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20th century woman

今さらですが、めちゃくちゃいい映画でした。

そもそもマイクミルズ監督を思い返すと、彼の他の作品「サムサッカー」「人生はビギナーズ」「マイクミルズのうつの話」もとてもよいです。彼の映画はコンプレックスを抱えていたり、生きるのに不器用な人たちにスポットを当て、そして静かに応援してくれるような希望を与えてくれます。

愛や正義の映画が全てを解決するわけではなく、手を差し伸べてあげる、背中をやさしくさすってくれるような映画が時には必要なのです。

舞台は70年代で、男気のあるシングルマザーの母親と、ティーンネイジャーの息子を中心に。母親は離婚のトラウマ的なもの抱えもう一度愛を育むことに消極的で、父親不在の子供になるべく不自由させない子育てを体現すべく父性を持ち合わせたかっこいい人。しかし、型にはまった育て方をするでもなく、アート志向のフォトグラファーを同居させて子育てに参画させたりする。理解できないことは理解できないことを自覚しつつ、ある種リベラルな手法も用いることができる視野の広い人だなと思いました。

近年男女の考え方がトランジェンダーなど複雑なフェーズに移ったり、そもそも真の平等とは何か?社会的コンセンサスを見直し始めています。その中でやはり世代的格差で分かり合えない部分も一定数あるなと思っていますが、この映画は何だか頑固にこうあるべきとかいうわけではなく、時代の移り変わりを俯瞰しながら、お互い理解していこうよという視野を持っていることに好感を抱きました。(今のSNSは殺伐としています)そして、分かり合えないことに対して、お互いどこまでわかろうと努力するか。そんなお互いへの眼差し、それこそが僕たちの心を熱くする”愛”であり、愛こそが重要だと教えてくれる映画だと私は感じました。この決めつけないスタイルはマイクミルズ映画に一貫しているんだと思います。総勢5人の同じ屋根の下の仲間が独特のハーモニーを奏でていて、いわゆる思春期の胸キュンお悩みものだけでは終わらない深みをもたらしたことはこの映画の称賛すべき点です。

ちなみにここで出てくる時代、そして母親含む擬似家族は監督の実際の家族がモチーフとのことで、映画に落とし込み、記録すること自体も愛なのかもしれません。

P.S. もともとPV監督だったマイクミルズだけあって、パンクやTALKING HEADSがどういう風にその時代の若者に響いていたか、それらを中心に描くのではなく、その時代の若者の日常生活を通して漏れ聞こえてくる点、またそんな音楽を教えてくれるのは兄弟だったり、身近な誰かだったり青春の一コマである点もまたよかったです。

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