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ホバークラフト作ってみたよ!【第11話】

このお話は、物語でなく実話です

モノづくりが好きな人は楽しめると思います。何を作ったかというと、パーソナルホバークラフト…しかもキャビン付き…???そんなの見たことないんだけど…それもそのはず、このパーソナルホバークラフトは、80年代のお話しなんです。今回はその11回目です^^


INDEX

  1. 自動車屋が創ったホバークラフト

  2. “ほな、やりまひょか”

  3. “なかなかイイじゃないか” 

  4. 強制操舵 ・ 非常ブレーキ、‟何やそれ ?”

  5. 自動車エンジニアが設計したら、エアクッションヴィークルはこうなる

  6. スタイリングだけじゃなく、センスが良いカラリングで行こう

  7. 1年がかりの 「設計承認」

  8. 放映日ギリギリのきわどい撮影

  9. 久米島 ・ イーフビーチが呼んでいる

  10. 撮影日がシェイクダウン航行 “トホホ‥‥(汗)”

  11. マーケティングもイノベイティブに

  12. ものすごいパブリシティに、業界も騒然

  13. 初めて見るエアクッションヴィークルに大興奮

  14. “カタログもハイセンスね”

  15. 世界に144個しかないジッポー SENSOR ACV 300 S ライター

  16. 販売会社設定に全国へ旅ガラス

  17. 海を汚さないエンジンオイル

  18. これぞ逆転の発想 ・ エンジン倒立搭載

  19. ‟ブルネイ王室ご用達~ !”

  20. トランポだってお洒落に

  21. レースに初出場、ノーマル艇でトップ

  22. “フロリダで生産して、アメリカとカナダで売らせてくれ”

  23. アメリカへ旅立った SENSOR ACV 300

  24. フロリダ州の新天地で

17.海を汚さないエンジンオイル

SENSOR ACV 300 プロジェクトの立ち上がりは、自社で考えられるあらゆるコト ・ 自社で出来るあらゆるコトを実践したが、スポンサー各社も協賛金に留まらずさまざまな形でバックアップしてくれた。

協賛と支援は様々なかたちでしていただくことが出来た

 沖縄での2回のプロモーション映像撮影では、ANA (全日空) が ACV 300 の空輸 ・ 約50名のスタッフの搭乗 ・ ANA イーフビーチホテルの 4泊5日滞在を無償提供してくれた。出光興産は、従来に無い画期的なマリンオイル ‟APOLOIL B・B CRUISING” を開発していて、市場投入のタイミングが SENSOR ACV 300 のデビューと合致した。

ACV300は環境配慮型のエンジンオイルのアピールに一役買った
多くの協賛企業のロゴが並ぶ広報機

 ‟APOLOIL B・B CRUSING” は水上で使用する2サイクルエンジン用のオイルだ。2サイクルマリンエンジンのオイルはガソリンに混合して使うから、排気に付着したオイル粒が水中に落下して、川や海の環境を汚染する。これに対して ‟APOLOIL B・B CRUSING” は、水中に落下してもバクテリアによって分解され、環境を汚染しないという優れモノだ。

 ‟APOLOIL B・B CRUSING” をアピールするキャラクターとして SENSOR ACV 300 がとてもマッチするとして選ばれた訳だ。同時に、イギリスジェットスキーチャンピオンだった契約パイロットの 「スティーブ・ローガン」 のイメージもピッタリだとなって、‟APOLOIL B・B CRUSING” のカタログ ・ ポスター ・ カレンダーに出演し、販売促進に一役かった。

 出光は、久米島の SENSOR ACV 300 の撮影にも、オイルエンジニアが同行して周到なチェックとデータ取りをしていた。出光の広告宣伝に使用した写真は当社が撮影したものだし、「スティーブ ・ ローガン」 選手の出演料は、当社とスティーブの契約に含まれている。物事は何でも ‟出来るだけ相手に貢献する” のが当社の信条だから、そんな考え方もスポンサー各社がご支援頂ける所以ではなかろうか。

