見出し画像

「歪んだ男性像」を修正するには時間がかかる。のだ。

 先週末はわたしの誕生日で、彼氏のところに行ってきた。読者の皆さま、アリガトーゴザイマス!(と祝われる前に先行してお礼を述べておく)

 彼と別れるのを中止してお付き合いを継続させることにした時、わたしは(デートにかかるコストのことをちゃんとしないとなあ……)と考えていた。元夫の失踪が発覚する直前、もう彼のところには行かんぞ!と決意を固めた時、ふと思いついてこの3年間にわたしが費やした経費をざっと計算してみたところ、絶句するような額になっていたのだった。ガソリン代と高速代込み。

 考え込んだ。全然気づかなかったし自分も会いたいからいいや!と思っていたけど、よく考えたらわたしはこのくらいの額で「彼氏のコストを節約し続けた」のだ。さらに3年間わたしが訪問し続けたので、その移動にかかる時間についてはつまりわたしの時間を使って「彼の稼得可能時間」を保全してあげたことになる。

 折から元夫の失踪事件が起こり、わたしは無償で男を甘やかすこととそののちそれを回収することの怖さを感じていたので、彼のことも空恐ろしくなった。つまり、わたしが時間と費用を全面担当することで彼の仕事時間をまるっと手つかずにしてあげる、そのことで売り上げが上昇するならまだしも現状維持もしくは下降するとしたら(そして労働者の皆さんの給与所得が厳しくなりつつある現状、勿論小売り業の現状も厳しい)、これ、わたしの底上げがなくなったらこの人どうなるの?えっ、また別れた後に店が潰れたりしたらめっちゃ怖いよ!わたしだって一生一緒にいる訳じゃないし、それに自分を削ってまで足元支えてあげる必要はないのだ、誰だって。

 そのまま別れるのなら3年間のコストを投げ捨てて「じゃあな!後のことは知らねぇよ!」と割り切るつもりだったが、継続することにしたので、この先のことはちゃんと話し合った方がいいよなあ、と思った。それは、わたしのためにも、彼のためにも。ほんとに、人を甘やかすことはその後のツケが怖いんだ、その人にとって。

 でも、お金のことを切り出すのは気が重いし、それに対する反応も怖い。クズな言い訳とか出てきたら、本当に心がへずられる。そう思ってちょっと先延ばししていた。

 すると誕生日の一週間ほど前になって、彼がふと切り出した「can we meet this weekend? it's your birthday」。わたしも「誕生日そっちに行っていい?」と話をするつもりだったので、おお!と思い、続けて費用の話をしようと思った。すると彼の方が先に切り出したのだった「君が負担するガソリン代とか教えて。僕も払う」。ワーオ。

 彼が言うには、デートの時彼が負担する食事代とかでイーブンだと思っていたのだそう。けれど、この間初めてうちの町に来てみて、それでは足りなかったと気づいたのだという。「ゴメンネ、I couldn't notice 泣」。

 これを聞いた時には、ウワーオ、こっちに来てもらうことの効果って恐ろしく絶大だな、と痛感し、その一方で、そういうこと分かんなかったんだ!と衝撃を受けた。割と正直に吐露すると「そんなの分かっぺよ!!!」という気持ちだった。分かっぺよ!だって散々、移動に5時間かかるとか高速乗るとか言ってんじゃん!

 それと同時に、自分の男性観の歪みというか不信感というか、そういうことにもまざまざと気づいた。わたしの基本姿勢が「言わなきゃ分かんない人は言っても分かんない、そんなの薄々勘づいてるけど敢えて気づかない振りしてるに決まってんだろ、こっちのイエローカードとレッドカードで動かなかったらもう終わり、問答無用で切り捨てんぞ!」というものだと気づいたから。つまり、いつまで経っても動かない男というものは「女に甘えて気づかない振りをし、可能な限り面倒を回避しようとするクズ」だと思っていたということである。拭い難い!ちょう拭い難いな、男性不信!

