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【Tokyo Saikai Edition 001】 船越沙希子さん

東京西海のnoteでは、器と食を通して様々な舞台で活躍する方たちにお話を聞き、その風景を収める新連載『Tokyo Saikai Edition』をスタートします。記念すべき第一回目は、プロダクトデザイナー・倉本仁さん率いる「JIN KURAMOTO STUDIO」の船越沙希子さんにお話を聞きました。船越さんは同社でマネージャーとして、デザイン以外の全般を担当されています。

東京西海の「ALONGU 明論具(アロング)」は、「JIN KURAMOTO STUDIO」との協業により生まれたシリーズです。様々な国籍の料理が混在する現在の日本の食卓において、その多様性を受け止める器として開発されました。

https://alongu.jp/

同社では週に一度、倉本さんがデザインしたラウンドテーブル「ONE」(CondeHouse / 2019)を囲み、スタジオ内のキッチンで調理したランチをみなさんで召し上がっているそうです。この日は我々もお邪魔し、スタッフの劉さんが作るポークカレーをご馳走になりました。とても美味しくて、ランチを通してみなさんの素敵なチームワークを感じられる時間でした。以下にてご覧ください。



——スタッフのみなさんが一堂に会し、ランチをするようになったきっかけを教えていただけますか?

私が入社する前の出来事ですが、海外から来ていたあるインターンの方が、「もう少しみんなで話す機会が欲しかった」「もうちょっとみんなと食事をしたかった」と帰国前にお話されていたことがあったようです。その一言をきっかけに、「みんなで食事をする機会を設けよう」と、週に一度、毎週金曜日のフライデーランチが始まりました。かれこれ、5、6年は続いています。東京西海さんでもみなさんでランチをされていますよね?

——はい。東京西海も創業以来、スタッフが集まって833ランチを行っています。もう10年になりました。御社のランチでは、どのようなルールを設けているのでしょうか?

ルールを設定するのは難しいですよね。当初は担当の順番を決めていましたが、その時々でそれぞれの忙しさも異なるので、みんなで相談しながら担当を決めています。一覧表を作って担当した日付を記入して、不公平感が出ないようにしています。また、一食分の予算も決めています。日によって出張などで参加できないメンバーもいますが、今日は珍しく全員参加のランチでした。また、プロジェクトを共に行う外部のメンバーを交えて、食卓を囲む時もあります。

——円卓でのランチというのも、みなさんの表情がわかり、輪になって食べる楽しさがありますね。週に一度、みなさんでランチをするようになってから、社内で変化を感じることはありましたか?

食事を囲むと、仕事のことだけでなく、もう少しプライベートなことでも自然と話せるので、ランチの時間があることでコミュニケーションがより円滑になっているかなと思います。あと、(倉本)仁さんの出張報告の場になったり、スタッフ同士の相談や意識の共有の機会にもなったり、週に一度のランチが仕事にも良い影響を与えていると思います。また、私も含めてですが、料理が得意じゃないスタッフが、これをきっかけに徐々に料理に親しんでいくのを感じると、良い取り組みだなと思います。作るのが大変なこともありますが(笑)。


——ランチにおいて思い出深いメニューはありますか?

海外からのインターンの方々が作ってくれたメニューが、特に思い出深いです。例えば、フランスの方はニョッキのクリームソースとか、台湾の方は野菜炒めや卵料理とか。本場の家庭の味を感じられて、とても美味しかったです。また、今日のカレーを作ってくれた劉さんが作る中華料理は、辛くなくてとても優しい味なんです。それぞれの家庭の味をここで味わえるのはとても贅沢ですよね。

——いつも定番のメニューがあるのではなく、その時々のスタッフによって変化があるということですね。これまでインターンとしてどこの国の方がいらっしゃいましたか?

私が知っている限りでも、フランス、タイ、台湾、チェコ、中国、スイスの方が来てくれました。なぜかフランスの方が多いです。

——普段はどのようなメニューがありますか?

