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若手女優が輝いた夏のテレビドラマ7選(2016~2022)

これまでに、夏クール(7~9月)のドラマではどのような若手女優が活躍してきたのだろうか。昨年の夏から順にさかのぼって、各年を代表する印象に残ったドラマを取り上げてみた。

登場する過去の夏ドラマ
・現在朝ドラでも存在感を見せている次世代ヒロイン女優の初主演作
・戸田恵梨香と永野芽郁がW主演して新しい魅力を見せて高く評価されたヒット作
・主演女優が連ドラに欠かせない存在に成長するきっかけとなった異色のドラマ
・知る人ぞ知る浜辺美波のNHK連ドラ初主演作
・上白石萌歌が女優としての素質を開花させた綾瀬はるか主演ドラマ
・橋本環奈が連ドラヒロインとしての第一歩を踏み出した奇跡の原点
・彼女の連ドラ初主演作となった名作SF小説の2016年版ドラマ化

2022年夏■善人長屋(NHK BSプレミアム)

原作は西加奈子の時代小説。中田青渚が連ドラ初主演を果たした。物語の舞台は、1人の新入りを除いて表向きは善人だが実は裏稼業を持っている住人ばかりが住む長屋。中田は長屋の差配の娘を可憐に演じ、NHKのBS時代劇に清冽な新風を吹き込んでくれた。透明感のある声も印象的な彼女は、大きな瞳で巧みな目線の使い方を見せる女優だ。

そして、1年後の今年の夏、中田青渚はNHK朝ドラ『らんまん』で田邊教授の妻・聡子を魅力的に演じている。また、8月1日から全4話で放送中のドラマ『僕たちの校内放送』(フジ系)にも出演中。

彼女は、これから何かが起こりそうな気配を存在感にひめた、「予感の女優」だ。

2021年夏■ハコズメ~たたかう!交番女子~(日テレ系)

泰三子の人気コミックを根本ノンジの脚本でドラマ化。戸田恵梨香と永野芽郁がW主演。永野芽郁は、交番勤務の新人警察官・川合麻依を演じた。Z世代でも人気を集めたドラマだった。当時、取材でインタビューした10代の新人女優たちが口を揃えて、「いま熱中しているドラマ」として『ハコヅメ』を挙げていたことを思い出す。

永野芽郁は、夏のドラマがよく似合う女優で、ドラマ初主演の『こえ恋』(テレ東系)も2016年の夏クールだったし、2020年夏は『親バカ青春日記』(日テレ系)のヒロイン役、2022年夏は『ユニコーンに乗って』(TBS系)で主演した。青空を思わせる永野芽郁の存在感が、夏ドラマのカラッとした雰囲気に合っている。

2020年夏■妖怪シェアハウス(テレ朝系)

2020年の夏クールは、『半沢直樹』(TBS系)、『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)、『アンサング・シンデレラ』(フジ系)など多彩な連ドラがオンエアされた。そんな中で、主演女優の躍進という点でこの年の夏を代表するドラマと言えば、小芝風花主演の『妖怪シェアハウス』(テレ朝系)だ。

小芝風花はこの前年に『トクサツガガガ』(NHK)で連ドラ初主演して注目を浴びていたが、民放の連ドラでの主演は本作が初だった。今や連ドラに欠かせない女優のひとりに定着して、2023年春は『波よ聞いてくれ』(テレ朝系)、今夏は『転職の魔王様』(カンテレ/フジ系)でヒロインを演じ、異なるポジションで連投が続いている。

クセが強い共演者に翻弄されながら成長していく女性像を演じさせると天下一品。それが、「王道系小芝風花」の持ち味。その魅力を開花させたのが『妖怪シェアハウス』だった。『妖怪シェアハウス』では同居する妖怪さんたちに翻弄されたが、同じように最新出演作の『転職の魔王様』では成田凌が演じるキャリアアドバイサーに翻弄されながら自分らしさを見つけ始めるヒロインを好演している。

2019年夏■ピュア!~一日アイドル署長の事件簿~(NHK)

