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HERPのユーザーコミュニティの全容とコンセプト再定義の4ステップ

こんにちは、株式会社HERPの冨田です。

スクラム採用を実現する採用管理システム「HERP Hire」を提供しているBtoB SaaS企業でレベニューチームのマネージャーをしていましたが、現在は育休中です。
※レベニューマネージャーはどんなことをやっていたかはこちらをご参照ください。

今回は、育休直前にカスタマーサクセス・マーケティング・開発チームで協力しながらユーザーも巻き込んで、ユーザーコミュニティのコンセプトを再定義した経緯を中心にHERPのユーザーコミュニティの活動について書きたいと思います。

カスタマーサクセスについては日本でもここ数年で科学が進み、SaaS企業に限らず各社力を入れている領域かと思います。その中でも継続的に意義のある形で運営することが難しいユーザーコミュニティについてまとめましたので少しでもヒントになれば嬉しいです。

HERPにおけるユーザーコミュニティの位置付け

ユーザーコミュニティを持つ目的や位置付けは各社それぞれかと思いますが、HERPの場合は運営するにあたって下記3つの側面を意識しています。

1. サービスの一部としてのユーザーコミュニティ

1つ目がサービス、つまりユーザーがHERPを利用することで享受する価値そのものとしてのユーザーコミュニティです。

大前提として、サービスを認知してから使い続けて採用の成功に至るまでの体験の総体がサービスの体験価値であり、ユーザーコミュニティもその一部だと考えています。これはマーケティング活動のメルマガ、インサイドセールスの1件1件の電話・メールなども同様です。

ユーザーからコミュニティをサービスの一部と認識していただくためには何となく所属することに意味を感じるコミュニティではなく、何らかの課題解決につながる位置付けを志向するのが望ましいというスタンスに立っています。

2. マーケティング施策としてのユーザーコミュニティ

2つ目がマーケティング施策、つまり新規受注につながる売れる仕組みとしてのユーザーコミュニティです。

HERPでは、マーケティングチームとカスタマーサクセスチームが協働するCSマーケティングという機能がユーザーコミュニティの運営を担当しています(2021年9月時点)。

CSマーケティングのミッションは、「顧客の良い体験を発信する場づくりをし、そこで得た知見を結晶化させてユーザープロセスに還元すること」としており、ユーザーコミュニティの運営の他にも、より適切な期待価値を醸成できる事例記事の発信やIT Reviewといったいった口コミが健全に増える体験設計をしています。

マーケティング施策としてのコミュニティ活動については下記書籍を参考にしています。

書籍にもある内容ですが、「コミュニティに売るのではなく、コミュニティを通じて売る」ことが最大のポイントであり、主体者をHERP社員ではなくいかにユーザーさん自身になってもらうかに腐心しています

(※幸いHERPは強力なTOに支えられています)

3. PR・ブランディングとしてのユーザーコミュニティ

最後に3つ目が、PR・ブランディングとしてのユーザーコミュニティという側面です。ブランド戦略は絶賛更新中のため説明を割愛しますが、HERPでは「コミュニティは、中長期で複利的に効果を発揮するブランド施策」だと考えています。

この観点で重要なのは、コミュニティのコンセプトを設定するにあたって会社のミッションとの接続が明確で一貫性があることだと思っています。神は細部に宿るという言葉のとおり、プロダクトの細かいインターフェース・営業やカスタマーサクセス担当の言葉尻・ユーザーコミュニティで扱うテーマといった末端のアウトプットにミッションとの一貫性を感じられれば自ずとサポーターは増え、ミッションに共感するユーザーや仲間が増えると信じています。

(※入社前に参加して転職の決め手にもなった記念すべき第1回のユーザー会。余談ですが、BtoBサービスへの転職検討時はカスタマーリファレンスが効果的な時代ですね)

つらつらと書きましたが、まとめると「ミッションと一貫性があり、ユーザー企業の課題解決につながり、ユーザーによって自律的に運営されている」ユーザーコミュニティがHERPが理想としている姿となります。

これまでのユーザーコミュニティの活動

続いて、これまでの実際の活動について書いておこうと思います。

採用管理システム「HERP Hire」(当時は、「HERP ATS」)は、2019年2月に公式リリースしました。第1回のユーザー会を2019年4月に実施しており、リリース当初からユーザー専用のSlackワークスペースをつくり、定期的に勉強会やイベントを実施するオフライン中心の運営をしてきました。

当時は、「スクラム採用という新しい採用のあり方を布教していきたい」「採用に真剣でHERPを愛してくれているファーストユーザー同士の輪を強くしたい」「ユーザー会、もちろんやるっしょ」くらいのテンションでした。

2020年前半から新型コロナウイルスの流行を背景に、オフラインでの「懇親会」という強力なツールを失いほぼ丸1年運営をストップしますが、2020年の年末から再度Slack + オンライン勉強会 + 開発共有会 の3本柱での運営を進めています。

オフラインでは、一定「集まること」さえ成功すれば熱量が生まれましたが、オンライン中心の企画では少人数・短時間でも良いので目的(参加する価値)が明確な企画がポイントとなります。

例えば、告知中心だったSlackを、Slack内でコミュニケーションが取りやすくなるようにチャンネル整理を行なった結果、ユーザーさんのお悩み投稿にユーザーさんが返答する素敵コミュニケーションが週に何回も見られるようになりました。

