見出し画像

Fake時代の帰結

アメリカの大統領選挙で、民主党のバイデンへの支持が急激に高まっているというニュースを見た。米国大統領選挙は予備選挙と党員集会、全国党大会、大統領選挙という三段階の複雑な構造なので、いまだに、その仕組みがわかっていないが、候補者固めと代議員選びの中、民主党のバイデン候補への支持がどんどん高まっているということだ。


その理由が、こういった国難とも言うべき時期には、安定感があり、信頼性のある大統領が必要であるという広いコンセンサスが生まれてきているらしいのだ。

Fake時代の旗手ともいうべきトランプ大統領は、ツイッターでの気ままな発言によって世の中を動かしてきた。既存のリベラルマスメディアからは常に攻撃されていた彼は、勢い、自らのメディアであるツイッターを最大限活用してきた。

有識者、専門家の意見を軽視し、気持ちのままに、ツイートを放った。

メキシコの壁、中国の不公正取引、中東問題でも、その気ままなツイートは世界を揺るがした。それであっても、トランプの固定支持層にとっては、こういった発言は、彼らの世界観を一定の形で体現しているものであったため、その支持率の低下というに繋がったわけではない。ある意味では、それがアメリカの政治的多数の気分を反映しているといっても良かった。

しかし、ことここに至って、目に見えない感染症のヴィールスがFakeな時代の致命的な欠点をつきはじめている。

科学者の意見を踏まえない、大統領の素人的ツイートが許されない状況に立ち至ったのだ。

アメリカでは、大統領が数多くの危機に立ち向かうというタイプのドラマが多い。その中では、常に、国家存亡の瀬戸際で大統領やその周りの専門家たちが国を救うというストーリーが繰り返し放送される。

メキシコの壁、中国の不公正取引、中東問題、北朝鮮問題、ある意味では、米国民からすれば自分とは遠い世界で起こっていることだ。自国民を守るというトランプの発言はどう薄っぺらかろうが、他人事と高をくくってられたのだろう。

ところが感染症に立ち向かうのには、トランプが予算削減したCDCという専門家集団の活躍が不可欠なのだ。そしてこういった時代のリスクコミュニケーションの作法から見て、大統領のツイッターなどというものはもっての外なのである。

物事には常に表裏がある。ある時期に、有効な手法は、別の時期には致命的な悪手となる。

トランプを政治の頂点に押し上げたFakeというキーワードに代表される手法が、彼とそれを支持した国民を急速に追い詰めている。

これは決して他人事ではない。Fakeな時代を最大限活用した政治家が我々の側にもいる。それは心の奥底の方で、政治家というものへの決定的な不信を国民の深層心理の中に植え付けてしまった。

それが今後の僕らの運命にどのような影響を及ぼしていくのか、皆目見当がつかない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?