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短編、ゼロ度の覇権3 いままでのツケがまわったのか


3.「心の中は」

 いままでのツケがまわったのか、
クラシックでも文学でも、
せっかく先輩たちががんばって社会的評価を受けてきたのに、意味のわかんない高慢さで孤立してひとりよがり
最近では音楽大学を優秀な成績で卒業してもコンサートに来る人が少なく、会場もままならない

いっぽうで好きで始めたものの、
世間の目線は冷ややかだった芸能界の歌手とかマンガ家さんたち
やがて歌が売れ、高額なギャラを貰い、
マンガも売れ出してお金がガッポリ
とたんに、
そこはそれで大人の社会、商売人や選挙の票集めの政治家が笑顔で集まってきて、
でもお金と女が群がったら、付随して何かとヤバい面々も近づいてきます

貧しい大衆を相手に、
生活で苦しんでいる国民大衆のために、及ばずながら、がんばっているあなたのための応援歌です、お聴きください
そう歌いながら、
頭の中はこの一曲で幾ら、チャリン、響いて、夢は富裕な成金生活を描いていた

また観念的な理想をきらい、
「お金は幸福の素」を旗印に米国の商売経営者たち、
金儲けには、なぜか裕福な階級やインテリ層は向いていなくて、むしろ子供や大衆向けの娯楽やスポーツ芸能が手っ取り早かった

プラグマティックで幼稚な娯楽や
粗末でオートマティックなファーストフードで金儲けして、
カーネギーホールでクラシックを堪能し、
高級レストランで舌つづみして高級ワインを飲み、いかにしてわたしは成功したか、哲学を語りたがった

黒人を奴隷にして苦役させ、
労働者を低賃金で過重労働させてきた発想とまったく同じ手法で、「質より量が正義」の商売をめざした
音楽や映画、スポーツの大量な「動員数」を合言葉に、よりよい刹那的な娯楽文化で回転率を高めて、収益を図ろうとした

そんな国民を幼稚化させ、
政治に「無関心で無気力」にしていくビジネスモデルの典型的な俗物さで、
展開しているような海の向こうの国を憧れ、嬉々として喜んでいる日本人に対して、いつから意地汚いじきたない人間になったんだと、作家の野坂 昭如が嘆いてもなんのその

そもそも迫害を受けてきたユダヤ人が、
生きていくために始めた一番卑しい商売であった、金儲け仕事
運よく近代になって金の力が強くなり、
アメリカに逃れて住み着き、アメリカの政治家はユダヤ人の財力に目をつけて頼ってばかりで、文化も「お金が正義」が支配するようになった
ほんと困ったもんです

最近アメリカの圧力で日本教育界に、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』を排除しようと、例によってモラルを前に振りかざし、どんなもんだろう、政治同様に大義を持ちだしてきた
ひと百倍、差別大国アメリカのダブルスタンダードかたなしで8重基準ぶりが見ものです
えらそうに、ほんとそんなことでいいの、プールに黒人を連れてきてもいいんですか

アンネの日記を守る気持ちはわかるけど、どん欲なユダヤ人の金貸しシャイロックの気持ちはどうかな、といえば、いたずらにユダヤ人設定にしているとモノをいい、中国人なら許してあげるなんて、意に添わなければ焚書しちゃうぞ



 そのいっぽうで、これはイカンと振りかえり、いままでひとりよがりで、真の芸術や文学を忘れていたといい、
そうだ、国民の中に入って育てなければいけない、大衆を置きざりにして自分ひとりでいい気になっていた、そんなエリート意識的で、上から目線な人がいるらしい

でもそんなに気張らなくても、亡くなった大江健三郎じゃないんだから、もっと肩の力を抜いてもいいんじゃない

国民大衆と同じ地盤に立ち、ここから芸術や文学を盛りあげていく方が何かと楽みたいなのに

おまえみたいに庶民じゃないんだ、オレたちには国民の見本となって導いていかなければならない使命があるなんて、そんなこと言われたら謝りますけど

そんなこんなで貧困すぎるのは惨めでも、あと少しお金があったらいいなぐらいでも、生活できて、芸術や文学をいくらかでも享受して豊かであれば、心は貴族的になります

芸術や文学は、国民の絶対多数の民主主義にそぐわない
生活は平凡でも、心の中は常に貴族性を求めています

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