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2024.03.21 「大塚製薬 v. トーアエイヨー・ニプロ・東和薬品」 知財高裁令和4年(行ケ)10084 ― サムスカ®の有効成分トルバプタンに関する医薬用途発明の進歩性 ―

Summary

本件は、発明の名称を「重症心不全の治療方法およびその薬剤」とする特許第4771937号の特許権者である大塚製薬(原告)が、本件特許を無効と判断した審決を不服として、その取消しを求めた事案である。

知財高裁は、進歩性欠如を理由として本件特許を無効であると判断した本件審決を支持し、大塚製薬の請求を棄却する判決をした。

この事件には、バソプレシン V2-受容体拮抗薬であるトルバプタン(Tolvaptan)を有効成分とするサムスカ®(先発医薬品)の主要な効能・効果「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」を保護するかもしれない本件特許を無効にして、後発医薬品には認められていなかったその効能・効果についての追加承認を得たいという後発医薬品メーカー側の思惑が背景にあった。

厚生労働省は、知財高裁の判決に依ることなく無効審決が下されたことをもって本件特許によるパテントリンケージを解除したのだろうか、各後発医薬品に対して、「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」の効能・効果を2022年9月7日付けで追加承認した。

サムスカ®にとって初の後発医薬品の市場参入(2022年6月)から、たった3か月後のことであった。


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※ 当記事は法的助言を与えるものではありません。全ての情報はその正確性と現在の適用可能性を再確認する必要があります。

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