突然ショートショート「ダンスが済んだ」
「ダンス…が…済んだ!」宿直室で、突然何を言い出すのかと思えば、なぜかこの言葉だった。
「何が済んだんだよ……朝っぱらからうるせーな、もう」
「だん、ダンス…が…済んだんだ!」無理して回文にでも挑んでいるのかと思ったよ。
「何のダンスが済んだんだよ」
「これだよこれ。『明るいナショナル』」
彼が見せてくれたのは、あのドラマの最初に入る、あの曲のダンスだった。
「あ…あー、全然わからん。記憶にない」
これで服に「松下電器・松下電工」とでも書いてあれば少しは思い出せたかも知れないが、今一よくわからない。
「これが目覚めのルーティーンダンスで、これが済んだから『ダンスが済んだ』と言っているんだよ」
よし、わかった。それ以上は語るな。
「お前もやってみろ。寝起きだろ?」
「寝起きだけど遠慮する。コーヒー買ってくるわ」
「あ、じゃあついでにお肉も頼むよ!」
お肉なんて、肉屋とスーパー以外に見たことがないものを、肉屋とスーパーの両方が開いてない朝7時にどうやって買えと?
まあ、彼なら無理もないか。何せ『ナショナル』で朝を迎えるような男だからな。
(了)(459文字)
あとがき
近頃は咳き込みが激しく、今日は薬を処方してもらいました。ましになれば良いのですが…
さて、『明るいナショナル』。ドラマの「ナショナル劇場」でやっていたオープニングキャッチというものの一種でして、本編の前に流れることで『ご覧のスポンサーの提供でお送りします』よりも高い印象がつきます。
…個人的なおすすめはロート製薬。「SMAP×SMAP」で使われていた最終形態は死ぬほど踊れて癖になります。
ちなみに「ダンスが済んだ」というアイデアの由来はこちらのツイートです。勝手に使って申し訳ありません。
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