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第30話 母の話-内緒の話
こういったものを書き始めたせいだろうか。
昨日、実家の母から電話があった。
「テレビが勝手につくのよ」
母が言うには、キッチンから居間に戻ると、いきなりテレビのスイッチが入ったのだという。
「リモコンの不調かしらね」
最近立て続けに3度あったらしい。
怖い体験はないか、と聞くようになって初めて知ったのだが、母はある程度感じる人のようだ。
「見える」ほどではないが。
その母によると、最近
第23話 母の話-可愛い小人
怖い話、不思議な話を集めていると、ときおり耳にする存在がある。
小人である。
「白雪姫」など、童話ではおなじみのものだが、考えてみると、分類が難しい代物だ。
日本風に解釈するなら「妖怪」や「八百万の神の一種」、というところだろうか。
そんな小人を「見た」という人がいるのだ。
本作にたびたび登場しているうちの母親も、その1人である。
「見たのは、すごく可愛い小人だったわ」
若いころ、住宅街
第1話 弟の話-霊の重さ
霊には重さがあるか?
霊に出会ったことがある、という人でも意見はバラバラだが、大手商社に勤務する私の弟は「ある」と信じている。
弟はいわゆる「バリバリの商社マン」だ。
会社からは「中国の専門家」として育成されたため、早くから香港に赴任。
その後、北京や上海という中国の中心都市を渡り歩いてきた。
「あれに出会ったのは、香港に住むようになってすぐのことやけど」
会社から斡旋された住まいは、まだ新
第2話 父の話-帰省
死んだ人は実家に帰るものなのだろうか?
私の伯父は、42歳の若さで急死した。
いわゆる厄年である。
弟にあたる父はいう。
「Aは銀行員やったから、期末で、殺人的な仕事量やったらしい」
やっと多忙のピークを過ぎたか、というある朝、いつも起床する時間になってもAは起きてこなかった。
起こしに行った妻が見つけたときには、すでに冷たくなっていた。
その1週間ほど前のことである。
父やAにとって実家
第3話 母の話-卓球
私の母は中学生のころ、ソフトボール部のキャプテンだった。
昭和30年代のことだ。
当時は夏休み、中学生だけで合宿する習慣があったという。
「楽しいけど、とにかく怖くて」
夜中、校舎の中は真っ暗になる。
トイレに行くのも本当に怖くて、みんなで固まっていくしかない。
なのに、夜には怪談大会だ。
「中でも怖い話があって……」
その学校では春に、教師の1人が自殺していたのだ。
クラブの指導にも熱