冨島 宏樹

古いゲームを好んで遊ぶ人であり、コレクターでもあり、時々ライター。

冨島 宏樹

古いゲームを好んで遊ぶ人であり、コレクターでもあり、時々ライター。

マガジン

  • 創作小説「ディレイ ーファミコン全ソフトを集めた男ー」

    1996年〜2003年の7年をかけて、1240本+αのファミコンソフトすべてを集めるまでの軌跡を描いた小説です。全13話。特にレトロゲームが好きな人や、コレクション趣味がある人にはきっと刺さる部分があるはずです。是非ご一読を。

最近の記事

レトロゲーム好きが行く北海道・札幌周辺

北海道に旅立つゲーマー、脳内で「北へ。」のOPテーマが再生されがち。 北へ〜行こうランララン。 そんなわけでカニがいっぱいホタテいっぱいな北海道へ少し遊びに行ってきたのだが、そこはレトロゲームを何処でも追い求めてしまう業を背負った身。今回行った札幌周辺でも旅の合間に色々立ち寄ったりしていたので、その記録を残しておこう。 まず向かったのは北海道一の歓楽街・すすきのにある商業施設「ノルベサ」。 屋上に観覧車が設置されており非常に目立つビルだ。 ここは1階と3階に駿河屋、2階に

    • 諸君 私はファミコンが好きだ

      諸君 私はファミコンが好きだ 諸君 私はファミコンが好きだ 諸君 私はファミコンが大好きだ マリオが好きだ ドラクエが好きだ FFが好きだ ロックマンが好きだ くにおくんが好きだ ゴエモンが好きだ じゃじゃ丸くんが好きだ ワルキューレが好きだ 高橋名人が好きだ 自宅で 友人宅で 親戚の家で 近所の年上の兄ちゃんの家で おもちゃ屋の店頭で サークルの部室で ゲームコーナーの一角で 全国キャラバンで Vtuberの配信動画で ゲームセンターCXで この地上で遊ばれるありとあ

      • ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #13(全13話)

        #13 熱血!すとりーとバスケット  店頭購入、コレクター仲間との交換、ネットオークション。  歩みは遅くても、一歩一歩確実に進めていく。そしてとうとうコンプリートに残り1本までこぎつけた。  最後に残ったソフトは『熱血!すとりーとバスケット』だった。格闘からドッジボールにサッカー、時代劇までこなす「くにおくん」シリーズのファミコン最終作で、相手プレイヤーへの直接攻撃や必殺シュートなど通常のバスケットボールでは考えられないハチャメチャさが売りの作品だ。1993年発売とファ

        • ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #12(全13話)

          #12 まじゃべんちゃー麻雀戦記  ファミコン全ソフトコンプリートまで、残りは数十本。  ここまで来るとショップ探索などの正攻法では入手の可能性が限りなく低くなる。ありとあらゆる手段を講ずる必要があった。  自分のホームページに未所有ソフトのリストを掲載していたのも、その手段の一環だ。譲ってもいいという人が出てくることを願っての藁をもつかむ思いの表れだった。  はたして、効果は表れた。未所有ソフトのひとつを見かけたという人からメールが来たのだ。そのタイトルは『まじゃべんち

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        • 創作小説「ディレイ ーファミコン全ソフトを集めた男ー」
          13本

        記事

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #11(全13話)

          #11 アイアムアティーチャー  コレクター仲間からの交換や情報提供、「おもしろ館」での未所有ソフトの購入、そして使える限りの時間を使ってのゲーム探索。ついに光希の所有ファミコンタイトルは1000本を超え、コンプリートが現実的なものになってきた。  しかし、そこからが増えない。考えてみれば当たり前の話だった。所有1000本を超えたということは残りは240本。1240本の中からまだ持っていない240本を探すわけで、しかも未所有タイトルが探索先のショップに必ず置いてあるなんて

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #11(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #10(全13話)

          #10 囲碁名鑑 「うちの店でバイトせえへん?」  ファミコンソフト探索に行く道すがら、チェリィから突然の申し出を受けて光希は思わず足を止めてしまった。  うちの店――つまりは「おもしろ館」のことだ。レトロゲームを扱っている店で、それらに囲まれながらバイト代ももらえる。確かに夢のような環境ではある。光希が今も続けている喫茶店でのバイトよりも確実に面白そうで魅力的に思えた。 「興味はあるけど……。でもまたなんで急に?」 「実は本店で通販作業ができる人を探してるねん。ほら雑

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #10(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #09(全13話)

          #09 クルクルランド  光希が自分のホームページに書き綴った岡山・広島のレトロゲーム探索記は、なかなかの評判だった。 「面白かったです!」  そんな感想が掲示板に書き込まれるたび、光希は面映ゆさを覚えながらお礼を返信する。こうも褒められることなんて今までの人生になかった。少しだけ文章力に自信を持ち、また新しく何かを書きたいと意欲が湧き上がる。最近遊んだゲームのこと。知られてないけど全力で推したいファミコンソフトのこと。探索先で見かけた風変わりな店のこと……ネタはいくら

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #09(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #08(全13話)

          #08 Wit's  新品同様のファミコンソフトが山のように眠っていた“聖域”。  そこを知る者は真琴、チェリィ、光希。そしてもうひとり。  光希がその人物の詳細を真琴から聞いたのは、遠征してレトロゲーム探索に行こうと誘われたタイミングだった。関西を出発して岡山、広島へ。車を使っての1泊2日ファミコン漬けのツアーだ。そこに一緒に参加し、4人で行くという。 「実は私の彼氏でね。運転も得意だからドライバーは任せて問題ないよ」  いきなりの情報に困惑するが、真琴もファミコン収