人数が多いので、カレーやパスタなど大鍋で調理できるものが主です。お好み焼きや、タコス、パエリアを作ってくれたスタッフもいました。キッチンと言ってもオフィスの給湯室で、そこに卓上コンロが二つ、フライパンと寸胴鍋しかないため、スペースも道具も限られています。その中でみんな工夫してうまくやっています。以前は仁さんが料理をすることもあったそうです。


——それはすごいですね。今日はカレーを作るところから見させていただきましたが、制約のある中で楽しみながら料理をされていて。火加減をミリ単位で調整している様子は、デザイナーならではと思ったほどです。そしてお皿が「ALONGU 明論具」ばかりで恐縮です(笑)。


私たちにとっては当たり前の光景になりましたが、「ALONGU 明論具」は事務所で大活躍してます。ここにいるスタッフはみんな自宅でも使っています。

——それはありがたいです。船越さんご自身は、「ALONGU 明論具」のプロダクトを最初にご覧になって、どのような印象を持たれましたか?

私が入社したときプロジェクトはすでに進行中で、事務所にいくつかのプロトタイプが並んでいて、線の細い繊細な印象を受けました。プロトタイプで実際にランチをしては、「お茶碗はもう少し高台の高さがあった方がいいかな」等と検証して、デザインの微調整をしていました。


製品化されてからは、自宅でも「鉢」(フチサビ、ヤキシメ)を使うようになると、パスタやスープ、親子丼など、様々な料理に使えることがわかりました。盛り付けに困ったら「ALONGU 明論具」を手にしがちです。また、切った野菜を一時的に置いたり、ボウル代わりにも使っています。今日のランチのように、「鉢」にフルーツを盛り付けて、みんなでシェアするのも楽しいですよね。


——船越さんがもともとお使いの食器は、和食器のようなものが多かったですか?

わりと「HASAMI PORCELAIN」のような直線的なフォルムのものが多かったです。「ALONGU 明論具」を使ってから食卓の幅が広がりました。今後、自宅でもプレートを追加しようと考えています。ワンプレートで朝食に使ったり、パスタやカレーにも使えると思います。


——船越さんには「ALONGU 明論具」を通して、本社(西海陶器)と東京西海と関わっていただきましたが、その中で印象深いエピソードはありますか?

プロフェッショナルの方たちばかりなので、やりとりを見ていてすごく勉強させていただきました。仁さんが波佐見にお伺いして、大量の釉薬見本の中からイメージに近い色を選び、それに対してエンジニアの阿部さんから「この釉薬ならもっとこういう表現ができる」「この形を再現するにはこっちの土の方が良い」など、提案をいただきながら対話を積み重ねていきました。それが徐々に形になっていく過程は面白かったです。また、玉木さんはじめ御社のみなさんもデザイナーがやりたいことに寄り添って、それを実現する方法をいつも考えてくれました。すごく楽しいプロジェクトでしたし、とても良いチームだったと思います。

——そんなお言葉をいただき、大変光栄です。ローンチに至るまで、紆余曲折がありましたが、プロジェクトに関わるメンバーが総出で臨み、チームで製品とブランドを作り上げていく感覚がありました。おかげさまで弊社のスタッフも大きな達成感を味わうことができました。

私たちも同じくです。アートディレクションをして下さった真崎嶺さんもネーミングやWEBデザイン、グラフィックで良い味を出してくれましたよね。先日、真崎さんにお会いした時に、「ALONGU 明論具は自分にとっても大切なプロジェクトです」と仰ってくれました。

——真崎さんにも。それは嬉しいです。最後になりますが、「JIN KURAMOTO STUDIO」の最新情報をご紹介いただけますか?

倉本がクリエイティブディレクターを務めるJAPAN CREATIVEが、3月に東京ミッドタウンで展示会を開催します。JAPAN CREATIVEは、日本のつくり手と国内外のデザイナーをつなぐコラボプロジェクトを続けて、今年で13年目に入りました。今回はこれまでに生まれたプロダクトの展示と合わせて、期間中にはデザイナーのトークイベントも計画しています。

——それは楽しみですね。ぜひ伺わせていただきます。船越さん、本日はありがとうございました。


船越 沙希子
2019年よりJIN KURAMOTO STUDIOのスタジオマネージャーを務める。ALONGU 明論具の鉢、小皿(テンモク)、汁椀(コゲチャ)を愛用中。


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