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食習慣の改善によって神経伝達物質を 整え、メンタルの回復を促進できる?!

小さな町の精神科の名医が教える             メンタルを強くする食習慣
飯塚浩著 アチーブメント出版刊(2022年)
https://amzn.asia/d/9dc1B8j

この本は最近、町の本屋さんの棚で偶然見つけた新しい一冊。鳥取県米子市でクリニックを開業している精神科医の飯塚浩氏の本だ。精神科医として、心理療法やP T S D治療など様々な治療に取り組んでいた医師がオーソモレキュラー(栄養療法)と出会い、現在は、食事療法やC B Dオイル、鍼なども取り入れた治療を行い、オンラインサロンも開設しているという。
 内容は教科書的で少し難しい解説もあるのだけれど、読んでいくと著者が、上から目線の治療者という感じではなく、私たちの隣にいる普通の生活者としていろんなアドバイスをしてくれている部分もあってなかなか良い本だ。

メンタルの不調全般に食生活の改善による体の整えが大事

 私は、向精神薬の減薬について、どの薬からどれくらいのスピードや量で減らすのか、減らし方のテクニックとか薬と離脱症状の出現に着目して色々取材してきた。

その結果、急断薬での体調の悪化や、自殺企図が出現する深刻な様子なども見てきたので、「向精神薬はできるだけゆっくり計画的に減らす方が安全」という情報を発信し続けている。しかしその一方で、案外簡単に向精神薬をしている人もいるのは不可解なことだ。

薬だけにフォーカスして減・断薬に関する法則のようなことを考えようとすると、現れる症状の違いは個人の体質の差という以外に説明のつかないことが多く、「色々な体質の人がいるよね」というところで思考は行き止まりとなる。

「個人の体質の差だからわからない」で思考停止にならずに何のせいなのだろうともう少し掘り下げてみると、やはりメンタルのの状況は、心理的なことと食生活=栄養療法に影響される。「人間は皆食べているものと空気と水で作られてる」と当たり前のことだけど。

神経伝達物質に影響を与える8つの要素を考える


そんなわけでこの本も、”向精神薬の減薬の方法”として栄養療法を具体的に解説しているわけではないのだが、著者はメンタルの不調を向精神薬のみで治療した場合に効果があるのは5〜6割と言い切っている。

そして、そもそも、うつ病や統合失調症は「神経伝達物質そのものの病気ではない」という。その理由として神経伝達物質に影響を与えるのは以下のような多数の因子であることを説明している。
一般的な精神医療では、神経伝達物質が出るようにしたり減らしたりというようなことを向精神薬だけで人工的に行うことを治療としているのでつい薬物療法が全て治療法のように思ってしまうけど・・・。

1体質(心配性 覚醒系が昂りやすい)
2栄養(タンパク質 鉄 ビタミンB6 ナイアシン)
3糖質による血糖値の乱高下
4体内の炎症
5睡眠覚醒リズム
6ホルモン
7運動
8ストレス

つまり心身の不調のどの段階にあっても向精神薬服薬の有無に関わらず、栄養状態を見直し体を整えることが大事だということが見えてくる。

栄養状態が満たされてくると脳の不快な誤作動が減るらしい

そういえば、栄養療法を使ってメンタルが回復した人たちと話していると栄養が満ちてくることにより、イライラやネガティブな思考が減って柔軟性が出てきたという体験者が多く、話していてもなんだかニコニコと機嫌がいい方が多い(笑)
では具体的にはなにをどのように食べたらいいのだろうか?栄養療法を扱った書籍を読み比べてみるとどこに一番力を入れるかはそれぞれ違うが、大体ほぼ同じことを指摘し、推奨している。本書についても少し見ていくつかピックアップしてみよう。(これが全部ではないので詳しくは本を読んでね)

本書で一番に指摘するのは血糖値スパイク問題

●糖質制限
「血糖値スパイク」とは白砂糖や小麦、白米、白いパンやお菓子などの精製された糖質が血糖値を急上昇させる。これにより体は「たくさんの食物をとった」と判断してインスリンを大量に分泌した結果急激に血糖値が下がる現象のことをいう。血糖値の乱高下が、不安障害、うつ病、慢性疲労、不安、不眠に関係するだけでなく体の中に炎症があればそれを亢進してしまう。対処法としては糖質を制限するということになるが、糖質制限も人によっていきなり行うことは危険だという。これもゆっくり糖質制限しないとダメらしい。とにかくまずは良く噛んで食べることが大切ということだ。
私も先日から頑張って噛むことを意識するようになった。

カフェインとアルコールはメンタルヘルスの天敵!

●カフェインついて
カフェインは睡眠物質であるアデノシンを感知する受容体に蓋をしてしまう。交感神経が興奮するため消化吸収機能がうまく働かなくなる。当事者の方でカフェインが好きとか飲まないと朝目が覚めないという人多いが飯塚医師によるとカフェインをやめた人で調子がよくなる人がとても多いらしい。

●アルコールについて
少量でも睡眠の質を確実に悪化させるため飲まない方が良い

加工食品に含まれる多くの添加物の影響

●人工甘味料
加工食品に多く含まれるアステルパーム、アセステーム、スクラロールなどの人工甘味料は脳内の神経細胞を興奮させるため注意が必要

●トランス脂肪酸
マーガリンやショートニングは腐らず安価で口当たりがサクサクするけれど悪玉コレステロールを増やし、心臓疾患などのリスクが高まるとされている。
●野菜
このほか、できるだけ無農薬の野菜を食べること
●タンパク質
魚などは小さめのものを選び、まるごと食べること。他には必要なビタミン類や、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルについての解説もしている。

●有害金属
食物連鎖によって大型の魚に含まれる水銀、銀歯や歯の詰め物などの有害金属の影響で体調を崩している人もいることを指摘している。

当たり前と思って食べているものが案外問題かも

この本を抜き書きしながら考えてみると世の中はメンタルが不調になるような化学物質、刺激物などが溢れているようだ。(^^;;苦しいけれど、今体調が悪い人は特に当たり前の生活を少し疑ってみる必要がありそうだ。

栄養療法ではサプリメントを推奨する専門家も多いが、飯塚氏はまず食事を適切なものに改善して、それでも通常の食事では不可能なレベルやバランスの栄養素が必要な時に使用するものとしている。

医療用大麻 カンナビノイドのこと


さて本書の一番の特徴はカンナビノイド(医療用大麻)について1章を割いていることだ。カンナビノイドとは100種類以上あるポリフェノールで、それを代表するものとして  THC とC B D があるが日本ではT H Cは承認されていない。
C B Dは不眠への効果、疼痛知覚、炎症などに抗炎症作用があるという。神経や免疫などの過剰活動 炎症などに効果が期待できるとしてその選び方や使用方法を詳しく説明している。私はC B Dのことは全然知らないし、医療大麻には正直に言ってちょっと偏見みたいなものもある。でも向精神薬の減薬による離脱症状などで神経系に問題がある人はもしかしたら調べてみてもいいのかもしれない。とにかく希望を探すことって大事だと思う。

本書の後書きには「嫌だけどがんばる」よりこ「いかに楽しくなるか」を工夫することが大事ですとある。食生活を改善するにしてもいきなり大きな変化を決断しなくても、少しずつ楽しみながら「心地よくて当たり前」を目指していこうと書いている。

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