2019年の夏クールは、上野樹里主演の『監察医 朝顔』(フジ系)、黒木華主演の『凪のお暇』(TBS系)、深田恭子主演の『ルパンの娘』(フジ系)など、女優が主演した佳品が少なくなかったが、その中からあえて変化球のチョイスで、浜辺美波が主演した3夜連続オンエアのNHKドラマを選んだ。

脚本は『トリック』シリーズの蒔田光治。一日署長をすることになった売れないアイドルが主人公の推理コメディ。現在放送中の連続テレビ小説『らんまん』でヒロインを演じている浜辺美波は、この『ピュア!』がNHKドラマ初主演。彼女が出演した蒔田光治脚本のNHKドラマとしては、2020年秋に岡田将生との共演した『タリオ 復讐代行の2人』の硬質なタッチも印象的だった。

「推理するべーやん」は、いつも愛らしい。2020年放送の『アリバイ崩し承ります』(テレ朝系)でもアリバイ崩しが得意な主人公の時計店店主を好演した。映画では2019年公開の『屍人荘の殺人』で探偵少女を演じたが、探偵の助手をする主人公の大学生を演じたのは神木隆之介。『らんまん』でも夫婦役で共演している神木とは、この映画で初共演した。浜辺美波をべーやんという愛称で呼ぶ人は、最近あまりいないけど、素敵なニックネームだと思うので、わざと呼んでみました。

2018年夏■義母と娘のブルース(TBS系)

主演は綾瀬はるか。主人公の義理の娘・宮本みゆきの高校生時代以降を演じた上白石萌歌が多くの人に知られるようになるきっかけとなった作品でもある(ドラマのナレーションも担当)。活発で親しみやすい女優としての彼女のイメージが、このときに固まったと言っていい。

上白石萌歌に雑誌の取材で初めてお会いしたのは、彼女がまだ小学生の頃だった。「未来の自分に何かを残すのが好き」という彼女が「お仕事ノートというのを作って、その日にしたお仕事の内容や衣装、出会った人を記録して、反省点を書いてます」(『月刊オーディション』2012年2月号)と話していたことを、今でもよく覚えている。

『義母と娘のブルース』以前の彼女の「夏の出演作」としては、2017年夏に放映されたキリン「午後の紅茶」”落ち着け、恋心”篇のCMが印象に残っている。清流沿いで上白石萌歌が演じた女子高生がaikoの『カブトムシ』を歌っているところに、途中から歌に参加するもうひとりの女子高生役を演じたのが、その後、主演級女優に成長する白石聖だった。このときのCM共演がきっかけでプライベートでも大の仲良しになった、という話を上白石と白石(そういえば苗字も似ている)の2人それぞれに取材したときに聞いたことがある。

『義母と娘のブルース』で宮本みゆきの小学生時代を演じた横溝菜帆は、現在15歳で、最近では2022年公開のアニメ映画『かがみの孤城』で當真あみが声優を担当した主人公と鏡の向こうの世界で出会う少女のひとりの声を演じ、注目の若手女優に浮上した。

2017年夏■警視庁いきもの係(フジ系)

大倉崇裕の小説を渡部篤郎主演でドラマ化。橋本環奈が「警視庁総務課・動植物管理課」に所属する新人巡査・薄圭子役を演じ、連ドラ初ヒロイン。プロデュースは、この後、『知ってるワイフ』や『忍者に結婚は難しい』(ともにフジ系)を手がける共同テレビの貸川聡子。大倉崇裕原作ドラマとしては、檀れいが主演した『福家警部補の挨拶』(2016年)のプロデュースも担当していた。

橋本環奈らしさが、よく出ていたドラマだった。コメディ向きの躍動する存在感で、いきいきと演じて、新しいタイプのヒロイン女優としての第一歩を踏み出した、記念碑的な作品だ。

原作のヒロインがショートカットだったため、彼女は役作りのために髪の毛をバッサリと短く切った。髪を切る様子はLINE LIVEで生配信され、話題を集めた。今はまただいぶ長めのヘアスタイルになっているので、最短ショートカット期の彼女は、いまやちょっと懐かしい。

