前に考えてきてもらう
ワークショップの場で、「発散してください」といっても限界があります。時間が限られていますからね。この限界、結構小さいところにあります。
 人は、目の前にあるものに引っ張られてなかなか離れられないというアンカリング効果もあって、限られた時間の中でひとつのアイデアから抜け出すことが難しいのです。 
 ではアイデアを出すプロはどうしているのでしょうか? 各自、事前に考えてきてからブレストします。博報堂に勤めている友人の加藤昌治さんが、名著「考具」シリーズの中で書いていることですが、キャッチフレーズなどを考えるブレストでは、事前にA4一枚に1フレーズ、各自が何枚も書いてきます。それをテーブルの上に並べてからブレストが始まるそうです。日常のいろいろな場面で気づいたフレーズを書きとめ、それを各自整理し持ち寄ってブレストが始まるのです。こうするとアンカリング効果からある程度逃れることができます。

「考具」三部作の中の1作

 私も、「○○について、10個以上アイデアを考えてきてください」と事前にお題をだして、考えてきてもらうようにしています。発散には、準備が必要なのです。すると、そこに出てきた他人のアイデアに触発されて新しい、質の高いアイデアが触発されます。それを2~3度繰り返すと良いアイデアを醸成することができます。

② 事前に観察してきてもらう
①と同じで、発散のための事前準備をしてもらうのですが、ただ考えるのではなく、製造や小売などの現場に足を運んで観察してきてもらうのがこの方法です。テーマを出して、それにかかわることを現場に行って観察し、現場の人にインタビューしてアイデアを考えてきてもらうのです。「お客さんの気持ちになって」のように視点を指定することもあります。これ、普段見慣れた職場でも発見があって意外と効果があります。

③ 連想を利用する
 事前準備がないと十分な発散は難しいのですが、実際には、どうしても事前準備ができないという場合があります。そういう時は連想を利用します。
 たとえば、「顧客満足度(CS)を高めるには」というテーマで発散するとしましょう。「『CSの高い企業』と言われて、どこを思い出しますか?」と具体名を挙げてもらいます。具体名です。「○○駅前のラーメン店」「アップル」「ディズニー」「スタバ」などといろいろなものが出てくるはずです。
 100位そういう具体名を出してから、「その会社の何が、みなさんにCSが高いと思わせたのですか?」と問いかけ、具体的な答えを付箋に書いてもらいます。「雰囲気」「明るさ」「品質」「製品の機能性」「信頼感」といった抽象的なものが出てきたら「何がその雰囲気を生み出しているのか」「何が明るさを演出しているのか」と重ねて訊いて、具体化を促します。
 こうして出てきた具体的なもの「笑顔」「クレーム対応の一言」「水の中に落としたけど問題なく使えている」といったものを並べ、それを自分たちの仕事に置き換えて、何ができるか考えてもらいます。

 忘れていけないのは、こうした発散をした日の夜から翌日にかけて、良いアイデアが浮かぶことが多いということです。これを拾い上げることを忘れる人、多いんですよね。


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