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製薬業界の舞台裏で繰り広げられる事件と最新のトレンドを知的財産の視点で紐解きます no…

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製薬業界の舞台裏で繰り広げられる事件と最新のトレンドを知的財産の視点で紐解きます noteで最新記事先行公開中。珈琲☕一杯分でちょっと一息、いかがですか。一定期間後に記事は「医薬系"特許的"判例」ブログで公開されます→https://www.tokkyoteki.com/

最近の記事

2024.03.26 「フマキラー v. アース製薬」 知財高裁令和5年(行ケ)10057 ― 優先権主張の効果、補正・訂正要件、実施可能要件の交差点 ―

Summary 本件は、フマキラー(原告)が、アース製薬(被告)が特許権者である特許第6539407号に対する無効請求不成立審決の取消しを求めた事案であり、実施例補充型の国内優先権主張の効果が認められるかどうかが実質的な争点であった。 知財高裁は、「人工乳首事件」東京高裁判決の説示を踏襲しつつ、「後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨とする技術的事項が、先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項を超える」ものか否かという判断はその関係において「実施可能であるか

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    • 2024.03.21 「大塚製薬 v. トーアエイヨー・ニプロ・東和薬品」 知財高裁令和4年(行ケ)10084 ― サムスカ®の有効成分トルバプタンに関する医薬用途発明の進歩性 ―

      Summary 本件は、発明の名称を「重症心不全の治療方法およびその薬剤」とする特許第4771937号の特許権者である大塚製薬(原告)が、本件特許を無効と判断した審決を不服として、その取消しを求めた事案である。 知財高裁は、進歩性欠如を理由として本件特許を無効であると判断した本件審決を支持し、大塚製薬の請求を棄却する判決をした。 この事件には、バソプレシン V2-受容体拮抗薬であるトルバプタン(Tolvaptan)を有効成分とするサムスカ®(先発医薬品)の主要な効能・効

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      • 2024.03.18 「テバ・東和薬品・日医工・日本ケミファ・ヘキサル v. ジー.ディー.サール」 知財高裁令和4年(行ケ)10127, 10128, 10129, 10130, 令和5年(行ケ)10027 ― セレコキシブ組成物特許の訂正事項とプロダクト・バイ・プロセス表現の難しさ ―

        Summary 本件は、ジー.ディー.サール(被告)が保有する「セレコキシブ組成物」に関する特許に対する無効審判請求不成立審決を取り消す前訴判決の差戻し審判で、特許庁は、被告による本件訂正を認め、テバ、東和薬品、日医工、日本ケミファ、ヘキサル(原告ら)の主張する無効理由はいずれも理由がないとして審判請求は成り立たない旨の審決(本件審決)をしたため、原告らが審決の取消しを求めて提起した訴訟である。 珈琲☕一杯分?の暇つぶしにいかがでしょうか。 ※ 当記事は法的助言を与えるも

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        • 2024.03.25 「X v. クリニジェン」 知財高裁令和5年(ネ)10103 ― 本件訴えは前件訴訟の蒸し返しであり信義則に反する不適法なものであるとして控訴を棄却した損害賠償請求事件 ―

          Summary クリニジェン株式会社が本件国内移行手続を執らなかった行為及び本件発明の権利化の機会を発明者である原告Xに与えなかった行為が譲渡契約上の債務不履行を構成すると主張して原告Xが同社に対し損害賠償の支払を求めた控訴審で、知財高裁は、本件訴えは前件訴訟(東京地裁令和3年(ワ)4655)の蒸し返しであって、訴訟法上の信義則に反する不適法なものであり、本件訴えを却下した原判決は相当であるとして本件控訴を棄却する判決をした。 珈琲☕一杯分?の暇つぶしにいかがでしょうか。

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        2024.03.26 「フマキラー v. アース製薬」 知財高裁令和5…

