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「もと駐車場」が「にぎわう酒場」に。無機質な空間ってなんだろう@目黒

「東京R不動産」の物件でオープンした、素敵なお店取材の第2弾。「空間づくりのこだわり」「物件Before-After」などのご紹介です。

●酒場に生まれ変わった駐車場の物語

訪れたのは、クラフトビール・日本酒と創作料理のお店『ANOTHER8』。このビルは、東京R不動産を運営する『株式会社スピーク』がリノベーションを手がけており、一階部分はもともと駐車場でした。

大通りを一本入ると現れるお店。店内で照らされた8本のビールタップが目を引きます

そんなお店のオーナーは大東(おおひがし)さん。商品であるお酒に対してはもちろん、驚くほど空間や地域に対する考えもしっかりとお持ちで、「こんな方にお店を開いていただけてとてもうれしいなあ・・」と感じられる取材でした。

『株式会社酒八(サカハチ)』の代表取締役CEOでもある大東さんに聞いた、「なるほど」と考えさせられるお話の数々をどうぞ。

●せっかくなら飲食店にして有意義に

温かみのある空間。(物件Before-Afterが最後に載っています)

もともと、大東さんは法律の勉強に専念されており、分野外の不動産については全くと言ってよいほど知らない状況だったそう。そんななか突然、ご家族が京都で管理していた不動産を大東さんが管理することになりました。

そこで、「これからは不動産を活用する企画力を持てたら良いだろうし、せっかく土地があるならただアパートや駐車場にするよりも飲食店はどうかな」「酒八のルーツは蔵元だから、お酒を出すのはどうかな」と構想を膨らませ…

「短期間でもいいからお店をやってみよう!」

多様なスタイルの席を自由に移動できる店内

そうして、もともとの立場とは全く違った役割を不動産に与える「空間の再生」プロジェクトを開始。すると人気店を6店舗展開するに至り、こちらの『ANOTHER8』は、京都の『BEFORE9』に続く2号店目としてオープンしました。

切れると別種のビールが補充されるため、いつ訪れても新しい出会いを楽しめます

「飲食店で修行を積んで独立する人もいますよね。自分の場合は、法律の独特の言語体系を学んだことが、他の業界特有の考え方についても学んだり自分に落とし込んだりする力になっていて、それが役立っているのかなぁ」

●目指したのか、結果としてか。

配管や配線を露出してもサマになるよう、各管は綺麗に並べられています

ところで、私たちが普段訪れる様々な場には、このように躯体の剥き出された、スケルトン状態のような空間が多いと感じませんか。例えばコンクリート剥き出しのカフェや美容院、ベンチャー企業のオフィスなど...。

『ANOTHER8』も、そういった空間にしようと最初からイメージされていたのでしょうか。

「う〜ん、イメージして狙ったというより、”結果的に”この感じになったんです

ふらりと入りやすい、ラフな雰囲気を醸し出す床

「駐車場として使われていた躯体を無理に隠すのではなく、素地を生かしたかった。意識したのはそのプロセスで、完成したのがたまたまこの空間だったというか。なので、狙って武骨にしたわけではないんです」

ゆっくりと語られるお言葉に、私は「なるほど」と考えさせられました。

この穴は、駐車場だった頃のアンカー跡(=配管などを固定していた物の跡)だと推測。埋めることなくそのまま活かされています

大東さんのおっしゃるように、よく考えてみれば「武骨な空間」は以下のように分けられるのかもしれません。

(1) 武骨さを演出することが目的の場合(元々はそうでなかったとしても)
(2) もとの空間を生かすことが目的の場合(結果的には躯体が剥き出されたまま武骨な空間になることもある)

それぞれを経て、最終的に出来上がる空間は同じだとしても、そこに至るまでの考え方や工程はきっと全くの別物ですよね。

●「なるべくいじらない」ことで街に馴染む

『ANOTHER8』は、狙っていたというよりも偶然としてオフィス街(目黒駅)への出店となりました。しかしお店にはビジネスマンだけでなく若者や海外の人たちなど多様な人で賑わっており、街の交流の場となっていることが感じられます。

グラスは低めにすることで目線を下げ、コミュニケーションをフラットに

そこで、「お店と地域」という外側との関わりについても聞いてみました。

「もちろん主役は、酒というコンテンツです。しかし空間として街にポッと出て地域に根付くためには、街に対して"違和感を出さない"ことが大切。それには躯体をあまりいじらないこと。つまり、街に対しての解釈をするんです。いいお酒やお料理さえあればいい、ということではないですからね

ゆっくりと話す大東さんは、「それが正しいというより、それが僕たちの考え。 」と付け加えられました。

●「かっこよければいい」ではないと感じ取った

机や椅子の脚を固定するコンクリート。毎日お客さんの足が当たることで徐々に汚れ、ここではそれが「育ってきた」と表現されます

「最初はデザインなどにもあまり関心がありませんでした。しかしデザイナーさんと準備する中で、『単にリノベがいい・かっこよければいい』のではなく、『遊び心や、街との関わりという考え方に”良さ”がある』と、なんとなく感じ取ったんです」

その「なんとなく感じ取る」というのは、きっと誰にでもできることではない気がします。大東さんは、ロジカルな考え方・お店を始める行動力だけでなく、空間的なセンスも潜在的にお持ちだったのではと感じられるエピソードでした。

空間に馴染む色のエアコン。こうして塗ってしまうとメーカーの補償対象外となってしまうため、相当な空間へのこだわりが無ければ塗装には踏み出せません

大東さんの中にある、店内や地域という”空間”に対する考えが、そのままお店として表れた『ANOTHER8』。ここには、「街や空間に馴染むという解釈」が詰まっていました。

キャッシュオンで気軽に注文ができ、来店するたび異なる様々なクラフトビール楽しめるお店。ぜひ足を運んで、お料理や空間を味わってみてください。

●お店情報と物件ビフォアフター

店名:ANOTHER 8(アナザーエイト)
Instagram:@another.8
住所:東京都目黒区下目黒1-2-18 
オープン:2017年4月
広さ:67.68㎡

BEFORE:駐車場。元々はこの中を通らないとビル内に入れない構造だったので、向かって左側の塀を取り壊して「ビルの入口」を作り、お店を通らなくても上階にアクセスできるようにします
AFRTER:『ANOTHER8』
多様な人が集う空間に。左には上階への入口も見えます


●他の「お店紹介一覧」はこちら

商品だけでなく、空間そのものを楽しんだり、まちとの関わりに想いを巡らせたり。「東京R不動産ならではの視点」でお店の物語を紹介しています。物件Before-Afterも楽しんでいただけたら。

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