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らっきょう屋、この春、あんこ始めました

「とまりのつけもの」の岸田です。
らっきょう専門店「とまりのつけもの」という名で表しているように、私たちは漬物屋です。昭和49年の創業以来、ずーっと漬けものとともに歩んできました。

そんな私たちが、この春、あんこ製造をスタートさせました。

「????」と、なりますよね。私だっていきなり聞かされたら頭の中は疑問でいっぱいになります。どうして漬物屋があんこ製造を始めることになったのか。今日はちょっとその話をさせてください。

地元のあんこ供給元がなくなってしまう

私たちが商いをしている鳥取市には、昔ながらの製餡屋さんがおられました。製餡(せいあん)という聞きなれない難しそうな字ですが、いわゆるあんこ屋さんです。

鳥取市内はもちろん、山陰地方のさまざまなお店にあんこを卸していた、いわば「あんこの元締め」といってもいい、そんなあんこ屋さんです。

しかし、工場の老朽化などのご都合があって廃業されることが決定。それが2022年。昨年のことです。

さあ、困った!!


なにしろ鳥取市だけではなく、山陰地方の多くのあんこの製造を担われていたわけです。このままでは需要があっても供給されない状況に。

あんこと一口に言えども、和菓子の原料としてはもちろん、最近は「あんこ×バター」など洋菓子やパンとの組み合わせも人気。困るのは洋菓子屋さん、パン屋さん、スーパーのお惣菜(おはぎ等)まで多岐にわたります。

おはぎ、どら焼き、おまんじゅう、ケーキにトースト。大活躍のあんこ

地元の豆で、地元のあんこを使った商品作りを続けたい!

という、あんこに熱い想いをもった方々の期待に応えたいと、地元スーパーのあるバイヤーさんが思いつきました。

「とまりさんなら、なんとかしてくれるんじゃないか?」

と。

漬けもの屋にあんこの相談をするというのも不思議な話ですよね。ただ、正直に言えばそのバイヤーさんの気持ちも分かるんです。何しろ漬物業界ではちょっと異色の存在でしたから。

パウチじゃなくてお菓子みたいな瓶を使ったり、

植物由来の素材で着色してあるので安心して食べて頂けるカラフルらっきょう

チョコレートにらっきょうを入れてみたり、

らっきょうとチョコの意外なハーモニーが楽しめます

グッズを作ってしまったこともありました。

らっきょうがコロコロっとかわいらしいマスキングテープ

これって漬けもの屋なの? と言われても、喜んでくれるファンがいるし、バイヤーさんも面白がって頂いてますし、お土産としても人気があるんですよ!!

ちょっと話がズレましたが、とにかく地元の一部の方達からは「何か面白いことをやってくれる会社」と知られているわけです。

……でもね、別に私たちは全然ヘンなことをしている気持ちはないんです。なにせ、当社の社名は「泊綜合食品」。とまり漬物店ではないのです。

先様に喜んでいただけるのであれば、「まずはチャレンジ。やってみてダメだったら諦めよう」というのが、わが社のモットーというか社風なのです。

そんなわけで、工場長はじめ社員総出で、鳥取のあんこを守るためのプロジェクトが始まったわけです!!

そもそも、あんことは? からスタート


やるぞ!と決めたのはいいけれど、専門は漬けもの。まずはあんこを知るところから始めないといけません。

普段何気なく食べているあんこって、一体何なんでしょう。

小豆などを甘く煮詰めて練ったもの。豆の皮を残したものを「つぶ餡」、皮を濃し取ったものを「こし餡」という。小豆の餡子の他に、枝豆で作った豆打(ずんだ)、青豌豆(グリーンピース)で作った鶯餡(うぐいす餡)などもある。

【出典】実用日本語表現辞典

なるほど?

たしかに当社には、豆を煮る大きな釜もあるし、加工するための加熱殺菌機、真空機などラインも機材も、資材も揃っています。

さらに幸いなことに、らっきょうチョコレートを製造販売するための「菓子製造業」の免許も持っていました(実は他にも色々持っていますよ、、、笑)。

しかも漬物の工場とは別に菓子製造の工場があるので、漬物とのコンタミ(原材料の混入のこと)の心配もありません。

ふむふむ。我々でも作れる可能性は十分にある、ということですね。

とはいえ、みなさんが想像する通りにあんこの道は奥が深く、職人技です。温度、湿度、豆の状態、水分量というか粘度を見極めて安定した味を実現するのは素人では難しいもの(というか無理ですよね)。

そこで、廃業されたあんこ屋さんの社長に付きっきりで伝授してもらうことに。

付きっきりで何度も何度も試作を重ねました

修行の間は、ひたすらあんこ試食生活。自分たちで食べ、色んな方に試食してもらい。社内では毎日あんこ、あんこ、漬物、あんこ、漬物、、、。甘いとしょっぱいの無限ループです。

そして幾度とないダメ出しと作り直しをすること約半年。
ついに、社長のOKが出るあんこが作れるようになったのです!!!

炊き立てのあんこはそれはそれは幸せな香りですが、実は時間との勝負なのです

素材の風味を活かし、また先代のあんこ屋さんが守られてきた味を守るために、添加物や着色料を使用しないあんづくりを心掛けています。

まだまだ、色んな種類をたくさん作るまではいきませんが、長年愛されてきた地元の味を継承するために現在も奮闘中。個人的には、やってやれないことはないな、と小さな自信を深めております。

とりあえずやってみる!精神は社内に浸透し過ぎなくらい浸透しています

実はあんこの他にも、漬物以外の商品の製造を請け負っているのですが、それはまた別の機会にご紹介していきたいと思います。

あんこの製造量が安定してきたら、「とまりのつけもの」での販売も考えていますので、あんこ好きの方、ぜひお楽しみに。


春は「牡丹餅」と書く「ぼたもち」、秋は「御萩」と書く「おはぎ」。季節のお花からくる呼び方も素敵ですよね

春のお彼岸のこの季節。
お彼岸のぼたもちを見る時には、らっきょう屋のあんこ屋がいるなぁと思いだしてもらえたら幸いです。

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