橋本環奈は2023年秋クールでは『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ/フジ系)に主演する。警視庁の特殊部署に所属する警察官役という点では通じるものがある。あえて捜査一課などの現場の刑事役でないのは、警察官の制服姿がよく似合うというのも理由なのかもしれない。

2016年夏■時をかける少女(日テレ系)

『タイムトラベラー』のタイトルで放送された「NHK少年ドラマシリーズ」
版(1972年)、落合正幸監督による繊細な演出で内田有紀が主演した「ボクたちのドラマシリーズ」版(1985年)、2020年に逝去した大林宣彦監督による原田知世主演映画(1983年)、細田守監督/仲里依紗主演(声の出演)のアニメ映画(2006年)など、さまざまな切り口で作品化されてきた筒井康隆のSF小説の2016年版ドラマ。黒島結菜が連ドラ初主演。

黒島結菜は、『アシガール』『いだてん』『ちむどんどん』などのNHKドラマで演じた役柄のイメージで、世間的には活発でアクティブな印象が強いかもしれない。しかし、その一方で、ミステリアスで理知的な、SF的世界観がよく似合う女優でもある(彼女自身も学生時代は理系で数学や物理が得意だったという)。「SFサイドの黒島結菜」の代表作が、『時をかける少女』であり、2017年に前後篇2部作で公開された映画『サクラダリセット』で、ともに超能力を持つ役を演じた。

『時をかける少女』は、夏の物語でもある。実写化作品の中には秋に放送・公開されたものもあるが、原田知世主演映画版は7月16日公開、細田守監督のアニメ映画は7月15日公開、黒島結菜主演のドラマは7月9日から全5話で放送。ドラマの中には、浴衣姿で夏祭りに出かけるシーンもあった。

彼女が演じた主人公の芳山未羽は、時を自由に超える能力を身につけた。われわれにはその能力はないけれど、女優たちが出演した過去の作品を改めて振り返ることによって、彼女たちの原点となった、あの夏にタイムスリップすることができる。

