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日本人の働き方の9割がヤバい件について②

前回の投稿の続きになります。

前回は年功序列や終身雇用という極めて日本的な労働システムがすでにオワコンになっており、経済的成長はもちろん、社会的成長までをも阻んでいるという話を中心にしました。

グローバル化と働き方の激変

だからこそ、働き方や労働に対する価値観そのものを変えなければいけないというわけなのですが、働き方を変えなければいけないのは何も日本だけではありません。日本ではバブルがはじけ、小泉内閣が進めた構造改革の結果格差が急激に広がり、今や貧困問題が深刻になっています。(「生理の貧困」なんて言葉はその象徴の一つだと思います)ただ、格差が広がっているのは日本だけではなく、グローバルな傾向です。

貧富の差の広がりはジニ係数にも表れています。(ジニ係数は貧富の差を表す指標のことで、大きければ大きいほどその国の貧富の差は大きくなります)

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1970年代からアメリカやイギリスにおいて貧富の差が大きくなり始め、2000年以降はフランス、ドイツ、スウェーデンなどの伝統的にジニ係数が低い国も貧富の差が広がってきています。

そして世界の経済構造の変化は、働き方にも大きな影響を与えています。先進国と新興国の間での取引が以前よりも簡単になったため、かつては先進国で行われていた仕事が、新興国で行われるようになりました。

一番わかりやすいのは製造業です。

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上のグラフの通り、これもグローバル化が生んだ現象の一つなので、先進国ではどこも同じような状況にありますが、とりわけ「モノづくり」の国であるわが国では由々しき事態です。

製造業の仕事においても、企画やマーケティングなどのサポート業務の仕事は増えていますが、製造管理や、生産エンジニアの仕事は減っているうえに、賃金も下がっています。つまり、付加価値のない仕事は、製造業のうちでも、海外に出してしまう傾向が高くなっているのです。製造業の仕事が減少している代わりに、上記の国ではサービス業や金融による富が増えているのも忘れていはいけません。

日本でもコロナ禍のおかげで、働き方改革が一気に進んだ会社も多く存在します。出勤せずとも仕事ができるので、都心の会社に籍を置きながら、田舎に引っ越してリモートで仕事をする人も増えました。

そのように働く場所の意味がなくなる世界というのは、すなわち、オフィスや一緒に働く人、工場や機械などの生産手段がなくても、富を生み出すことが可能になっているということです。

そして興味深いことに、このような働き方の変化は世界の教育分野にも影響を及ぼしています。

ヨーロッパではここ数年、英語圏でない国も英語で授業をする国が急激に増えています。各大学が取り組んでいるだけでなく、国を挙げてグローバル人材を輩出する動きが顕著に表れてきているのです。

言うまでもなく、世界の中心はアメリカであり、グローバルなビジネスを行う上でコミュニケーションツールは英語になります。ヨーロッパでもより良い仕事の機会を得るためには英語力は必須であり、若い人にとっては英語ができるかどうかは死活問題とも言えます。

ヨーロッパには新卒一括採用のシステムがないため、若い人は日本以上に仕事を得ることが困難です。特に失業率が高い欧州南部(イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなど)では、欧州北部、北米、豪州などへの「出稼ぎ」も多く、その場合英語ができないと話になりません。

教育のグローバル化の顕著な例として、イタリアのミラノ工科大学が挙げられます。同大学は2014年からすべての授業を英語で提供することにしました。私はイタリアには数回行ったことがありますが、イタリア人は全般的に英語を話す人が少なかったので、この改革は印象的でした。

ヨーロッパの大学がここまで急激にグローバル化を進めるのは、産業界や政府の要望が大きいという背景があります。それだけ現状に危機感を持っているのです。同様に高等教育のグローバル化を掲げてはいますが、遅々として進まないどこかの国とはえらい違いです(泣)

ちなみに私は自分の学校で積極的に海外大学進学を推進しており、これまでに英語で学べるヨーロッパの大学(非英語圏)に多く生徒を進学させてきています。(中には医学部に進学した生徒もいます)

