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おはなし

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いままでに書いた短編小説をまとめています。
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記事一覧

佐々木くんと玄武、そして飯田くん

朱莉の働いている花屋には気さくなゴールデンレトリバーがいる。彼の名前は「玄武」なのだが、…

裸足で歩く世田谷通り

 黒田くんは三軒茶屋に住んでいる。三軒茶屋とは言っても、三軒茶屋駅からは20分くらい歩かな…

金曜日の由花さん

 レジカウンターの裏に隠れてペットボトルの水を飲んでいると、フロアから戻ってきた由花さん…

高校生の時に書いた小説

 オリヴィエの恋人の名前はマリーというらしい。いつだったかセリーヌが彼とそのマリーという…

小説 雨の日のこと

 その日は雨が降っていた。わたしはココアをつくるためにミルクパンで牛乳を温めながら洗い物…

小説 カナという女

 カナちゃんは、ダサい。たぶん自分では洗練されたコンサバ系のつもりで生きているのだろうが…

小説 マイという女

 その日、マイちゃんと私は一緒に渋谷で浴衣を物色した後、神南のあたりにあるパンケーキと紅茶が評判のカフェでお茶をしていた。マイちゃんは体力がない上に究極のめんどくさがり屋なので「わざわざ神南まで行かんでもドトールでええやん。暑いし」とごねたが、なんとか言いくるめてそのカフェまで連れてきたのだった。マイちゃんはさっきまでドトールでいいだとか、なんならファミレスのほうがいいだとか言っていた癖に、早々にリコッタチーズとラズベリーソースのパンケーキとアイスのフレーバーティーを注文し、

小説 世界で一番不幸だった少女

 ときどき、高校生の頃の自分を羨ましく思う。なぜそんなことを思うのか、自分でもよくわから…

1000字小説   少し濃い夜

 彼は地元の電鉄会社に就職してしまった。大都市トウキョウからは遠く離れた地元の、ほとんど…

しゃわしゃわのジュース

 今時こんなの流行らないよ、と誰かに笑い飛ばされそうなくらいくたびれたアパートの一室で、…

悲しいオムレツ

 昔は、と利恵は思う。昔は、男に振られたくらいでここまで動揺するようなことはなかったのに…