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第24話 妻の話-花壇の小人
小人の話をもう一つ。
母が見た、と言う小人の話をしたところ、妻も見たことがある、という。
彼女が中学生のころ。
神戸の繁華街にそれはいたらしい。
「花壇というか、植え込みの中にいたんだけど」
身長は20cmくらい。
可愛らしい感じ。
母の話と共通点が多い。
髪型や服装についても訊ねてみたところ「普通の感じ」だという。
「ディズニーアニメで見るようなのじゃなくて」
かといって、Tシャツ
第21話 妻の話-店にいた猫
もう一つ猫の話を。
妻の母親は若いころ、スナックを経営していた。
店を始めるにあたって借りた物件には、客席とカウンターの他、小さなバックヤードのような部屋があった。
以前も同様のお店だったのだろう。その部屋には大きな姿見があって、身支度をするのにも便利だった。
当時小学生だった妻は、最初に訪れた時から、その店が嫌いだった。
「バックヤードは特に、暗くて風通しが悪くて、それに……」
猫の
第18話 妻の話-金縛り
「金縛りには種類があるのよ」
妻は言う。
意識はハッキリしているが、身体は動かせない。
その点は同じだが、それに伴って現れるモノには種類があるらしい。
「一番多いのは、なにも言わない人ね」
枕元に現れて、ただジッとそこにいるだけ。
しゃべらないし、特に行動を起こすこともないので、害はない。
「1度だけしゃべる人がいたんだけど……」
母親の知人で、妻自身も顔見知りの人物だった。
「……ちゃ
第20話 妻の話-猫と女性
霊になるのは人だけではないらしい。
「街で見かけるのは、圧倒的に猫が多いわね」
この世を去った動物も霊となって街中をさまようことがあるようだが、妻によると、犬より猫が多いという。
ただ、猫が霊になったからといって、怪談に登場する化け猫のようなものになるわけではないらしい。
生きている時と同じく、街中をウロウロしているだけ。
見た感じは、人の霊と同じく色が薄く、やや透けている。
生者を認識し
第4話 妻の話-黒人の人形
「なんだかわからないけど、最初からいやだったのよ」
妻がその人形をもらったのは、幼稚園児のころだったという。
「黒人の男の子と女の子で、見た目は可愛らしいんだけど……」
誰がくれたものか、覚えていない。
母親の知り合いだったと思うが、それ以上のことはわからない。
ただ、最初に見た瞬間、「怖い!」と感じたことだけは、鮮明に記憶している。
ビニール製で、身長は30センチくらいだったか。
チリチリ頭
第7話 妻の友人の話-呼ぶもの
妻の友人の話。
和くんは友人宅の二階から飛び降りようとしたことがある。
深夜のことだ。
独身の若者4人が集まって、馬鹿話をして、飲んで眠った。
「で、飛び降りようとしたらしいんです」
「らしい」という言い方になるのは、本人がそのあたりの状況をまったく憶えていないためだった。
酒が回って、和くんの他、2人が撃沈。
アルコールに強い1人だけが、しかたなくゲームで遊んでいたという。
フラフラ
第9話 妻の話-ついてくるもの
「今はまったく見えなくなったけど」
子どものころから妻はいわゆる「見える人」だったという。
彼女曰く、霊は普通、色がなく、声も出さない。
モノクロの影絵みたいなものらしい。
「テレビ番組に出てくるような、迫ってきたり、話しかけてくるものは、見たことないわ」
ただときどき、そのセオリーに合わないものがいる。
あるとき妻は、「ついてくる霊」に悩まされることとなった。
「いつからそれがいたの
第11話 妻の父の話-ユネスコ会館
人を呪っても、日本では罪に問われない。
深夜、誰かの名前を書いたわら人形に釘を打ったとしても、それを禁じる法律はない。
日本の法制度は、呪いや心霊現象の存在を認めていないのだ。
もちろん警察や検察もその「原則」に従って活動している。
だが現場で働いている個人は、実際にはどう考えているのだろう?
妻の父親は警察官だった。
学生のころ、妻はその父親に「ユネスコ会館だけは行くな」と言われていたそう
第12話 妻の友人の話-トビ職と僧侶
トビ職の健一さんはお寺の改修工事で、屋根から落ちたことがある。
「恥ずかしい話やから、あんまり人にはいいたないんやけど」
そう断りながらも話してくれたのは、以来、奇妙な現象に悩まされているからだ。
お経を読んでしまうのだ。
最初に読んだのは、落下事故の直後だった。
由緒あるお寺の改修現場で起きた事故ということもあり、健一さんはすぐに地元の大きな病院に運び込まれた。
当初、なかなか意識が戻