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PMconf2020の学び

先日、PMconf2020に参加してきました。

プロダクトマネージャー(PM)という職種の啓発、スキル向上を目指して年ごとに開かれているカンファレンスです。2019年版に参加し、今回2回目の参加でした。以下の3つのトピックがとても面白かったのでまとめてみます。

できるPMが備えているスキルの可視化(エンジャパン岡田さん)
・採用目線から見たこれからニーズが高まるPMの要件の議論
・0→1プロダクト開発の成功事例の共有(リクルート川崎さん)

HEXマップで描ききれなかった人間力

まずは、プロダクトマネージャーのスキルマップ(HEX)を定義した成果で話題になった岡田さんの発表です。PMconf2020ではHEXマップの一歩先、人間力というスキルについてのお話をされていました。

まずHEXマップへの自己評価として、スキルを具体的に可視化することでメンバの迷いを払拭することができたとおっしゃっています。PMは場合によっては調整業務が多く、いまいち自分は今何ができるようになっているんだろう?が言語化しづらい職業でもあります。そんな状況に不安を持つメンバに、具体的な道筋を示せたことが大きな価値だったとのことです。

一方で、具体化・言語化できたから完成ではなく、新たに課題も出てきました。HEXで定義してきたテクニカルスキルの寿命は短く進化が早い。またテクニカルスキルは必要条件ではあるが、十分条件ではない。そういった思いから一歩先の言語化を目指し、これまで定義しづらかった人間力スキルの可視化に着手されたそうです。

人間力を支える抽象⇔具体スキル

着目されたのは具体と抽象の行き来です。チームで開発する現場では、PMは仕様として「この条件で分岐して表示有無を決めて・・」と具体的に煮詰めないとサービスを提供できません。一方で、PMは中長期の方針としては競合状況や自社のアセットを勘案して、構造を抽象化して大きな方向性を意思決定し、合意する必要があります。

経営陣に対しては中長期の方向性、戦略、などのばっくりとした抽象的な方針で合意しなければならない。一方でその抽象的なニーズは、具体的なアクションの紐づけができることができなければいま目の前の現実を動かすことはできない。そのギャップに橋をかける重要なスキルが人間力である。具体的な観点に落とすと、以下のスライドで表現できる。これが今回の発表で最も重要な主張だと感じました。

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詳しくは以下をご覧ください。人間力スキルを身に着けるために自分に足りていないものが何がを知ることのヒントになると思います。

人間力が鍛えられる環境にはフィードバックが多い

続いては、人間力の高め方です。個人としてではなく、組織としてメンバーの人間力を高めるにはチームクレドがありフィードバックの量が多いことが必要だ。

チームに共通化された基準があり、それに基づいて具体的にフィードバックし合える関係性があること。例えばメルカリではバリュー(いくつかの重要なマインド)が定まっているいて評価の際にも利用されていることが有名ですが、そういったカルチャーが最近注目されていることもあり、個人的には納得感を感じました。いま私が働いているエムスリーでも、くしゃみという行動基準が浸透していて、半期のフィードバック面談ではくしゃみに沿ってメンバから具体的にコメントをもらえます。行動を修正するきっかけとしてもとても良い文化だなと感じています。

またそのフィードバックは、とにかく量が重要だということです。一般的にも言われるように量は質に転化します。フィードバックも同じで受け取る機会が多い組織に身を置くことが重要だ、という主張でした。確かに私自身の感覚としても、他人からのアドバイスは内容の納得性もさることながら、伝えられ方やタイミングによっても異なります。いち個人としてまずできることは、自らフィードバックをもらうよう働きかけること、そして与えること、だと思いました。人に何かを指摘される/するのは時には体力を必要とすることですが、意識的にやっていきたいです。

プロダクトマネージャー採用のトレンド

続いては、採用する側から見たPMに求める要件についてのパネルディスカッションです。優れたPMはプロダクトの継続的な改善ができ事実を元に仮説検証ベースで考えられるスキルが備わっている前提のもと、トレンドとして求められているスキルは何なのか、が議論されていました。

①介護士、政府や自治体関係者などのステークホルダに共感できる
1つめの要件は、多様なステークホルダから意見を受け取ってプロダクトに反映できるスキルについての言及でした。介護士、政府はあくまで例ですが、トレンドとしてステークホルダの多様性はこれまでよりも多岐に渡るようになったことが挙げられます。曰く、介護士や政府関係者などは会社員とはかなり異なる判断基準や価値基準がベースになっていることもあり、そういった自分とは異なる人と建設的に協働できる力、は益々重要度を増しているということです。
私個人の意見としては、そのスキルのベースはヒアリング力になると思っています。わからないものは納得するまで聞くしかないので、思い込みを外して話を聞くことが大事だと思います。以下の書籍がオススメです。

②英語が使える
高い成果を上げるためには日本人ではない優秀なビジネスパーソンと協働する必要性が今も高まっています。よって英語が使えるスキル、はじわじわニーズが高まっているようです。

③学習と適応ができる
優れたプロダクトを作るためにはドメイン知識が必要ですし、最近はAIを理解しているPMの需要が高まっています。一方で、ドメイン知識やAIなどへの理解は一過性な知識で、時間とともに陳腐化してしまうこともまた事実です。その時々に必要な一過性の知識も貪欲に学習し、目の前の問題解決に適応していくことが重要になります。

エアレジハンディの立ち上げ成功事例(リクルート川崎さん)

最後に、リクルートでエアレジハンディを立ち上げた川崎さんの発表です。とても具体的・実践的な内容になっていて、成功体験をわかりやすく言語化されていおりオススメです。また純粋にプレゼンがわかり易くて感動しました。発表資料は以下をご覧ください。

発表自体はエアレジハンディの事業成立性を検証した方法についての流れが語られていますが、個人的にすごく参考になったは、検証方法に対する工夫です。

曰く、検証というのは判断というアウトプットを出すためにやることなので、スピード感よくそのタスクを進めるためには検証の設計にこだわって力を入れることが重要だということです。

検証の項目の検討は価値の検証点を決めることから始まります。つまり、今考えているプロダクトがいけると判断するために、価値提供のために重要で、かつ想定通りの結果になるかが怪しいポイントを明確にしましょう、ということです。(下図)

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その明確化のフレークワークとして価値のループを可視化を実践されていました。一番重要な絶対に外してはいけない価値はどこなのか?を特定するテクニックです。(NSMなどと呼ばれることもあります。)ループを可視化し、成立が怪しそうな価値の源泉と、キャッシュポイントがどこかを明確にします。逆に言うと、色々確認してみたいことがある中で何を捨てるのかを明確にする作業でもあります。

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検証点は、可視化したループ上の重要なポイントに対して、①価値②ユーザビリティ③技術実現性④事業実現性の観点から、成立するか怪しい観点を選び出す作業に落とし込むことができます。

あまりにも素晴らしい発表だったので、その後1on1でヒアリングさせていただきました。その時間もとても有意義だったので、以下のnoteでまとめています。関心があればご覧ください。

おわりに

プロダクトマネージャーカンファレンスの中でも、特に面白かった内容を紹介してみました。事業のフェーズや課題感に応じて切り取り方は多用だと思いますが、私の主観としての切り取り面が参考になれば嬉しいです。解釈に対する異論や賛成、どんなご意見でもいただけると嬉しいです!



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