        • 2024.03.21 「大塚製薬 v. トーアエイヨー・ニプロ・東和…

        • 2024.03.18 「テバ・東和薬品・日医工・日本ケミファ・ヘ…

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          2024.03.27 「東亜産業 v. neo ALA」 知財高裁令和5年(ネ)10086 ― 控訴棄却判決、差止め及び廃棄請求について仮執行宣言(5-アミノレブリン酸リン酸塩事件) ―

          Summary 発明の名称を「5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及びその用途」とする本件特許を保有する被控訴人(neo ALA)が、控訴人(東亜産業)による各控訴人製品の製造、譲渡等が特許権の侵害に当たると主張して、控訴人に対し、その差止め等を求めた特許権侵害差止請求事件で、知財高裁は、被控訴人の請求を全部認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、また、原審の認容した差止め及び廃棄請求について仮執行宣言を付した。 1.背景本件(知

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          2024.01.16 「ロシュ ダイアグノスティックス v. アボット」 知財高裁令和4年(行ケ)10082 ―「抗原Xに結合する抗体」をさらに「特異的に認識して結合する」特徴で特定する意義―

          1.はじめに「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」に関するアボット・ラボラトリーズの特許に対する無効審判請求を不成立とした審決を不服としてロシュ ダイアグノスティックスが提起した審決取消訴訟(知財高裁令和4年(行ケ)10082)で、知財高裁は、本件審決の判断に誤りはなく、ロシュ ダイアグノスティックスが主張する取消事由(新規性、進歩性、拡大先願との同一性、明確性要件、サポート要件及び実施可能要件の有無に関する誤り)はいずれも理由がないと判断した。 アボット・ラ

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          韓国薬事法改正 医薬品の再審査制度を廃止し、イノベーティブ医薬品創出を促進する臨床試験資料保護制度(データ保護制度)新設へ 後れを取る日本

          2024年2月20日、韓国の薬事法の一部改正法(法律第20328号)が公布されました。 この法律は、公布後1年が経過した日(2025年2月21日)から施行します。 この改正法において注目すべきポイントは、新規医薬品の承認時に先発医薬品メーカーにより提出された臨床試験資料をもとに後発医薬品を承認申請することを一定期間禁止する臨床試験資料保護制度(いわゆる「データ保護制度」、第31条の6)を新設し、一方で、これまで実質的に規制上の新規医薬品の保護期間として働いていた従前の新薬

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          2024.01.16 「ユーピー ケミカル v. バーサム マテリアルズ」 知財高裁令和4年(行ケ)10097 ― 化学物質名の記載が特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」であること(引用発明の適格性)の判断基準 ―

          Summary 「ジイソプロピルアミノシラン」に係る特許発明の新規性等が争点となった無効請求不成立審決取消訴訟で、引用文献には、同物質が記載されているといえるものの、その製造方法に関する記載がないことから、同物質を特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」として認定することの可否が問題となった。 知財高裁は、引用文献に接した本件優先日前の当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、技術常識に基づいて、同物質の製造方法その他の入手方法を見いだすことができ

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          2023.11.22 「X v. 特許庁長官」 令和5年(行ケ)10059 ―人為的取決めであって自然法則を利用したものとはいえないとして発明該当性(特許法2条1項)を否定した事例―

          1.背景本件(令和5年(行ケ)10059)は、発明の名称を「患者保有分項目を設けた処方箋と患者保有の医薬品を含めた投与日数算定の一方式」とする特許出願(特願2021-89621号。以下、「本願」という)についての拒絶査定不服審判において「本件審判の請求は、成り立たない。」とした特許庁の審決(以下「本件審決」という。)の取り消しを求めて、出願人Xが提起した拒絶審決取消訴訟である。 珈琲☕一杯分?の暇つぶしにいかがでしょうか。 ※ 当記事は法的助言を与えるものではありません。

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          2023.11.22 「X v. 特許庁長官」 令和5年(行ケ)10059 ―…

          2023.10.04 「アストラゼネカ v. 日本ジェネリック・東亜薬品」 知財高裁令和5年(ネ)10012 ― 医療用医薬品シムビコート タービュヘイラーの形態の商品等表示該当性、混同を否定した不正競争行為差止等請求事件判決 ―