そのほかの若手女優が記憶に残る演技を見せた夏クールのドラマ(2016~2022)※ゲスト出演を含む

☆2016年
・家売るオンナ(日テレ系)北川景子、イモトアヤコ、新木優子
・こえ恋(テレ東系)永野芽郁、大友花恋、水谷果穂
☆2017年
・コード・ブルー‐ドクターヘリ緊急救命‐(フジ系)新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、新木優子、馬場ふみか、下垣真香
・マジで航海してます。(MBS/TBS系)飯豊まりえ、武田玲奈
・悦ちゃん(NHK)平尾菜々花、門脇麦、石田ニコル
☆2018年
・探偵が早すぎる(読売/日テレ系)広瀬アリス、結城モエ、南乃彩希
・チア☆ダン(TBS系)土屋太鳳、石井杏奈、佐久間由衣、広瀬すず、新木優子、箭内夢菜、山本舞香、志田彩良、大友花恋、朝比奈彩
・透明なゆりかご(NHK)清原果耶、酒井若菜、マイコ、水川あさみ、野村麻純、蒔田彩珠、清水くるみ、モトーラ世理奈、片山友希、鈴木杏
・幸色のワンルーム(ABC)山田杏奈、わたなべ麻衣、齊藤なぎさ、佐々木舞香
・この世界の片隅に(TBS系)松本穂香、二階堂ふみ
☆2019年
・いつか、眠りにつく日(フジ系)大友花恋、喜多乃愛
・これは経費で落ちません(NHK)多部未華子、伊藤沙莉
・凪のお暇(TBS系)黒木華、唐田えりか、水谷果穂、白鳥玉季
・蛍草(NHK BSプレミアム)清原果耶、谷村美月
・だから私は推しました(NHK)桜井ユキ、白石聖、松田るか
☆2020年
・私の家政夫ナギサさん(TBS系)多部未華子、高橋メアリージュン、若月佑美、夏子、趣里、川津明日香、松本若菜
・アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋(フジ系)石原さとみ、西野七瀬、桜井ユキ、穂志もえか、永瀬莉子、久保田紗友、山谷花純、出口夏希、徳永えり、浅田芭路、宮澤佐江
・女子グルメバーガー部(テレ東系)瑛茉ジャスミン、大原優乃、佐々木美玲、矢島舞美、山口まゆ、横田真悠
☆2021年
・彼女はキレイだった(フジ系)小芝風花、佐久間由衣
・サレタガワのブルー(TBS系)堀未央奈、高梨臨
・お耳に合いましたら。(テレ東系)伊藤万理華、井桁弘恵、駒井蓮、桜井玲香、赤江珠緒、豊嶋花
・八月は夜のバッティングセンターで。(テレ東系)関水渚、池田朱那、木南晴夏、堀田茜、瑛茉ジャスミン、武田玲奈、山下リオ、森香澄、山﨑夢羽
・ライオンのおやつ(NHK BSプレミアム)土村芳
☆2022年 
・オールドルーキー(TBS系)芳根京子、榮倉奈々、岡崎紗絵、生田絵梨花、當真あみ
・競争の番人(フジ系)杏、大西礼芳、野村麻純、新津ちせ、萩原みのり、夏子、若月佑美
・魔法のリノベ(カンテレ/フジ系)波瑠、SUMIRE、北香那、森カンナ、トリンドル玲奈、駒井蓮
・パパとムスメの7日間(TBS系)飯沼愛、小栗有以、鈴木ゆうか
・テツパチ!(フジ系)白石麻衣、坂東希、工藤美桜、矢作穂香
・石子の羽男‐そんなコトで訴えます?‐(TBS系)有村架純、富田望生、生見愛瑠、趣里、西山繭子、片岡凜、小林星蘭

現在放送中の女優系ドラマ(2023年夏)

・真夏のシンデレラ(フジ系)森七菜、吉川愛、仁村紗和
・転職の魔王様(カンテレ/フジ系)小芝風花
・シッコウ!!~犬と私と執行官~(テレ朝系)伊藤沙莉、ファーストサマーウイカ、駒井蓮
・18/40~ふたりなら夢も恋も~(TBS系)福原遥、深田恭子、松本若菜、出口夏希、長澤樹、嵐莉菜
・ウソ婚(フジ系)長濱ねる、トリンドル玲奈。織田梨沙
・DIY!!‐どぅー・いっと・ゆあせるふ‐(TBS系)上村ひなの、野口衣織、森山晃帆、平澤宏々路、菊地麻衣、太田しずく
・彼女たちの犯罪(読売/日テレ系)深川麻衣、前田敦子、石井杏奈、鈴木ゆうか、朝倉あき、さとうほなみ
・量産型リコ‐もう1人のプラモ女子の人生組み立て記‐(テレ東系)与田祐希、藤井夏恋
・初恋、ざらり(テレ東系)小野花梨、西山繭子、高山璃子
・癒やしのお隣さんには秘密がある(日テレ系)田辺桃子、矢吹奈子
・最高の教師 1年後、私は生徒に■された(日テレ系)松岡茉優、芦田愛菜、莉子、本田仁美、田鍋梨々花、當真あみ、茅島みずき、詩羽、田中美久
・最高の生徒~余命1年のラストダンス~(日テレ系)畑芽育、齊藤なぎさ、志田こはく、菊地姫奈、みとゆな
・ハレーションラブ(テレ朝系)髙橋ひかる
・何曜日に生まれたの(ABC/テレ朝系)飯豊まりえ、早見あかり、若月佑美
・やさしい猫(NHK)優香、伊東蒼
・カメラ、はじめてもいいですか?(BS松竹東急)田牧そら、手島実優、村山優香、中村守里
・わたしの一番最悪なともだち(NHK)蒔田彩珠、髙石あかり、久間田琳加、サーヤ、井頭愛海※8月21日スタート



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