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(※Slackのワークスペースの参加者は600名を超えました。日本のITベンチャーの採用担当が参加するコミュニティでは最大規模ではないかと自負してます)

また、勉強会では論点を絞ったテーマ設定を心がけています。

なぜ、コンセプトの再定義が必要になったか

そんなHERPのユーザーコミュニティですが、2021年7~8月にかけてコンセプトの再定義を行いました。

背景となる課題意識は下記のようなものでした。

・新しい採用のあり方をつくる企業として今後もユーザーコミュニティは投資していきたい領域
・コミュニティの参加者は600名を超える規模なものの、参加者の活性度合いに伸び代がある(勉強会への参加は多い時で50名程度)
・どういった活動をするかを考える際に「そもそもHERPのコミュニティって何のためにあるんだっけ?」という問いへの解が弱く、議論が深まらなかったりアクションに自信が持てないという問題が顕在化してきた
・我々がわからないということは参加する方々もコミュニティに対してどういった期待値を持てば良いかわからない状態にありそう

そこで、コンセプトを言語化することで
・コミュニティの活動を活発化させるにあたって立ち返られるものをつくること
コミュニティ参加者の期待値を明確にすること
の2点を目的としてコンセプトの再定義を行いました。

コンセプト再定義の4ステップ

再定義するにあたって、今回とったアプローチを紹介していきます。前提として「発見・定義」ではなく「再定義」なので、これからコミュニティをつくっていきたい方よりは、すでにコミュニティらしきものはあり、リピーターもいるが、何となく優先度を上げられていない方にとって意味がある内容かと思います。

Step1. コンセプトを再定義する目的の設定

まずは解決したい課題と目的の定義から始めました。ユーザーコミュニティのコンセプトメイキングに限らず、抽象度の高いお題に対して複数人で合意形成をする際には重要なステップです。

こういったプロセスに慣れている方にとっては当たり前のステップかと思いますが、過去に課題設定が曖昧で何度もこういった抽象度の高い議論が紛糾して完遂に至らなかった反省があり、チームとしてもプロジェクトのキックオフ時点で言語化するようにしています。

Step2以降で議論が発散した際は必ずStep1まで戻り、場合によっては課題の捉え方や目的のアップデートも必要という心がけが重要です。

今回のケースでは、前章の通りの目的設定を行いました。

Step2. コミュニティ参加者へのアンケート・ヒアリング

続いて実際のコミュニティ参加者にアンケートとヒアリングを通じて一次情報を取得しました。Step3を見据えた際に、個々人の見えている景色と情熱だけで議論すると昇華されないケースがあるため、拠り所となる一次情報を集めておく意図での設計です。

このStepもコンセプトの再定義に限らずHERPで仕事を進める上で気をつけているポイントで、不確実性の高い環境下で一定「決め」で意思決定を迫られるビジネス環境だからこそ、拠り所としたファクトとロジックを明確にし、改善可能・振り返り可能な状態をつくり続けることが重要だと考えています。

今回のケースでは、すでにコミュニティがあり良いと感じている方がいる状況からの再定義なので、「すでに良いと感じてくださっている人たちがなぜ良いと感じているのか」をできるだけ深い解像度で理解できるようアンケートとヒアリング設計を行いました。

Step.3 コミュニティ運営メンバーでワークショップ

一次情報が集まったら、コミュニティ運営に関わるメンバーでワークショップを行いました。ボトムアップ型の意思決定で運営メンバーの当事者意識や納得感が今後の継続的な運営を見越した際に重要だと考え設計したステップになります。

ですので、無理に時間内で収束させることは目指さず、下記内容について一次情報のインプットを揃えた上で吐き出し切ること、グルーピングまでを行いました。
・コンセプトに盛り込みたい要素は何か
・コミュニティは誰がどんな価値を感じるためのあるのか

ディスカッションでは、「そうそう、それそれ」と感じるキーワードや、「これは違うよね」とNGワードが見つかると成功というイメージです。

Step.4 コンセプト言語化

最後にここまでの内容をもとに収束させたアウトプットを作り、プロジェクト参加者で赤入れというプロセスを2~3回転させて最終化しました。コミュニティのコンセプトは、コンテキストありきのものなので誰かが一本筋の通った物語に仕立てる必要があります。一定アートな作業なので、アウトプットづくりは誰か1人がつくるのがおすすめです。

今回は下記の形式でアウトプットしました。

・コンセプト
・コミュニティ名
・コンセプトに込めた思い
・誰のため
・コミュニティ参加者のベネフィット
・コミュニティの主な活動
・参加資格
・参加者に守っていただくポリシー

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最後に

上述のようなプロセスを経て今回再定義したコンセプトのアウトプットがこちらになります。プロセス自体はあまり奇抜なことはしていませんが、上記の4ステップを丁寧に行ったり来たりすることでしばらく機能するコンセプトに昇華されたのではないかと思っています。

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再定義されたコンセプトのお披露目となるユーザー会を昨日実施できたということで、今回はその舞台裏ということでまとめてみました。

最後に採用の宣伝です。

HERPの目指す採用2.0の実現という山はまだまだ高く、これからの時代に合った採用のかたちを一緒に考え、サービスとして世の中に社会実装していく仲間を求めています。その過程ではユーザーコミュニティもこれから何度もアップデートを迫られることになると思います。

日本という課題先進国で新しい採用のあり方を一緒に模索することに興味がある方がいらっしゃいましたらぜひカジュアルにお話しましょう!

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Twitter:@tomi_dada_shin


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