2023年夏のテレビドラマで注目したいZ世代の若手女優たち(中編)

2023年夏の連ドラに出演するZ世代(10代~20代前半)の次世代ヒロイン女優から前編では畑芽育・茅島みずき・長澤樹の3人をピックアップしたが、今回は『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日テレ系・7月15日スタート)に出演する當真あみ、配信中の『放課後ていぼう日誌』(Lemino)で主演している莉子、『ばらかもん』(フジ系・7月12日スタート)に出演する近藤華、ひと足早く6月24日に放送がスタートした『やさしい猫』(NHK総合)に出演している伊東蒼の魅力について記したい。


注目のZ世代女優④當真あみ(『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』)

現在16歳の當真あみは、「懐かしい夏」をイメージさせる女優だ。彼女の素朴な存在感は、夏休みの「香り」「色」「音」に通じる、心地よさと、懐かしさを感じる。

2022年にアサヒ飲料「カルピスウォーター」のCMに起用された彼女は、CMでは爽やかで淡い存在感を見せている一方で、ドラマや映画では天才小説家中学生役を演じた『妻、小学生になる』(TBS系)、スター性を秘めるフェンシング選手を演じた『オールドルーキー』(TBS系)、主人公の声を担当したアニメーション映画『かがみの孤城』、亀姫役を演じている大河ドラマ『どうする家康』(NHK)などで、女優としての才能の奥深さを垣間見せた。透明感の奥に深さがある、ユトリロの風景画のような魅力を持つ女優だと言っていい。

松岡茉優が主演する今夏の『最高の教師』では、當真あみは物語の舞台となる鳳来高校3年D組の生徒・東風谷葵を演じる。誰にも言えない悩みを抱えている優等生の役だ。このドラマで女子生徒役を演じる田鍋梨々花・田牧そら・莉子・詩羽・芦田愛菜・本田仁美・茅島みずき・田中美久(出席番号順)らと、どのような演技のハーモニーを響かせるかにも注目したい。

昨年発売された『日経エンタテインメント! Z世代女優Special』(日経BP社)で當真あみにインタビューしたときに、彼女は「台本に、基本は黒で、大事なことは赤いペンで書きます」と話していた。僕は、心の中のノートに、當真あみという名前を、赤で書きたい。そう思った。

注目のZ世代女優⑤莉子(『放課後ていぼう日誌』『最高の教師』)

その『最高の教師』にも出演する莉子は、現在20歳。6月13日からLeminoで配信中のWebドラマ『放課後ていぼう日誌』では、釣りを楽しむ主人公の鶴本陽渚を演じている。

彼女は、2021年まで『Popteen』専属モデルとして活躍したほか、2020年にはAbemaの恋愛リアリティー番組『月とオオカミちゃんには騙されない』にも出演して同世代女子が支持する人気インフルエンサーに浮上した(2023年6月現在、公式インスタグラムのフォロワー数は約58.1万人)。

女優としての彼女の魅力は、「親しみやすい、ミステリアス」。一見、矛盾するような表現だが、明るくフレンドリーな存在感の中に謎めいた要素を隠し持ったような役がよく似合う、ちょっと不思議な魅力を持つ。過去の出演作では、清原果耶が演じる主人公の背中を押す、児童養護施設で育った高校生役を演じた『ファイトソング』(TBS系)での好演が印象に残っている。

タレントパワーランキングのWebサイトでインタビューしたときには、彼女は、はきはきと話してくれて、「いつも、このまんまです(笑)。よく笑ってるねと言われます」(タレントパワーランキングWeb・2021年4月22日配信)と語っていた。素顔の莉子は「直球の笑顔」だけど、女優としてドラマや映画のマウンドに上がった莉子は、大谷翔平が投げる打者の目の前でぐいっと変化するスイーパーのように、意外性を秘めた「変化球の魅力」を発揮する。

明るくて爽やかな女の子、というだけではない、プラスアルファを秘めた個性が、莉子という女優の持ち味だと思う。

注目のZ世代女優⑥近藤華(『ばらかもん』)

宮沢りえと共演している三井不動産リアリティー「三井のリハウス」のCMや資生堂の「創業150周年」記念企業CMなどで正統派の輝きを見せて話題を集めた近藤華が、杉野遥亮が主演する『ばらかもん』で連ドラ初レギュラー出演。豊嶋花が演じる山村美和の親友で、マンガ家を目指している中学2年生の新井珠子役を演じる。メガネをかけて演じるようで、CMでの印象とはまた違う魅力を見せてくれそうだ。

13歳のときに「三井のリハウス」のCMに起用された近藤華は、現在は高校1年生になった。絵を描くことや動画作りが好きで、知的でクリエイティブな一面を持っている。

「未来」という言葉が、これほど似合う女優は、いない。彼女は、未来のキラキラした予感を存在感に秘めている女優だ。だから、きっとタイムトラベラーものの映画やドラマが、よく似合うと思う。

彼女がドラマや映画で輝く未来を心で想像すれば、明日がやってくることが、今よりも、もっと楽しみになる。

注目のZ世代女優⑦伊東蒼(『やさしい猫』)

現在17歳の伊東蒼は、子役時代には2016年公開の映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で宮沢りえ、オダギリジョーと杉咲花が演じた親子と一緒に暮らすようになった少女演じて注目を集め、NHK連続テレビ小説『おやすみモネ』では清原果耶が演じた主人公に「気象予報士になった理由」を尋ねる中学生を演じた。

中島京子の小説を原作とするNHKドラマ『やさしい猫』には、優香が演じるシングルマザーの主人公の娘役で出演して、ドラマのナレーションもつとめている。

安藤サクラ、門脇麦、三浦透子、岸井ゆきの、古川琴音、蒔田彩珠など、「なにかがありそうな」感を秘める役柄を演じ、「なにかがはじまりそうな予感」を与えてくれる演技派女優たちを多数擁する芸能プロダクション「ユマニテ」に、伊東蒼は所属している。彼女もまた、ドラマを見た視聴者に”この子、気になるな”という「ひっかかり」を与えて、存在感の中に新しい「物語」の序章を感じさせる。深くて、尊い、令和型の演技派女優である。

後編では、出口夏希・矢吹奈子らを取り上げる予定。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?