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とても個人的なミュージックレビュー① The Shocking Blue (J)

とても個人的なミュージックレビュー①

アーティスト: The Shocking Blue
活動時期: 1967-1974

なんで The Shocking Blue?

 クイーンズ・ギャンビットというネットフリックスのドラマで、The Shocking Blue というバンドの歌う『ヴィーナス』という曲を初めて聴いた。イントロがカッコ良くて、なんじゃこりゃ!と目が覚めた。そしてボーカルの女性の声! 彼女の声を表現する形容詞がわからないけど、甘いとか可愛いとかとは反対の、別にあなたに好かれなくてもいいしという風な媚びない感じ。そういう雰囲気がいい。ドラマの中では、1960年代から70年代の ええ、こんな? わお! という曲が他にも使われていたので、どれもよく聴いてみなければいけないけど、今のところ『ヴィーナス』に一番心を持っていかれてる。80年代にはイギリスでカバーが出て、日本でも有名な歌手がうたっていたよう。全然知らなかった。他にもこのバンドについておもしろいことを見つけたので、彼らについて書いてみる。

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 『ヴィーナス』は、パンチのきいた、かっこいい、且つセクシーな曲だと思う。私が歌詞の意味にいまいちピンとこないところがあるから、とりわけ歌詞に打ちのめされたということはないけれど、でも音楽には確実にやられた。イントロの部分でもう胸ぐらを掴まれて、引き寄せられて、ぽーんと空中に放り出されたよう。曲が進むにつれて、頭の中がドーパミンのシャワーを浴びてるように高揚感に包まれる。なんというセンセイション!

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 今まで聴いたことのある音楽とは全然違う。そもそも、私が知っている音楽というのがすごく少ないのだけれど。多分、かっこいいものやおもしろいもの、新しいものがすごく好きで、そういうのをどんどん求めて見つけて、次の日学校で友達に話して、友達も他の友達や兄姉から得てきた情報を共有して一緒に盛り上がるという時期が他の人たちにはあったんじゃないかと思う。私はちゃんとした友達を持っていなかったので、いい音楽やかっこいいバンドの情報が入ってこなかった。そこで出遅れてそのままになってしまったのだと思う。ブルーハーツだけは知ってる。すごく良く。朝ラン中や掃除中に、常に頭の中で自動的に再生される。自分の中にヒロトの声と言葉がいっぱいなことで満足している部分があって、別の音楽をあまり求めてこなかったのかもしれない。でもブルーハーツはもうずいぶん前だし、私も中年だし、新しいものを取り入れていかくては。ブルーハーツにちょっと寄ってもらって、私の中の音楽蓄積エリアにスペースを作ったら、The Shocking Blue がミサイルみたいにドキューンとすごい勢いで入ってきた。そういう感じ。

 アメリカとイギリスでは、The Shocking Blue が週間チャートで1位を獲得したのは『ヴィーナス』だけだったけど、日本ではもう1曲、とてもよく売れた曲があった。それが『Never Marry A Railroad Man(悲しき鉄道員)』。東の果ての国の人の遺伝子なのか、私も好き。
日本語訳は音時(オンタイム)さんのブログから拝借。

    Never marry a Railroad man
    He loves you every now and then
    His heart is at his new train. No, no, no
    Don't fall in love with a Railroad man
    If you do forget him if you can
    You're better off without him ah...
       鉄道員とは結婚しちゃダメよ
       そいつは時々は愛してくれるけど
       心はいつだって新しい列車に向かってる
       鉄道員に恋しちゃダメよ
       もし落ちちゃっても できることなら忘れるの
       離れた方が幸せになれるのよ…

 ♪no, no, no〜の部分がたまらない。日常の会話の中で、♪ノー、ノー、ノーを使ってヘラヘラしてしまう。たまにしか愛してもらえない気持ちもわかる。上から下への急降下ですごく不安で頭がおかしくなりそうなやつ。そして彼は新しい列車のことで頭がいっぱいって。もうダメだ。

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 あともう1曲。♪I wish I was a bird in the sky......(私、鳥だったらよかったのになぁ)という歌い出しの曲。最初にこのフレーズを耳にした時は、ふんふん、このバンドの場合そこからどう展開するの?と楽しみになった。鳥になりたいだなんて無邪気で夢見がちな雰囲気はまだ2曲しか知らないけどこのバンドには合ってない。歌詞は、♪I wish I was a mole in the ground......(私、モグラだったらよかったのになぁ)と続く。はっとする。モグラとか、なんでもいいから、太陽に照らされない地中の生き物になりたいというのは私の夢だったから。私の頭の中覗かれたのかしら、60年代の人に?!確かに私の頭の中に入れてあげましたけど、それはほんの数日前で、2021年になってたはずですけど??? 多少錯乱する。それとも、「モグラになりたい」というのは英語ではありふれた表現なのだろうか? 左手の指を親指から順番に右手の人差し指でなぞるというマインドフルネスの方法を実践し、大きく深呼吸。落ち着きを取り戻す。音楽の世界はとても広いので、変な歌詞の曲もたくさんあったはず。私と同じことを考えた人が何百万人という中に何人かいても不思議ではない、と 冷静になる。だったら、「石になりたい」という歌も探せば見つかるかな、と、ふと思う。昔、若くて弱っていて、もうくたくたで生きるのもぎりぎりだった時、石になりたいとよく思っていた。3つ目のパートはこう続いた。♪I wish I was a rock in the sea, Like a rock in the sea, Nothing could budge me, I wish I was a rock in the sea......(私、海の石だったらよかったのになぁ。海の石みたいに、何があっても動かない。海の石だったらよかったのになあ。) 石も出た!同じ曲の中に!! びっくらこいた。この曲を私のテーマソングにしなさいという誰かのお告げかなあ。


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バンド

 このバンドは今私が住んでるオランダ人のバンドだった。 これも意外な事実だった。 ボーカルのマリスカとこのバンドを作ったロビー・ヴァン・リューウェンは、人種差別主義者だったらしいけど、彼らの時代は1960年代から70年代とだいぶ昔なので、それほど驚かない。日本ですごく人気が出ていたので、1971年には、ライブとレコードのプロモーションのために来日したこともあったそう。それでも、ロビーはオランダの音楽雑誌のインタビューで、「日本人は金を持った猿以上の存在ではない 」と語ったと言う情報あり。それほど日本が嫌いなのに、なぜ日本で演奏したライブアルバムを出したのかという質問には、マリスカが「こんな猿の住む野蛮な国でも人気があることを示したかった」と答えていたそう。お猿ファンたちは私の親の世代。熱狂していた彼らがロビーとマリスカの発言を聞いていたらと思うと、気の毒で胸が痛む。

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結論

 The Shocking Blue は、今のところ私にはとても新鮮で魅力的。他にもたくさんの曲を出してるようなので、同じ時代の他のグループの曲も合わせて、よく聴いてみたい。鼻歌レパートリーが増えるといい。

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