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始めての体外受精で子宮外妊娠して卵管1本切った話③ 手術を通じて得られたもの

卵管切除手術が終わった日の夜。
手術後と夜中に痛み止めの点滴を2回ほど打ってもらって、身体が管でぐるぐる巻きになりながらもなんとか眠りにつくことが出来た。

翌日。お腹の傷がズキズキするけど、午前中に心電図やオキシパルスメーター、マッサージ機が外れ、昼食から回復食が始まった。
また、様々な機器を外して、これからは回復に向けて、積極的に身体を動かすように指示があった。寝たきりの生活から一転、ベッドから起き上がる時、いきなり得も言われぬ目まいがあったが、それ以降はゆっくりだが歩いてお手洗いに行くことができるようになった。

翌々日には点滴も外れ、シャワーにも入ることができ、目に見えて回復に向かっていると感じられた。手術後、出来ることが増えてくることで、結構心も身体も元気になってきた実感がある。
子宮外妊娠を経験した方のブログを見ると「身体が回復に向かうと心が辛くなってくる」というものもあったが、私の場合は違っている。

確かに子宮外妊娠をしてしまったのは辛い経験だし、卵管を1本失ってしまって自然妊娠が不利になってしまったのは事実だけど、今回の入院によって、少なからず得られたものもあったと思っていて、意外とポジティブに受け止められているのだ。

1つは自分の身体の弱点や状態を知ることができたこと。
不妊の理由が「夫の精子の運動率」だけだと言われていたが、実際には自分の卵管周辺に癒着があって開腹手術の影響を受けていたこと。そして、癒着を剥離することができたこと。自然妊娠は難しいが体外受精であれば妊娠の可能性はまだあるということ。
自分の立ち位置や不妊の原因がわかることで、結果的に行うことは同じ体外受精でも、不妊治療への納得感や、時間とコストをどれくらい掛けないといけなさそうかの見積もりが前よりは少し明確になった。

2つ目は大学病院での医師や看護師の質を通して、今まで通っていたクリニックから転院を考えるべきだと思えたこと。

正直、大学病院の医師や看護師の心身のケアは素晴らしかった。(と思えるくらいに通っていたクリニックがしょぼかった・・・?)

子宮外妊娠疑いでクリニックから紹介状をもらい、最初に大学病院で外来の診察を受けた時、「この度は残念でしたね。せっかく妊娠判定で陽性が出たのに。」と言われた時、これまでの不妊治療を通して、始めて自分に寄り添った言葉を掛けてもらった、と思い、心のこもった一言に感極まってしまった。
通っていたクリニックはとても事務的で、患者の心に寄り添ったり、理解を待ったりすることなく常に医師がせかせかしていて、患者が理解しているいないにかかわらず、畳み掛ける様子で事務連絡をしたり、情報を浴びせたりその場で判断をさせたり、淡々と治療のスケジュールを決める様子だった。
段々この人達に何を質問をしても期待する言葉は掛けてもらえないなと思うようになり、半ば説明を諦めて、ネットで情報を探すようになった。
ネットで情報を探すと、1つの事象に対しても色々な書かれ方がされていて、何が本当なのかわからなくなった。そういったことの積み重ねで知らず知らずのうちにストレスが溜まっていた気がする。

大学病院は、そういった意味で説明責任もきちんと果たしていた。今自分の身体に何が起こっているのか、どんな治療の方法があり得るのか、リスクは何なのかなど、(当たり前だと思うが)わかっている情報を元に納得がいくまで説明をしてくれた。私だけでなく夫や母にも。それが何よりも安心に繋がった。

3つ目は夫や両親、兄といった、身近な家族の存在のありがたさに気付けた点である。
私が入院したと聞いて家族から沢山励ましの言葉をもらったし、入院中の面会や退院後の生活のサポートなど、本当に私を支えてくれた。
夫の前では、退院後数日間、夕食を食べている時や寝る前など、何度か、急に涙が出てしまうタイミングがあったが、そういった私のとっさの精神面での落ち込みにもずっと寄り添ってくれていた。退院後入浴は半身浴にするよう医師から指示があったため、夫は私のために半身浴用のバスタブ内に入れる椅子を買ってきてくれたりと、細やかな気遣いをしてくれて、本当に癒やされたし愛されてるなぁと感じることができた。
周りから沢山愛情を注いでもらえると、不思議と自分も自分のことを大事にできる。心が満たされて身体も元気になって、今ではすんなり現状を受け入れて立ち直れた気がする。
不妊治療は長期戦だし、母親や夫に代わってもらえないことも多い。自分が元気を出して前向きに続けられないと、やってられない。

また、加入していた生命保険で不妊治療への保険金や給付金が、結構カバーできるとわかったことも大きい。金銭負担が下がることで心に余裕ができるのだということを身をもって体感することができた。


そんなこんなで私の始めての体外受精と子宮外妊娠による入院沙汰は一旦こうして幕を閉じた。ひと夏の大仕事だった。
無事に2回くらい生理がこないと次の体外受精は再開できないみたいだから、秋はゆっくり過ごすしかないなぁ。




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