"シン"ではない、"シンデン"のゴジラだ! 『ゴジラ-1.0』感想

時代背景が第二次世界大戦終戦直後で「マイナスワン」という名前がついたトレーラームービーを見た時、昭和29年(1954年)に公開された「ゴジラ」よりも前の話になり、原点回帰どころからさらに過去の世界でゴジラが暴れるのか……と期待半分、不安半分だった。

それに伴って、ゴジラ要素が薄く反戦メッセージが強めの映画だったら嫌だな……と危惧してしまったのだが、良い意味で裏切られた。反戦メッセージは適度に込められ、ゴジラ要素もしっかり強めでちゃんと調和が取れたゴジラ映画だった。

「マイナスワン」では1946年というバラック小屋と焼け野原に負の感情が渦巻く日本に、さらなる追い打ちをかけるかのように凶悪な怪物が襲いかかる。

初代ゴジラをオマージュさせたかのように、銀座に上陸したゴジラは強力な光線を放つのだが、その着弾地点はまるで爆心地そのものだった。映画では直接言葉に表してはなかったものの、あの様相は「広島・長崎に次ぐ、三度目の核爆弾の投下」を想起させたはずだ。復興に向けて日本がほんの少し前向きになりつつある中、再び凶悪で絶望を見せつけるゴジラに対し、どのような手段で倒すのだろうと思わせる演出が上手い。

さすがに1940年代なので、ゴジラ討伐用としてシリーズではお馴染みの「オキシジェン・デストロイヤー」という超科学や「メカゴジラ」のような超兵器の製作によっての討伐ではなかった。また三原山噴火口への誘導計画や血液凝固剤注入計画のような現実の世界でも実現可能そうな計画は既存シリーズで使用されるので、今回はどのような手を使うのか注目していたのである。

採用されたのは、深海への急激な降下上昇による加圧、つまり「爆縮」を利用した計画だった。これに関しては「おお、その手があったか」と唸ってしまった。

今年に6月に起きた海底に眠るタイタニック号観戦ツアーにて発生した凄惨な事故もあり、「爆縮」がどういうものかお客さんにも知れ渡っているのは良い偶然とも言える。

そして、現実では実戦投入されなかった幻の戦闘機「震電」を登場させたのもテンションがあがった。山崎貴監督は『永遠の0』の監督でもあるので、日本の戦闘機の象徴でもある「零式艦上戦闘機(零戦)」か、もしくは特攻隊兵器として使用された戦闘機「桜花」を使用するのかと思っていたので、これも小憎い演出だ。映画内の出来事だが、米軍ではなくゴジラ上陸という本土決戦にて使用されたということでもある。

主人公・敷島(神木隆之介)は特攻隊の生き残りという引け目、垣間見える「生きていてもしょうがない」という思いを背負っていた。そしてとある出来事にて芽生えたゴジラへの復讐心から、最後は「ゴジラに突っ込む気だな…」とは予想できた。が、その予想を見事に裏切り、死への執着から生への執着に切り替わっていた筋書きも良かった。

ちなみに『シン・仮面ライダー』を見た時も思ったことだが、今回の敷島の内縁の妻・典子役を担当した浜辺美波は凛として美しい。「機龍」シリーズと呼ばれる「メカゴジラ」に搭乗した釈由美子のように、現代・近未来のメカゴジラシリーズがあるなら女性パイロットとして搭乗してもらいたいものである。

「ゴジラは完全には死なず」という掟も踏襲し、また典子の首に出来た痣(紋様)も含め謎は残されている。映画は「無から、負へ」というキャッチコピーだが、なんだか原点(初代ゴジラ)の世界に近づいた1950年あたりをテーマにした「マイナス0.5」のような次回作が製作されそうな気もしないでもない。

そして以前、『シン・ゴジラ』を観戦した後でも思ったことだが、「やっぱりゴジラと言えばモンスター同士の戦いだよね」という怪獣プロレス好きとしては、そろそろ国産のVSシリーズが見たいものである。国産実写映画でのVSシリーズは2004年の『ゴジラ FINAL WARS』以来、撮影されていない。70周年記念、もしくは「 FINAL WARS」20周年記念として怪獣大集合のゴジラに期待したい。

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