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こだわりの紅茶

今回のテーマ: 買ったもの
by  萩原久代

毎朝紅茶を飲む。ティーバックではなく、茶葉を購入してティーポットでいただく。ティーポットカバーをして5分待つ。1日のはじめのこの時間、どんなに忙しくても儀式のように行う。心が落ち着く時間だ。

美味しい紅茶を飲みたいと思って、色々なメーカーのブランドを探してたどり着いた紅茶ブレンドは、イングリッシュブレックファースト(English Breakfast)だ。このブレンドは、アッサムやセイロン、ケニアなどの茶葉を混合したものが多い。ミルクに合う香りと深みがあって個人的に好きな味だった。

さまざまなメーカーの同ブレンドを試してみたが、イギリスのFortnum & Mason(F&M)のブレックファーストブレンドが気に入った。アッサム茶ベースのブレンドで、他社のものを圧倒的に凌駕していた。出張などでロンドンによく行っていた1994年のことだった。

それからは、F&Mのブレックファーストブレンドを飲んできた。ちょっと値は張るけれど250グラム缶を買うと、毎朝飲んで2ヶ月半くらいはもつ。一杯に換算すれば40円くらいだ。毎朝のちょっとした贅沢だ。毎朝スタバのコーヒーを買って飲むことを考えれば、安いものである。

イギリス国外でF&Mをどこで買えばいいか。
2015年くらいまで、ニューヨークでF&Mの紅茶を買うのは簡単で安価だった。米国内ディストリビューターがメリーランド州にあって、電話注文かオンラインで購入できた。ところが、2016年、F&Mは米国販売網を一新した。高級キッチン用品専門店のウィリアムズ・ソノマ(Williams Sonoma)と専売契約して、同店舗のみでしか買えなくなった。しかも小売価格は3割くらい釣り上がった。

当時、しばらくショックで、イギリス旅行に行く友人らに頼んで、ロンドンのF&M 店で500グラム袋を購入してもらったりした。が、ロンドンに行く友人も周りにあまりいなくなって、うちのキッチンの在庫は減るばかり。

そこでニューヨークで、手軽に買えるイングリッシュブレックファーストを調達することにした。紅茶・コーヒー専門店をいくつか回って、このブレンドかそれに近いアッサム系ブレンドを買ってみた。気に入ったのはウェスト・ビレッジに昔からあるマックナルティーズ(McNulty’s Tea & Coffee)のイングリッシュブレックファーストだ。

同店オリジナルのブレンドで、アッサムとセイロン、そして中国のキーマン(Keemun)を配合したものだ。軽くスモーキーでほんのり甘い香りが楽しめる。マックナルティーズでは昔からキーマンを使っており、値段が安めのケニア茶はブレンドしないそうだ。それでも小売価格でみれば、F&M製品の価格のほぼ半分で買えるから嬉しい。

マックナルティーズの店内は20世紀初頭の雰囲気で、お茶類とコーヒーが所狭しと並ぶ。
出典:同店HP  https://mcnultys.com/

同店は125年以上の歴史がある。McNultyとはアイルランド人の名前で、元々はアイルランド移民の兄弟が始めた店だったという。現在の店舗の場所から少し離れたところに彼らの店はあったようだ。そして、現在の店舗の場所に移ったのは1920年代だ。すでに異なるオーナーの手に渡ってたようだ。そして、1980年からは中華系のウォン一家がオーナーで、ファミリービジネスとして今日に至る。マックナルティのお店の外観と内装は20世紀初頭からほとんど変わってないようで、その頃にタイムスリップしたような気分になる。

近年は、マックナルティとF&Mのブレックファーストを気分によって交互に飲んでいる。F&Mは2019年に香港に進出したので、香港に行くといくつか缶を調達してニューヨークに持って帰る。それで、ニューヨークいても両者のブレンドを楽しんでいる。


萩原久代
ニューヨーク市で1990年から2年間大学院に通い、1995年からマンハッタンに住む。長いサラリーマン生活を経て、調査や翻訳分野の仕事を中心にのんびりと自由業を続けている。2010年からニューヨークを本拠にしながらも、冬は暖かい香港、夏は涼しい欧州で過ごす渡り鳥の生活をしている。

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