          Summary 本件は、医療用医薬品シムビコート®タービュヘイラー®(控訴人商品)の形態と類似した形態の後発医薬品(被控訴人商品)を製造販売している東亜薬品及び日本ジェネリック(被控訴人ら)の行為は不競法2条1項1号の不正競争行為(周知表示混同惹起行為)に該当するなどと主張して、アストラゼネカ(控訴人)が、被控訴人らに対して、被控訴人商品の譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに、損害賠償金の支払を求めた事案である。 知財高裁は、 控訴人商品の形態は、不競法2条1項1号の

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          2023年を振り返ります

          2023年12月21日、2023年の医薬系”特許的”な出来事を振り返る記事をブログ(下記URL)に掲載する予定です。 https://www.tokkyoteki.com/2023/12/2023.html お楽しみに。

          2023年を振り返ります

          Japan's Lack of Clear Guidelines on Patent Linkage Hinders Fair Competition and Access to Affordable Medicines

          In order to prevent abuse and delays in the approval process for generic drugs, Japan should establish clear guidelines on patent linkage and explore alternative dispute resolution mechanisms, which would foster competition, reduce drug pri

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          FDAのOrange Book(オレンジブック)に不適切に収載された100件以上の特許、製薬企業10社にFTCが警告

          2023年11月7日、米国連邦取引委員会(FTC)は、喘息用吸入薬、エピネフリン自動注射器、およびその他の医薬品について製薬企業が保有する100件以上の特許が、米国食品医薬品局(FDA)が発行する「Orange Book」に不適切または不正確に収載されているとして、製薬企業10社に対して異議を唱える通知をしたことを発表しました。 Orange Bookへの特許の収載について、適用されるFDAの規制と矛盾しないかどうかが争われた場合、FDAは新薬承認申請(NDA)ホルダー(先

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          TRIPS waiverのCOVID-19診断薬と治療薬への拡大議論の鍵となると期待されていた米国国際貿易委員会(USITC)の調査報告書が発表される

          珈琲☕一杯(ワンコイン)でちょっと一息。 興味ありましたら暇つぶしにどうぞ。 2023年10月17日、米国国際貿易委員会(USITC)は、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights Agreement; TRIPS)」の一時的な適用除外/履行義務免除(以下、「TRIPS waiver」)をCOVID-19ワクチンだけでなく診断薬及び治療薬にも拡大するか否かという問題に関

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          2023.08.29 「P1 v. 全星薬品工業」 大阪地裁令和2年(ワ)12107 ― 顧問が共同発明者として認められた塩酸アンブロキソール徐放性OD錠職務発明相当対価請求事件 ―

          1.はじめに2015年7月10日に、職務発明制度の見直しを含む「特許法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第55号)が公布され、2016年4月1日に施行された。 この法律改正により、職務発明制度を定めた特許法35条の「相当の対価」の表現が「相当の利益」に変更され、さらに、手続きが適正である限り、使用者と従業者があらかじめ定めた契約などが尊重されることとなった。 特許庁: 職務発明制度の概要(更新日2017年7月27日) この改正を機に、企業では職務発明規程の再整備

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          2023.08.29 「P1 v. 全星薬品工業」 大阪地裁令和2年(ワ…

          機能的表現抗体クレイムの終焉か ―Amgen事件米国最高裁判決を受けBaxalta社の抗体特許を無効とする判決(Baxalta v. Genentech CAFC 2022-1461)―

          2023年9月20日、Genentech社の血友病A治療薬HemlibraⓇ(有効成分は抗factor IXa/X バイスペシフィック抗体であるemicizumab)が米国特許第7,033,590(以下、’590特許)を侵害しているとして、Baxalta社がGenentech社を訴えていた事件1)2)について、米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は、実施可能要件違反を理由に’590特許は無効であると判断したデラウェア州連邦地方裁判所の判決(No. 1:17-cv-00509-

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