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2023年に読んで面白かった洋書(ファンタジー、SF、ノンフィクション)

2023年に読んで面白かった本のまとめです。2022年版はこちら

すべてKindle版です。また、ページ数は自分が買ったバージョンの数字を、初版の年やジャンルはGoodreadsの表記を参照しています。

世界的な物価高騰と円安も相まって、今年は全体的に去年よりも値上がりした印象です。でもセール価格を狙えばめちゃくちゃ安いよ!

※去年は読んだ本の一覧をスクショで載せてましたが、今年はGoodreadsのアカウントを削除したため、スクショなしでお届けします。

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小説

Scott Lynch『Red Seas Under Red Skies』

Gentleman Bastardsシリーズの2巻。2社から出ている。天才詐欺師たちの今度の舞台はきらびやかな賭博場と血なまぐさい海賊船。1巻では次々に人が死んで私の心もお通夜だったが、2巻では誰が死ぬのか予想しやすかったので平静を保てた。登場人物を好きになってはいけない。死ぬから。

631ページ(Gollancz版)、2007年初版
ジャンル:Adventure / Epic Fantasy / High Fantasy / Pirates

Scott Lynch『The Republic of Thieves』

Gentleman Bastardsシリーズの3巻。2社から出ている。今回の仕事は選挙活動に芝居の興行。主人公の想い人が敵として登場。章ごとに過去と現在を行き来して、主人公自身の秘密も明らかに。誰が死ぬのかという私の予想は外れたが、かわりに別の人が殺された。やっぱり死ぬんかい!

600ページ(Gollancz版)、2013年初版
ジャンル:Adventure / Epic Fantasy / High Fantasy / Crime

David Mitchell『The Bone Clocks』

日本語訳は『ボーン・クロックス』。2社から出ている。ひとりのイギリス人女性を中心に、6つの年代の話が展開する。吸血鬼っぽいやつらと転生者たちの闘争が話の本筋だけど、個人的には登場人物の人生の一場面を切り取った描写のほうが印象に残っている。

598ページ(Sceptre版)、2014年初版
ジャンル:Fantasy / Science Fiction / Magical Realism / Contemporary

Emily St. John Mandel『Sea of Tranquility』

時空を超えて森の中で聞こえるバイオリンの音色。その謎解きを主軸に、世界的なパンデミックとロックダウンを描きつつ、現実とは?と問いかけてくる。こう書くと難解そうに聞こえるが意外にも非常に読みやすく、静謐な物語をするーっと味わえた。のどごしなめらかなSF。

270ページ、2022年初版
ジャンル:Science Fiction / Time Travel / Fantasy / Historical Fiction

Scott Hawkins『The Library at Mount Char』

2社から出ている。アメリカの片隅で人ならざる養父に育てられ、「図書館」のcatalog(ほぼ異能と同義)を習得した子どもたち。その養父が失踪したところから話は始まる。大量殺戮や遺体損壊や焼殺といったグロ描写がめちゃ多いけど、スリリングで面白かった。でも本当にグロい!

390ページ(Crown版)、2015年初版
ジャンル:Urban Fantasy / Horror / Science Fiction / Mystery

Becky Chambers『The Long Way to a Small, Angry Planet』

Wayfarersシリーズの1巻。日本語訳は『銀河核へ』。人類が地球を離れた遠い未来、さまざまな異星種族のクルーが働く宇宙船Wayfarerの話。異星種族の生態や文化、人格を持つAIとの関係性などの描写が面白い。クルー同士で衝突しても嫌がらせや憎み合いには発展しないので安心して読めた。

508ページ、2014年初版
ジャンル:Science Fiction / Space Opera

Becky Chambers『The Galaxy, and the Ground Within』

Wayfarersシリーズの4巻(完結)。ただの中継地として使われている地味な惑星Goraを舞台に、予定外の滞在を余儀なくされた複数の異星種族と、それを迎える親子の話。1巻の登場人物も出てくる。

※このシリーズでは性別を特定しない三人称単数の人称代名詞にxeを使っている(xe, xyr, xyrself)。古い小説はhe、最近の小説はtheyを使うことが多い印象なのだが、xeを使っている小説を実際に読んだのは初めてだった。発音を調べると複数出てくる。zeeやzayと読む人が多いのかな?

