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「北の国から」が好きだった

初めて「北の国から」を観たのは、中学生の時だった。

記憶の中では初めて、普段テレビを見ない母親が自分の見たいドラマを観ていた。

「好きな俳優が出ているから観てるの。」
田中邦衛さんの事だった。

「北の国から ’87初恋」

普段テレビを見ていると母親の機嫌が悪くなるから、何となくテレビを見る事はためらわれた。
でも、その時は母親と一緒に観た。

衝撃的に面白かった。
初めてテレビを見て感動した。

そして、
れいちゃんに恋をした。
れいちゃんのお母さんが亡くなった後、
純くんと二人、雪の中を歩いているシーンのれいちゃんが、たまらなく可愛かった。

多分、自分にとっての初恋だったと思う。
タイトルのまんまだ。

新聞のテレビ欄で、れいちゃんは横山めぐみという名前だと知った。
翌日から毎日、テレビ欄を見て、横山めぐみの名前を探した。

全然見つける事が出来なかった。
かなり長い間テレビ欄を探していた。
次に名前を見つけたのは、2年後だった。

「北の国から’89帰郷」

やっと、れいちゃんに会える!

珍しく自分の意思で、親に断ってテレビにかじりついた。ビデオを撮って観た。

あれだけ会いたかった、れいちゃんに会えた。
でも、’87初恋のれいちゃんが好きすぎて、2年の間に変わってしまったれいちゃんには、ときめかなかった。

でも、今度は蛍ちゃんに恋をした。
緒方直人の前ではにかむ、俯き加減で恥ずかしそうに喜ぶ、蛍ちゃんを堪らなく好きになった。

何度もビデオを見返した。

普通の感覚ではない、と思いながらも、
初恋の人は?
と聞かれたら、
それはれいちゃんで、
今好きな人は?
と聞かれたら、
蛍ちゃん、と長い間答えていた。

横山めぐみと中嶋朋子ではなかった。

高校生になって、初めて友人になった相手には、「北の国から」が好きかどうか、を必ず聞いた。

「北の国から」を好きだと答えてくれたら、
良い友達になれると信じた。
大学を卒業する頃まで、「北の国から」が好きかどうかで、相手と自分の価値観をすり合わせていた。

それくらい「北の国から」が好きだった。

大学生になって、一人暮らしをはじめてから何度、「北の国から」のビデオを観ただろうか。

連ドラが一番面白かった。
’87初恋と’89帰郷を一番見返した。

倉本聰の「北の国から」のシナリオも全て買い揃えて、夢中で読んだ。

役者が喋りすぎないから、
説明し過ぎないから、共感できた。

純くんが矛盾してるから、フィクションだと思えなかった。

笑えるシーンがたくさんあった。

みんな、みんな優しくて、切なくて、大好きだった。

「北の国から」に強く憧れた。
「北の国から」が大好きだった。
「北の国から」と共に青春時代を過ごした。

ありがとう、田中邦衛さん。
謹んでご冥福をお祈りします。



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