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ウナーゴン
2016年10月22日 15:01
【承前】何かが決定的にまずい……。本能がそう告げていた。これまで自分より強大な存在と相対することは数多くあったが、そんなことであったならば、さしたる問題ではなかった。これは全く別種の脅威だ。フロア前方、自分が昇ってきた階段とは反対側の階段を降りて現れた、襤褸布の様なマントに身を包んだ男。目深に被ったフードが深く影を落とし、顔立ちはよく分からない。細かいウェーブのかかった長髪が零れ落ちてい
2016年10月21日 02:01
もはや何日彷徨ったのかも分からない。昼も夜も、飢えも乾きも訪れぬ、時間が停止した静寂の世界。薄明かりの中、深い霧の立ち籠める薊野原が、どこまでも続いた。 やがて僕は歩くのをやめ、その場に身を横たえる。永劫にも思える静止は死に近い。思考も。感情も。少し何かを思い出しそうな気がしたが、その感覚さえも消えてゆく。僕は深呼吸をし、瞼を閉じた。 そうしてすべてが終わった。