264ページ、2021年初版
ジャンル:Science Fiction / Space Opera

Margaret Atwood『My Evil Mother』

Amazonオリジナルの短編。Kindle Unlimitedで借りた。ひと昔前のアメリカを舞台にした話。主人公の母親が語る世界観はファンタジーであり、童話のようでもある。この短い話の中で、ひとりの人生を垣間見たように感じて、しんみりした気持ちになった。

33ページ、2022年初版
ジャンル:Fantasy / Historical Fiction / Contemporary

ノンフィクション

Eric Jorgenson『The Almanack of Naval Ravikant: A Guide to Wealth and Happiness』

日本語訳は『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』。アホみたいに安くて文章も読みやすいので気軽に原著で読めばいいと思う。現代風にアレンジされて西洋で哲学の一種として受容されている仏教思想はこんな感じだろうな、てのを英語で読むいい機会になった。

242ページ、2020年初版
ジャンル:Business / Self Help / Philosophy / Personal Development

Randall Munroe『What If? 2: Additional Serious Scientific Answers to Absurd Hypothetical Questions』

2社から出ている。What If?シリーズの2巻。日本語訳は『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』。子どものシンプルで愉快な質問が増えており、個人的には1巻より楽しめた。日本からの質問もあり、著者は回答する際のイラストに日本語の台詞を入れてくれている。

572ページ(John Murray版)、2022年初版
ジャンル:Science / Humor / Physics / Comedy

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英語の本を2年以上読んでみての雑感

  • 本を読むのに慣れていれば単語の意味や展開を類推しやすく、多少わからなくてもそのまま読み進められる。ぶっちゃけ英語力よりも「本を読むのに慣れている」の1点でなんとかなっている

  • 日本語の本に比べると集中力は明らかに落ちる。無理に集中しようとするより、開き直って気負わず読むほうが続けやすかった。基本的に夫がゲームや動画の音声を流しまくっている横で読んでいる

  • まったく英語を使わない生活なので、読みやすさは日によって変動しやすい。すらすら読める日もあれば、からきし駄目な日もある。その時の気分がどれだけその本に波長を合わせやすいかで決まる

  • 恋愛がメインのお話じゃなくても主人公に恋人ができてハッピーエンド!となる流れに、西洋におけるカップル文化の圧の強さを感じる

  • 恋愛がメインのお話だと、現代風の世界観のヒロインは男と同じ肉体労働や戦闘に加わろうとする(そんなヒロインを白馬の王子様が見初める)。「男女平等だから女も強くあれ!」というプレッシャーが日本より強いのかもしれない

  • ファンタジーに偏った読書をしているので、本を通して覚えた単語もだいぶ偏っている気がする。たとえばクラーケンの足はtentacles(触手の複数形)……こうして特に使い道のない知識が増えていく

  • 一方、現代アメリカを舞台にした小説ではDuolingoで覚えたフレーズや固有名詞が出てきたので意味を理解できた。ありがとうDuolingo

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2023年をふり返る

大人になると時の流れが早くなるんですが、それでも1年って長いですね。8月よりも前に読んだ本はまるで去年のように感じるんですよ。真夏の暑さで記憶が薄れてしまうのでしょうか。

今年は途中で4ヶ月ほど読書から離れていました。このまま読書をやめることも考えたのですが結局やめられず。読書に依存しがちな自分自身ってやつと、どうにかつきあっていくしかないですね……。

でも、その4ヶ月のあいだに銀行周りの手続きができたのはよかったです。読書をやめたら自然と意識が向いたんですよね。普段どれだけ読書に意識を支配されとんねん、と思ってちょっと怖くなりました。やっぱ読書って危険なんちゃう?

また、今まで裸眼視力1.5を維持してきたのに、40歳の今年は1.2に落ちてしまいまして。夫のすすめでブルーライトカット眼鏡を買いました。仕事でも趣味でもモニタを見てるし、もっと早く使うべきだったかも。

11月後半からはKindle Unlimitedを利用開始。せっかく買ったのに途中でリタイアする本が何冊か出てしまったんですよね。お金がもったいないと思ったので、しばらく本を買わずに借りる生活をしてみようと。

実際にUnlimitedを始めたら「身銭を切って後悔しないのか」という決断を迫られずに済むのでめちゃくちゃ気が楽になりました。

でも決断の回避をくり返すのも長期的にはよくないかもしれない。ただでさえ育児や家を買うという「まっとうな大人」を全然やってないのに……考えすぎか?(40歳、早い人だと育児が終わってるし、家のローン完済してる人もいて、彼らは私と見えてる世界が全然ちがうんだろうなと思う)

「四十にして惑わず」なんてハードル高すぎるぞ孔子!と迷い惑いながら40代が幕を開ける2023年でした。2024年も迷い惑うだろうけど平穏であってほしい。

皆様も、よいお年をお迎えください。

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