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32歳、無職。教習指導員を辞めて…③

教習指導員の待遇について

 見苦しい話がダラダラと続いたので、ここからは多少なりともマシな方向に持っていきたい。
 僕が働いていた所は、そこまで小さいわけでも大きいわけでもなく、規模は並だったと思う。
 年収は、総支給で400いくかいかないか。田舎だったら、まぁ食うには困らない。中小企業なので仕方ないが、ボーナスが少ないのが残念だった。
 残業は、繁忙期と閑散期で相当な差があり(学生の長期休暇の時期に仕事が集中する)、繁忙期が月40〜50時間、閑散期が20〜30時間くらい。
 僕は労働時間は極限まで少なくしたいので、どれだけ仕事を頑張っても定時で上がることのできない教習所の商売モデルには、少なからぬ絶望を抱いていた。
 年間休日は110日くらい。有給は取りやすかったので、そこは良かった。が、やはり休みが少ない。特に繁忙期は10時間労働を5連勤とかが普通なので、帰宅しても自炊すらできず、相当に生活が荒んだ。やはり、有給を除いて年間休日120日は、人間らしく生きる上で必要だろう。
 教習指導員は一応国家資格なのだが、これは2〜3ヶ月勉強すれば取れる。ただ、資格を取るまでは事務をやるのだが、これが本当にきつかった。自分の裁量が狭すぎる上に、どれだけ考えても正解が分からないこと、知らなければできないことが多すぎて、その上電話はひっきりなしに鳴るわで、まさに地獄を見た。ライターの借金玉氏も言っていたことだが、発達障害傾向のある人間に事務は鬼門である。仕事のアタマとケツが見えない状態で、なぜこうするのかも分からずただ手順をこなすというのは、本当につらい。
 それに比べれば、教習の方は仕事内容そのものとしては僕に合っていた。あくまで今までやってきたクソブラック労働と比べて、であるが。
 マンツーマンなのでマルチタスクがそれほど求められず(二輪の複数教習を除く)、大筋がカリキュラムから逸脱していなければ、個々の指導員の裁量はかなり広かった。なぜその人の運転が上手くいかないのかを分析して仮説を立てて、自分なりのアプローチをして成果が出たときには、柄にもなくやりがいを感じたりもした。もっとも、やっていてプラスの感情を抱ける教習生は全体の2割くらいだったが、それでも120%苦痛だった今までの労働と比べれば「もしかしたらしばらくは続けられるかもしれない」という手応えがあったにはあった。
 ただ、一日中助手席に座り続けるので、首と腰に受けるダメージが甚大であり、そこが大きな問題だった。運動習慣のない指導員は中年を過ぎるとほとんどが身体的問題を抱えており、手術のために休職する人がかなりの頻度で出ていた。個人的には、運転席に座り続けるタクシードライバーよりも身体的ダメージは大きかったと感じる。他人、それも初心者が運転するため車の挙動が予測しづらいのと、ハンドルを握らないので腕の運動すら不足するからだろう。
 全体的に見れば、まぁブラック企業ではなかったもののグレーであり、この業界に戻ることは考えていない。

これからどうするのか

 有給消化期間を含めれば、だいたい1ヶ月ダラダラした。ものすごいスピードで時間が過ぎた。昼から酒を飲んだり、競馬に手を染めてみたり、登山をしたり、曲を作ったり……。
 まだまだ全然ダラダラし足りない。が、このままダラダラし続けて、貯金が尽きたらハイまた労働、というのも虚しいので、バイクで日本一周をやろうと思っている。32歳にもなって自分探しかよ、と思われそうで恥ずかしいのだが、おそらくタイミング的に今しかないし、どうしてもやりたいのだから仕方がない。
 一応、過去に2回に分けて日本の大部分をツーリングしたことはあるのだが、当時は資金に余裕もなく、ただ走っただけというのに近かった。今回はそのリベンジと、この先定住する地を見定めるために、じっくりと全国の街を見たいと思っている。今は地元で、かつて祖父母が住んでいた家に「家賃がかからないから」という理由だけで一人で住んでいるのだが、正直この街に飽きてしまった。かりに理想の場所が見つからなかったとしても、それはそれで今の土地に腰を据えて住むぞという覚悟も決まるだろう。
 出発は、来年2024年、冬の終わり頃を予定している。

中長期的にどうするのか

 教習指導員をやっていて、諸先輩方が口を揃えて言っていたのが「この仕事は潰しが効かない」ということだ。転職できるとしても、せいぜい運転手で、またこの業界に戻ってくるのが多い、と。
 僕はもう全身がバッキバキに凝り固まった状態で労働に耐えるのはこりごりなので、運転関係の仕事には戻りたくない。バイト程度に少しならやるかもしれないが。
 なんとか潰しを効かせたい。が、今回の一件ではっきりしたように、サラリーマンを長くやるのは僕には無理な話だ。中学生の頃から直感的にそれが分かっていたのに、楽な方楽な方に流れてここまで来てしまったのがまずかった。
 最終的に自営業に繋げられるような資格を取るしかない。いきなり開業というのは厳しいだろうから、数年の修行は覚悟の上で。
 行政書士か社労士、学費と3年かかるのがネックになるが鍼灸師もいいなと考えている。記憶力のピークは過ぎてしまったが、机の上の勉強ならまだなんとかなると信じたい。

 3回に分けて迷走しましたが以上です。ありがとうございました。

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