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「今日、この人生で、あなたに出会えてよかった」と思われたい女の話

平たい言葉だけれど、日々感謝したい。

そんなことを考えている。

先日Twitterでもつぶやいたけれど、事実が存在するとして、それに対し「どこを切り取るか」で感情も変わってくると思う。最近、取引先の体制変更でいくつかの仕事を手放さなければならなかった。正直、フリーランスの身としては「OMG!!これがフリーランスか!サバイバル極めてんな」としか思えなかったけれど、多少とは言えその分野の実績を作ることはできた。収入が減ったことも事実。けれど、その仕事に費やしていた時間を削減することができたのも事実。時間を削減することで余力ができ、これまで体力気力時間を理由にしていた「やりたこと・やりたいかも知れないこと」に目を向けられるようになったのも事実(まだ準備中〜〜〜)。

一部の職と報酬は失ったけれど、限られた人生の中でもっとも価値のある(はずの)時間を得ることができた。

これは、本当に素晴らしいこと。女王蜂の緊急事態という曲でボーカルのアヴちゃんが歌っているけれど、私たちにとって時間は「ただ増えてゆくようで減ってゆく」もの。思い出も知識も経験も増えているはずなのに、刻一刻と減ってゆく。溶けていく。

これは私があと4ヶ月ほどで40才になるからかも知れないけれど、最近つくづく腹の底から思うこと。

日々、こんなに楽しい(ときにとっても苦しいーーー!!!)のに私はいつか死ななければならない。私も、あなたも、ほとんどみんな。今のところ恐らく「タイムマシーンはこない」。

25年も前にCharaちゃんが歌っていたことは本当なのだ。中学生の私には正直よくわからなかったけれど、今はよくわかる。失ったことから学んだこと。痛み。再び失うかもしれないことへの恐れ。と共に、失うことで手に入るものがあるということ。だからこそ、毎日を大切にしたいし自分の気持ちに正直でありたい。できるだけ健康に生き、健康に逝けるようにしたい。そして誰かに必要とされたい。

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「あなたに会えてよかった」

美容部員の仕事をしていた頃、そのように言われたことがある。

接客が終わり、使用した物品を片付けながら適度に混雑する通路のお客様へお声掛けをしていた。

「日本では、目を合わせずにいらっしゃいませと声を出すよね」などと海外にルーツを持つ知人に言われたこともあったけれど、接客者の多くは道行く人々へ「いらっしゃいませ」や「こんにちは、ようこそお越しくださいました」と言う。バーニーズや和光では「いらっしゃいませ」は聞いたことはない。気がする。多分、そういうブランディング。けれど、多くの場合こんな風に声掛け(声出し?)をする。

その時も通常運行。

「こんにちは、いらっしゃいませ」

通路を行くお客様全員に届くように。そして私の声に一人のお客様が立ち止まった。口紅を陳列している棚の前。化粧品売り場には、本当に何かを探していらっしゃる方だけではなく、欲しいものはないけれどなんとな〜く時間を潰したり、百貨店の中を通り抜けとして使われる方もいらっしゃる。いずれにせよ、地球に存在する自分以外の人間はいつだってお客様になる可能性があるのだから、そして美容部員、接客者としての私の勤め。お声掛けをした。

その方は、なんとな〜く口紅をご覧になったりスキンケア商品を手に取られたり。私は興味をお持ちくださったことへの感謝の言葉を述べ「もしお時間があればお手入れしていきませんか?」と提案した。

美容部員が本当に売っているものは「夢」だ。きれいにして差し上げること。それが使命。それを叶えるためのアイテムが化粧品。きれいになりたい気持ちをお手伝いをする。それが美容部員。もしかすると気に入ってくれるかも知れない(という下心や、日々の売上のことはもちろん頭の隅にある)。コロナ前、もう5年以上前の接客スタイルはそのような形がスタンダードだった。買う買わないはお客様の判断。でも、お手入れを通して幸せな時間を提供できれば嬉しいし、きれいになることを楽しんでもらえたら最高。私も幸せな気持ちをもらえる。

そんなことを思いながらお手入れ体験の提案をしたところ、その方は承諾してくださった。

まずはお席にご案内。お召し物が汚れないようケープをおかけする。スキンケアアイテムで髪が濡れないよう、お顔の隅々までお手入れできるよう、フェイスラインを出す。髪をピンで留める。その間、一秒たりとも無駄にしない。無言ではなく、何か動作をする前には必ず「失礼いたします、〜〜をします」と声をかけ、これから何をするのか、どのようになるのか、不安になったりびっくりさせたりしないよう一言かける。言葉をかけながら、その方がどのような方なのか、何を望んでいるのか、何を悩みとして抱いているのか。傾聴する。おしゃべりを楽しんでもらいながら、スキンケアからメイクまで仕上げる。最後に鏡をご覧いただきながら一言。

「いかがですか?」

その言葉への返答が

「あなたに会えてよかった」

だった。

その方は、お母さまの病院帰りだった。お母様をガンで看取られたほんの数時間後だった。

ご自宅への帰り道、これからお通夜やさまざまな手続きがあることは承知だけれど、まっすぐ帰りたくない。ふらふらと百貨店の中を通り抜けているだけだった。そしてそのことを知らない私に声をかけられ、なんとなくお手入れに誘われ、おしゃべりをしながらスキンケアとメイクをされた。他愛もないおしゃべり。日々のこと。お手入れ、こだわり、好きな色合い、季節や肌のこと。本当に本当に、些細で他愛もないこと。

涙を浮かべながら小さくこぼされたその一言を、私は一生忘れない。

「あなたに会えてよかった、少し楽になれた」

私の使命は、きれいにして差し上げること。その中で、笑顔がもらえたらとびきりハッピー!喜びや幸せを共有し、楽しいね、嬉しいね、前向きになれたよ。もしそう思ってもらえたら、私が救われる。私自身が肯定される。

美容部員を離職し久しいけれど、私はこの経験を一生忘れない。忘れないとともに、現職コーチとしても常にこの気持ちでお迎えしたい。

あなたに喜んでもらえたら。今すぐではなくとも、少しでもあなたが救われたら。私も救われる。

日々、いろいろある。生きている限り、いいことも悪いことも嬉しいことも悲しいことも悔しいことも腹立たしいことも、そして幸せなことも。

でも人生はネタづくりのようなものだから。その事実を、ネタを、どう取り扱うか。それは私次第。人生の、特に試練の渦中において、状況はまな板の上の鯉に見えようとも「どこを切り取るか」「どこに焦点を合わせるか」。この選択権は私たちにある。

10年ちょっと勤めた美容部員人生の中での1コマ。だけれど、私は一生忘れないし、現職コーチとしてもマインドは同じ。

あれ?何の話だっけ。

やっぱり構成シートがないと話がまとまらないな。と一気に書き上げ読み返して。はぁ・・・無念。でもこれは私の伸び代だからね、いっちょやってやりますか!!!

私も、このわずかな人生の中であなたに出会えたことに感謝します。

会えてよかった。

ありがとう。

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