 以前この稿を書いた時、男性にありがちな想定問答集として事前予想していたのがこういった反応だった。

其の1:自分の先入観に固執系
なんだかんだ綺麗ごとを言っているが結局、娘や元妻に会うのが気に入らないんだろう。そんな嫉妬や束縛はごめんだ。
其の2:こっちの落ち度を突いて反撃系
あらかじめ約束などしていない。ふわっとそれっぽい話をしていただけで、確定はしていなかった。そこに別な予定を入れて何が悪いのか。
其の3:人のせいにする責任転嫁系
予定を確定できないのは、元妻や娘がなかなか心を決めないせいだ。仕方ないだろう。俺の落ち度ではない。
其の4:勿論俺の方が価値が高い系
俺とお前の時間的融通の利きやすさや稼ぐ金額、背負っている負担を比べてみろ。お前が予定を変える方がコストが低いし、失うものも少ない。
其の5:そんなことを考えるお前の方がおかしい系
俺はまったくそんなことは考えていないし、そんなつもりはない。心外だ。そんな風に感じるなんて、お前の被害妄想だ。
其の6:言いたいことは分かるがどうしようもない系
お前の言いたいことも分かるし言い分ももっともだと思う。だが、俺にはどうしようもない。現状十分に努力しているので、これ以上できない。

 まあ元夫なんかそういう反応の最たるものだったと思う、裁判所の履行勧告だって無視を決め込み続けたし、非を認めてまともな対応なんて一度もしなかった。でもそうじゃなくても男の人って、何か咎められた時にまず防衛反応するじゃん。俺が悪いんじゃないもん!とかそう言うそっちだって〇〇じゃん!とか。わたしは基本認識として「男というものは自分を改められないクズ」と思っていた、多分。自分でもそのバイアスに気付かないくらい無意識に、本当にベーシックな基礎のところで。

 彼と別れ話的なことをした時、彼は「でも、僕は全然変わっていないよ?」と言うので、「そうよね、あなたは絶対変わらない。いつもわたしがあなたに合わせて変わり続けた」と言った。それほどまでに、男というものは何が起こっても変わらないものだと信じていた。だから彼が即座に切り替えて、「ワカッタ。じゃあ僕が今度、君を訪ねる!」と返した時、本当に驚いたのだ。

 彼と付き合うことで自分の思い込みは解けてきていると思っていたけど、例えばこんな感じに、

でも、すっごいラスボス的なのが残っていたんだなあ、と思う。多分、元夫が作ったものだけじゃないとは思うけど。

 彼のことは今でもお調子者のバカだとは思っているし、やっぱり彼はパーフェクトな人格者!なんて感激している訳でもないけど、「言わなきゃ分からない=言えば分かる」ってこういうことなのかなと、人って思ったよりも間の抜けた善人だったりするのかなと、ぼんやり思う。そしてやっぱりわたしは、超ハイコンテクスト世界の住人だったな。

 多分わたしの中にはまだまだたくさんの歪みが残っているんだろうけど、あっ、このたびよんじゅうごさいになったんですけど、まだ寿命は50年以上あるっぽいし、そう考えると半分も生きてないし、徐々に徐々に、素直に、平らに物事をそのままに映し出す鏡のようになれたらいいなと、誕生日を機に、そう思う。

 カバー写真は彼からの誕生プレゼント、別れよう……と思っている間に「どれがいい?」と浮き浮きと候補の写真を送ってきて、(えっええー……ちょっと困る……)と思ったわたしが「うーんと、わたしにはちょっと可愛すぎるんじゃないかなー……?」と誤魔化しつつ先延ばしにしていたら、その他のこともあって彼が何となく感づいて「you are still my pease?泣」と言うに至ったという曰くつきの、その中のアレです。別れるの中止してから割と速攻で選びました。着けてみると思ったより可愛すぎなかった。

アマゾンギフト券を使わないので、どうぞサポートはおやめいただくか、或いは1,000円以上で応援くださいませ。我が儘恐縮です。