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私的名作映画十選

映画とは、退屈な部分がカットされた人生である。

そう言ったのはサスペンス映画の神アルフレッド・ヒッチコックである。実際に二時間程度の時間にさまざまな人々の濃密な人生が堪能でき、南国にも雪国にも、過去にも未来にさえ行くことができる。実にコスパの良いエンターテイメントである。
本稿に於いては私的名作映画十選をご紹介申し上げたい。

第10位
ジョナス・アカーランド「SPUN(スパン)」

登場人物全員“ヤク中”。ジャンキー青年の救いようのない青春を描いた、どうしようもないドラッグムービーである。監督のアカーランドは映画以上にMV監督として有名でマドンナ、ジャミロクワイ、イギーポップ、ポールマッカートニーなど錚々たるミュージシャンのビデオを手がけている。また本映画の音楽は元スマッシングパンプキンズのビリー・コーガンが担当していることもありミュージックムービーとしての色合いが濃い。
目まぐるしく展開する映像と音楽、そして全ての意味に於いて不毛な青春劇が如何にも爽快でクセになる。上記ジャケットの表情を一目見れば分かる通り、ブリタニー・マーフィがキレッキレである。

第9位
デヴィッド・フィンチャー「ファイトクラブ」

エドワード・ノートンとブラッド・ピットという二人の名優が主演を務めた作品。暴力と精神病が取り扱われ、主人公が属するクラブがテロ集団化し、ビルの倒壊を描いたことから911を予言した映画としても注目された。崩れ行くビル街と流れる主題歌「ピクシーズ/where is my mind?」で表現されたカタストロフィは、恍惚としそうな程に破滅的で美しい。

第8位
スタンリー・キューブリック「フルメタル・ジャケット」

戦争を賛美するかのように描くことで、その狂気を浮かび上がらせた反戦映画。(監督本人に反戦映画という企図はなかったそうだが)
ミッキーマウスマーチに戦慄させられる映画は、後にも先にも本作だけだろう。

第7位
ジョン・シングルトン「ワイルド・スピードX2」

大人気シリーズの二作目。上記ジャケット5名のうち3名、歌手のタイリース、ラッパーのリュダクリス、モデルのデヴォン青木と、主要キャストの過半数を俳優を本業としていない役者が占めると言う奇怪なキャスティングも魅力の作品だ。シリーズの醍醐味であるカーアクションは本作も最高で、中でもカーチェイスの最中に車を180度旋回し、ギアをバックに入れ後ろ向きに走りながらライバルと相対し、中指を突き立てた主人公の格好良さは実に男心を擽られる。
シリーズに於いてシングルトンがメガホンを取ったのは本作のみである。

第6位
ヴィンチェンゾ・ナタリ「NOTHING ナッシング」

CUBEの大ヒットでも知られるナタリ監督のコメディ映画。もしもこの世の全てのものが無くなったなら、をテーマに低予算で撮られたミニシアターである。カジュアルに観れて、笑えて、泣ける。有名な作品ではないが、だからこそ推薦したい傑作である。

第5位
ガイ・リッチー「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」

二丁の銃と大麻を巡って繰り広げられるクライムアクション。「シャーロックホームズ」シリーズなどで知られるガイ・リッチーの代表作だ。巧妙に練られた脚本と、スピーディでスリリングな展開力。名作映画のお手本の様な作品だ。未見の方は慌てて観た方が良いと確信を持って言える、万人にお勧めしたい一本。

第4位
クエンティン・タランティーノ「ジャンゴ 繋がれざる者」

名作映画製造機タランティーノの2012年の作品、奴隷制時代の西部劇である。監督の脚本力も見事だが、本作はなんと言ってもクリストフ・ヴァルツとレオナルド・ディカプリオの怪演ぶりが堪らない。狂気的なまでのインテリジェンスを感じさせるヴァルツの立ち居振る舞い、たった一つの笑顔で豊潤に背景を滲ませるディカプリオの奥行き溢れる演技力。名優同士が鎬を削り合う様は必見だ。
「イングロリアス・バスターズ」や「レザボア・ドッグス」など名作しか撮っていない監督であるが、どれか一つであれば本作を推したい。

第3位
北野武「あの夏、いちばん静かな海。」

若かりし日の真木蔵人が主演を務めた、聾唖の青年がサーフィンを通じて成長していく物語を描いた北野映画三作目である。この映画ほど静かな映画が他にあっただろうか。打ち寄せる波と共に静寂を奏でた久石譲の音楽は美麗を極め、卑怯なまでに涙を誘うクライマックスの編集力は北野武の映画監督としての非凡さを確信させるものであった。
「キッズ・リターン」や「BROTHER」など名作の枚挙に暇のない、日本を代表する映画監督である。

第2位
デイヴィッド・リンチ「マルホランド・ドライブ」

この映画を一度観ただけで内容を理解できた者が居たとしたら、それは天才と呼ばれる者だろう。中盤で置き去られ突如混乱の煙が立ち籠める。繰り返し観返すことで鍵が解けてゆき、全てが繋がった時に訪れるカタルシスは他の映画には全くない魅力だ。
あまりにも難解で、あまりにも美しい。鬼才リンチ監督の最高傑作だ。

第1位
宮崎駿「風立ちぬ」

こちらは国内での知名度が非常に高く、嘗てNOTEに記事を書いたこともあるため割愛させていただこう。

以上が私的名作映画十選である。一監督につき一作品までの縛りで選定した。
未見の作品をサブスクリプションなどで見かけたら是非ともご覧いただけると喜ばしく思う。

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