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #08(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #07(全13話)

          #07 聖鈴伝説リックル  人生の中で、降りることのある駅はどれぐらいあるのだろうか。  通勤通学で毎日のように足を運ぶ駅、旅先で気が向いてふらっと降り立つ駅、名前は知っていても寄る機会に恵まれない駅、なかには死ぬまで存在をかけらも知ることのない駅もあるに違いない。  きっとそれぞれの駅に、自分が知らない名所や人々の営みがある。だけどその全てを知ることは不可能だ。一生はあまりに短すぎるから。  自分がファミコンソフトを集めることも、もしかしたらそれと同じなのかもしれない。全

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #07(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #06(全13話)

          #06 エルナークの財宝  秋葉原訪問で負った心の傷が癒えるまでは、数か月かかった。  その間に年は明け、1999年。それでも光希のファミコン熱は収まることはなく、探索に出かけ、買ってきたゲームを遊び、ホームページを更新する日々は続いている。日本橋まで足を伸ばすこともすっかり当たり前になり、ここ最近は大阪のおもちゃ屋やレトロゲームを扱うショップを開拓し始めるまでになった。  そんなある日のこと、1通のメールが届く。  差出人は“チェリィ”と名乗っていた。直接の交流はないが

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #06(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #05(全13話)

          #05 リップルアイランド 「次に行くべきは、やっぱり秋葉原かなぁ」  何度目かの日本橋探索から帰宅し、ホームページの更新を終えた光希はひとりつぶやいた。あれから日本橋に行くたびに未所有のソフトを購入し続け、コレクションは順調に増えている。数えてみると500本を超えていた。ようやく全タイトルの半分弱だ。  ホームページにアップした日本橋の探索記も確かな手ごたえがあった。始めた頃は1日数アクセスだったのが、最近は訪問者数が100に届くことも珍しくない。となればここは攻め時

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #05(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #04(全13話)

          #04 メタルスレイダーグローリー  ホームページの作成は、困難を極めた。  本当にいちからホームページを作ろうとすれば、HTMLという専用構文を学んで文章を打ち込んでいく必要がある。しかし光希はプログラムの知識なんてまったくないため、はなからこの方法は諦めた。専門知識を必要としない制作ソフト『ホームページビルダー』を購入することからスタートしたのだ。  だが、それでも難しい。別ページへのリンクを張ることも、文字の大きさを変更することも、いちいちつまづきの連続だった。ビル

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #04(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #03(全13話)

          #03 百の世界の物語  1998年。  光希は大学生になっていた。  推薦入試でさっさと進学を決めた友人達を尻目に猛勉強の日々。別に将来何になりたいとはっきりした目標があるわけではない。大学に進学して、そこそこの会社に就職して、いつかは結婚して子供も生まれて、取り立てて特徴はないけど人並みに幸せな人生を送る。そんな漠然とした未来のために今の勉強は踏まなければいけないステップだと考えていた。その甲斐もあり何とか浪人することなく関西の私大に合格したのだ。  受験勉強のかたわ

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #03(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #02(全13話)

          #2 サマーカーニバル'92 烈火 「ファミコンソフト?多分家に眠ってると思うけど……。何に使うの?」  いらないファミコンソフトを譲ってほしいと友人に声をかけたまではいいものの、光希はその返答に困っていた。友人の疑問はもっともだ。とうの昔に飽きて片付けたおもちゃを欲しいと突然言われたら、自分だって興味と少しの怖さを感じつつ意図を聞き返してしまうに違いない。  実は今になってファミコンの奥深さに気づいたんだ、だからソフトを集めて片っ端から遊んでいきたいと考えてる――そう率

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #02(全13話)

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #01(全13話)

          #01 東方見文録  ブラウン管に、苦悶の表情を浮かべた男が映し出されている。  両手で頬を挟み、大口を開け、目を見開いたその顔はぐにゃりと湾曲していた。ムンクの「叫び」そのものの姿だ。  男の体は極小の四角形で成り立っていた。白、黒、青、赤、緑、紫――おびただしい数の四角形が彼を、そしてその背景を形成している。“ドット絵”と呼ばれるコンピュータグラフィック専用の技術で生み出された禍々しい光景から、平川光希は目を離せずにいた。  画面下のウィンドゥには、さらにメッセージが表

          ディレイ -ファミコン全ソフトを集めた男- #01(全13話)

          ゲーム書籍の極北「クソゲー白書」を読み直してみる

          ゲームの歴史を語る本が(色々な意味で)話題になっている昨今。自分は件の本をまだ読んでないので語る資格も何も無いのだが、それはそれとして昔から「いやこれ作りが雑すぎるでしょ?」って読者がツッコミ入れるようなゲーム書籍は時々見かけたりしたものである。 そんな中でも自分が印象に残っている1冊が「クソゲー白書」というゲーム書籍だ。発行は1998年。少し前には「超クソゲー」「悪趣味ゲーム紀行」といった変わり種のゲームを紹介する書籍が登場し、いわゆるクソゲー・バカゲーブームがゲーマーの一

          ゲーム書籍の極北「クソゲー白書」を読み直してみる