ヨーロッパの大学進学についてはこちらのnoteに書かせていただきました。

激動の労働環境で生き残るためには

話を働き方に戻しますが、既述の通り日本も働き方の激変に飲み込まれています。このようなグローバル規模での労働環境の変化の中で、我々日本人は生き残るために何をするべきなのか。

我々が生存するための確立を高めるためには、他人から求められるようになる仕事を選択することが重要です。生き延びたいのであれば、需要が減る仕事、つまり、人から求められなくなる仕事は避けなければなりません。

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これはアメリカで今後成長するとされる「最高の仕事」ランキングです。リンクを貼った「国外逃亡塾」のnoteにも書きましたが、今も未来も嘱望されているのはコンピュータの専門知識を持った若者です。大学でComputer Scienceを学ぶことは将来の可能性を広げると言われています。

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一方、生き残れない仕事は上記の通りです。タクシー運転手はわかりやすいですね。現時点でもUberにシェアを奪われて生きていくのが大変ですが、これからは自動運転に切り替わり、Uber自体も縮小するでしょう。

また、以前にも何度か自分のnoteに載せていますが、オックスフォード大学のオズボーン教授らが発表したAIによって代替可能性が高い仕事の一覧は参考になります。

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この表を見ていろいろ思うところはありますが、銀行員などはある意味これから消える職業の象徴なようにも感じます。銀行員と言えば、これまで若者に人気の職業で、社会的には「勝ち組」とされた人々です。それが、今後はさらに自動化が進み、その存在はAIによって淘汰されていきます。

デンマークでは2004年に比べ、2013年には銀行の支店は48%も減少し、ベルギーは30%近く、スペインは24%、ノルウェーやドイツは31%、アイルランドは36%、イギリスは23%と、ヨーロッパでは銀行の支店がいずれも30%前後が消えています。まさにDX(Digital Transformation)。エリートであっても、この変化に対応できなくては今後の社会では生き残れないということです。

ここで、今後生き残るための仕事を選ぶノウハウをまとめておきます。

①今後伸びていく仕事
・数値やデータを扱う仕事
・IT関連の仕事
・医療関連の専門職
②自動化されない仕事
・企画や執筆など高度な創造性が必要な仕事
・複雑な判断が必要な仕事
・ルーティン化できない仕事
・臨機応変な対応が必要な仕事
・高度なコミュニケーションが要求される仕事
③グローバル、もしくはローカルな史上で評価される技能やノウハウ
・国や言語に関係なく世界中どこでも需要がある仕事
・海外に外注することが不可能な仕事
④自分にしかできない仕事
・他人がコピーできないノウハウ
・自分らしさを発揮できる仕事

私の仕事は②の「高度なコミュニケーションが要求される仕事」なので、AIに取って代わる可能性は低いです。(ただ、授業に関してはオンラインでいくらでも質の高い動画や教材が手に入るため、「教える」だけの教師という価値観は今後なくなっていきます)

自分の生徒たちや子どもたちが社会に出ていく際には、自分の価値観をアップデートさせ、「自分がやりたい仕事」という観点だけでなく、「今後生き残れる仕事」という観点も持って、職業選択をしなくてはいけません。

来るべき時代に備えるために

ここまでさまざまな理由から我々の働き方を変えていかなければいけないことを書かせていただきました。ただし、VUCAの時代と言われる通り、予測不可能な時代がこれからも続いていきます。

アメリカの一会社が倒産することでここまで世界情勢が変わったり、たった一つのウィルスで世界の機能が全停止したりするなど、これからも予測不可能な事態に陥ることは十分あり得るでしょう。すべてはグローバリゼーションに由来していると言っても過言ではありません。

そんな時代の中で生き残るためには、常に学び続けて変化を厭わぬ姿勢とこれまで以上に周りの人たちを大切にすることが必要だと思います。

前者は子どもであれ大人であれ同様です。旧態依然の古い価値観にとらわれ思考停止に陥っている人が今でも多くいますが、それでは今の日本のように時代の流れに取り残されるだけです。また、後者は、いつの時代になっても大切なものは変わらないはずで、仕事というのは常に人間同士の信頼関係で成り立っています。どんなに自動化されても社会の本質は変化しないと信じています。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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