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霊能力は信じない信念

ふと、自分のお店にレジを置いてみようかという気になった。「レジがないより、ある方がお店らしいかな」といまさら感じたからだ。
そこで私は、ネットでレジスターを扱っている会社を検索した。名の知れた会社から初めて聞く会社までたくさんある中から、よさそうな会社にアポを取った。なんとその会社のレジは、詳しい期間は忘れたが、初期費用0円で当分使えるというのだから使わない理由がなかった。

数日後、30歳くらいと思われるお姉さんが打ち合わせにやってきた。パンフレットを出し、自分の会社のレジはこんなにいいのだと手短に話した。「なるほど〜」と導入しようかどうか迷っていると、突然、あなたには覇気が感じない。もしかすると悩み事があるのではないかと彼女が言い出した。

そりゃ人間生きてりゃ悩みの1つや2つはある。私くらいの年になれば、死にたいと思うくらいの悩みを経験していてもおかしくはない。
邪魔くさそうな人だなとは思いながらも、「そうですね」と軽く返事をした。

私の生返事でその話は終わるとおもったのだが、彼女は「あなたはお金を稼ぐことに罪悪感を感じているようです。そのお金を使うことに対してもですね」と前のめりになってきたのだ。

お金を稼ぐことに罪悪感なんて持ってちゃあ商売なんてできないよ。人を騙してお金を巻き上げてるわけじゃないし、いかに真っ当にお金を稼ぐかを毎日考えているよ。朝から晩まで考えすぎて寝られなくなっちゃうことだってあるんだよ。

まさに宇宙の果てについて考えすぎて頭がぼーっとするのと同じだ。

ちょー邪魔くさいな。どうにか帰ってもらえないかなと思いながらも、上手く帰っていただく知恵が見つからず、遠くを見ながら「そうかもしれないですね」とやる気なく返事した。流石に帰るだろうと期待したがあてが外れた。

そんな私の態度が彼女をさらにやる気にさせたのかどうかは不明だが、素早くテーブルの上に出していたパンフレットなどをカバンにしまい込み、さらに体を近づけてきた。

ちっ近い...。距離を開けたつもりが、縮められしまった。

彼女は澄んだ瞳を真っ直ぐと私に向け、両手で私の両手を握り、励ますように「じゃあ今からネガティブな感情を追い払いましょう」、自分と一緒に「私は大丈夫」と呪文を唱えろといいだした。

私はおののいて、「霊的なものが見えるの?」と質問すると、彼女は「少し」とちょっとドヤ顔で答えた。ますます怪しく感じ、邪魔くさくなったが、混じり気のない無邪気な瞳で見つめられると、邪険にはできず私は彼女に従った。それに今の瞬間だけ話を合わせておけばすむ話だとも思ったからだ。

彼女に言われるがまま、両手を握り、見つめ合い「私は大丈夫」と声を合わせて繰り返した。30回くらい言わされたように思う。

私は呪文を唱えている間、おかしくて仕方がなかった。笑いたいのに笑えない地獄。私は最後まで耐え抜いてやった。意地だ。なんの意地だと聞かれると答えに困るが、とにかく意地を見せたのだ。
半面「レジをお店に置こうと思いついただけで、なぜこのような蛇の生殺しの刑に処されなければならないのだ」という気持ちもあった。

そんな葛藤の気持ちを押し殺し、タイミングのいいところで「あースッキリしました」などと嘘をついた。もうそろそろ帰ってもいい頃だろ。開放して欲しい。その一心でだ。

忘れていたが、彼女は自社の設置レジスターを売り込みに来たのだ。なのにこんなことしていて大丈夫なのかと心配になり、「売り込みの仕事はしなくていいの?」と聞くと、「いいんです」とキッパリと言い切った。

とてもサッパリとやり切った感を惜しげもなく顔と身体で表現しながら、彼女は帰って行った。私はホッとしたが、もし私が彼女の雇い主ならすぐに辞めていただくだろう。

彼女の純粋でまっすぐな気持ちを、仕事に向ければどんなに素晴らしい未来が開けるのだろうなと、彼女からしてみれば実にありがた迷惑でお節介な気持ちになったが、彼女の人生だ。私がとやかく言うまでもない。人を騙さないことだけを祈る。

私は、霊感的な言動は信用しない。横文字にしたらかっこよく聞こえるスピリチュアルもだ。そんな私も以前は霊能力というものにハマり、50万円ほど注ぎ込んだ経験があるのだが、コロナになった際、キッパリと心の底から否定するようになった。とにかく自分で考えて行動しないといけないことに気づき、目が覚めたのだ。その件に関してはまたnoteに綴りたいと思う。

未来が見えたり、人を変えたりすることができる不思議な力があるのなら、コロナや近年多発している自然災害、人々を苦しめる出来事を収めて欲しいものだ。


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