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短編、ゼロ度の覇権 怒ったぞ


* 江戸っ子は三代
偏差値の低い、成りあがった貧乏人や田舎もんは、三代で上流階級のみなさんになります

 ご存じの通り、
明治維新は虐げられた低い身分の出身が多かった、
遡れば、藤原氏の王朝も蘇我氏などの名門を打ち破って成り上がっていき、
やがて傲慢になって、アゴで使っていた武士の反感を買い舞台から下りていった

恵まれた生活の中で安住しているのに、
何が悲しくて、
当時の自分たちが仕切っている時代体制の王朝や幕府を倒そうとするだろうか、新しい創造性が湧くだろうか、
出てこないよ、そんなもん

政治に限らない、
常に、全ての創造性は偏差値の低いところから生まれてくるのは自然の道理です
イザナギとイザナミのとき、いったい誰が天皇で、誰が将軍であったでしょうか


明治維新に遅れてやってきて、
商売や学校の成績で成りあがった者の中には、貧農とか田舎者が多いのも理の当然でした
やがて金ある者と官僚は利害で結びつき政財界へおどり出て、名門家をめざすのも、
これまたいままでのパターンです
三菱の岩崎家とか鳩山家とかイロイロ

また昨今の事情では、
貧しくても学問のススメが開かれている建前と違って、
教育費の裕福な家庭がエリート大学を多く占めはじめ、
形は違っても王朝と幕府時代みたいにさかのぼって、同じことが繰り返されています

社会的に恵まれ、逃げ道がある世襲議員や芸大、東大の世襲学生から新しい創造性が生まれるはずもなく、
甘えを断ち切り、自ら祖父や先輩以上の険しい道をつくって行くしかないだろう

負荷を身体に与えなければ力は出ない、
マイナスイオンを浴びなければ清心されず、挫折やコンプレックスは自分じしんを見つめさせ、満たされた水にはもう満たすことができなくて、満たされない気持ちは溢れ出てきます


 いままでの歴史は、
上下関係の下剋上の歴史でもある

二十歳も過ぎれば、うすうす勘づくことがある
教室で習う、
子供相手に口あたりのいいフレーズ、市民による革命、労働者による革命、それによる市民のための政治、労働者のための政治

でもわれわれは知っている、
そんな上っ面な言葉の下では絶えないマグマが蓄積されていた、じつは、根深い上下関係の下剋上があった

政治でも文化でもいままでも歴史は、
市民とか労働者とか、新しいキャッチフレーズによる階級闘争なんかによる歴史でなく、上下関係の下剋上の歴史のようであった

各国の歴史ばかりでなくわれわれの国でも、
あなたが優れているから国を任せますなんて、禅譲みたいなものがあるわけない、常にうわべはそうでも背後に暴力をかざしている
昨今のアメリカや中国、それに裏社会のヤクザな面々でも

それに天皇、
貴族、上級武士、上級市民といっても、もとは身分の低い出自の出身の者たち、
常にその時代で蔑まれ虐げられ、反感と妬みが蓄積され、そうありたい憧れが入り混ざっていく過程の歴史のようでもある

「下賤者」が為政者なれば、
「商売人」が為政者の政治家に近づき、
「庶民」は為政者が作った公認機関をめざすのは自然の成り行きでした

そして国を作った為政者の政治家が、
とりあえず一番初めにやること、
暴力でまた自分たちに敵対しないように、政府公認の学校や公的試験で文化エリートを作って上級国民みたいにさせ、いい気持ちにさせることだった

それゆえ、為政者が国内を安定させるには、
いままでの歴史でわかるように、
手っ取り早い手段、「身分制度」をつくることにあった、今回は学歴制度がもっとも有効のようです

為政者はキリストやブッダ、孔子のように甘ちゃんではない、人間というものをよーく知っていた

理想では生きていけず、
聖人も優れていたから聖人になったわけではない、為政者に公認されて初めて聖人になった、
為政者にとって、美しい言葉と国民受けするフレーズはとても都合が良かった、良くなければ為政者の都合で弾圧されます

それに国民は為政者みたいに意志も強くなく、
精神もそう強くない、
為政者にすがっていきたがります、為政者が作った制度に幾分不満があっても従順でした
上には妬みや反感があって偏見があっても従順で、下にはそのぶん高慢さがあった

特に日本では、
温暖な徳川幕府の封建制度が長く続いて生活に根づき、主従関係ともいえる奴隷根性が染みついていた
現在の共産主義国に似て、
為政者の政治家のお墨付きの公的な機関や伝統、国宝の名にとても弱くありがたかった


(子供の頃、不思議だった。
徳川幕府時代、生かさず殺さずのお上の政策、よく農民は怒らないな、武士は米食べて農民はアワとか麦。むしろ進んで、武士のいいなりに逆らわないで、貧しい生活に甘んじて保護された「安穏さ」を求めた。

いまでもそう、人は「みずから進んで」安易になって思考しない生活を望みがちです。奴隷根性だなんて、そんなこと諭されても、みんなと一緒だし、多少不満があっても、なんだか楽なんです。

派手な生活、いまで言う、芸能界とかスポーツで個人の能力を出し飛びはねる不安定な生活をきらい、裕福な収入生活に多少のうらやましさを持ちながら、安定した国家に守られ、国家のシモベなる公務員が世間体にも自分じしんにも心地よかったんです。

徳川幕府の初期を支えた「知恵伊豆」と呼ばれた松平伊豆守信綱、それに家康には側近の坊主が二人、天海と崇伝がいた。

家康は庶民に触れあうことがなくとも、坊主二人にはいつも庶民と触れあうこともできて、庶民の正体を気づいていただろう。
なぜブッダが生まれたインドでは、カースト制度がいまも昔も存続して、ブッダが批判しても根強く生きて、現代のガンジーも甘んじていた。

たぶん、ブッダの使徒である、坊主ふたりはその謎を考えていたに違いない、それでなければ身分制度や士農工商の発想は生まれてこない )

 学歴制度は便利だな、
と貧農から成りあがった、ある会社社長は言っていた

社員が上司に不満があっても
偏差値の高い大学卒にはいくぶん従順で、組織がうまくそうで、
その反対の感情も生まれ、実力があって学歴がない上司には納得しても、何かと不満が積もりがちになり、組織がうまく円滑されるように考慮しているんだそうです

そんなこんなで
文化面でも、初めに公認のエリートがシャシャリ出て口をはさみ、
いましばらく学者とか作家でハブリを効かせて、都合のいい検定教科書に認定されても、ハングリーさがなくなったエリートには創造性がつくわけもなく、先生や出版社で安住していた

そんな生意気で、
生ぬるい生活をしているヤツらに対して、何かと冷や飯を食わされているワレワレ下級市民が、なんて素敵なんでしょう、と「すなおなボク」以外の人が賞賛するわけがなかった

世代闘争とも絡んで、
妬みと反感、それにチヤホヤされたい、
そんな甘い生活を望む感情のマグマはふつふつと燃えあがり、富士山の頂上まで届いていき、それから....
そんな上下関係の下剋上は、ごくごく自然の成り行きでした、ああ怖っ


怒ったゾーサン




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