 市販製品に、もとからスポンサーのロゴ ・ マークが貼付してあり、誰がどこで撮影してもそのままの姿でコミュニケーション媒体に露出する。今まで無かったマーケティングイノベーションはそういう狙いがあったけど、スポンサー相互間の相乗効果も大きい。SENSOR ACV 300 プロジェクトを支えて頂いた CLUB ANGLE ・ ANA ・ IDEMITSU ・ PENTAX のロゴマークは、このようにして好印象を持たれる製品に乗って飛翔して行った。

18.これぞ逆転の発想・エンジン倒立搭載

 開発~生産~販売の一環した流れでプロジェクトを進め、大企業で生産して貰う段取りも取れていた。前代未聞の凄い出来事で、中小企業が設計承認を取ったままの仕様が、大企業の品質基準にも合致し何ら変更点が無いことも画期的だった。これからも、こんなプロジェクトは出て来ないんじゃないか。ここまで条件整備したのに、私の頭の中には未だ憂鬱なことがあった。 

 実は、まだイメージした性能が出ていなかったのだ。例によって ‟どうしたら巧く行くか考えよう” とそのことばかり気になって、夜も眠れない。あるとき、怖い夢を見て夜中にガバッと起き上がった。
 久米島のイーフビーチ沖で、コッグドベルト (歯付き駆動ベルト) が切れて航行できなくなり、泳いで押しているとき鮫にガブッと襲われた。夢の詳細は覚えてないけど、そのような夢だった (笑)。

 いまいましいけど、名案が出て来ない。喫茶店で木立を眺めながらコーヒーを飲んでるとき、エアショーのビデオで軽飛行機が宙返りしているシーンが浮かんできた。 ‟まてよ、軽飛行機だって宙返りできるけど、SNSOR ACV 300 に搭載してるエンジンはウルトラライトプレーン (超軽量飛行機) に使われている ROTAX 500 だ。ウルトラライトプレーンは、宙返り飛行は出来るんだろうか” と思って専門家に聞いてみた。

エンジンの上下を逆さにした図面、ベルトに頼らず、エンジン直結でファンを回す方式に…

 ‟翼の構造からズッと宙返り飛行は出来ないし、パイロットも持たないけど、仮にズッと宙返り飛行してもエンジンは停止しませんよ” とのことだ。ROTAX のカタログを見ても、エンジンと一体組付けが出来る減速機も販売されている。‟しめた” と思ったね、これで鮫に襲われずに済む (笑)。

 コンセプトやスタイリングだけでなく、競合製品を凌駕する性能を出そうと考えていたので “エンジン倒立搭載” をトライしようと画策した。エンジンを倒立搭載して減速機 (ギヤボックス) と一体組付けすれば、推進ファンをダイレクトドライブできるじゃないか。 そうすれば、トラブルメイカーのコックドベルトを廃止できるし、推進ファンとシュラウド (ファンの覆い)とのクリアランスをもっと詰められるではないか。推力もアップするはずだ。

 エンジン + ギヤボックスは、一体化してエンジンサポートフレームに乗せるから、マウントラバーの変形に対応するクリアランスは必要だけど、コッグドベルト仕様よりは詰められる。ファン下部の空気導入量が大幅に増加するのと相乗して推力がアップするだろう。振動低減のメリットもある。

エンジンの上下を逆さまにする事で様々なメリットが生まれた

 こうして ‟逆転の発想” でトライした結果、従来仕様より推力が向上し、水上で38ノット(約70km/h) という市販製品ではトップの最高速度を得るとともに、運動性能が著しく向上した。 水上で 70 km/h というのはメチャクチャ速いんだよ、車に例えれば、250 km/h くらいに相当する高速と言っても過言じゃない。“逆転の発想で、鮫を喰ってやったぞ” 、でもカツオのほうがいいな (笑)。


試作後、様々な広報活動と並行して、絶え間ない改善がすすめられた

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今回は技術的なお話が出てきました、飛行機のエンジンだからひっくり返っても大丈夫な構造だったというのはすごいですね。そのままエンジンを倒立させる事で技術的な課題を解決するという柔軟さが課題を打破する事につなげることが出来た。こういうことは今でもある事なのかもしれませんね^^

今回のお話しいかがだったでしょうか?面白いなと思ったら、スキ!をお願いいたします。

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