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アメリカの「強い」女性報道官の素顔

よくニュースで目にするアメリカの政府の顔でもある報道官、特に「女性の報道官」というと、あなたはどういったイメージを持ちますか。

「自信に満ち溢れている」そんなイメージを視聴者に与えるのではないでしょうか。そして、強い女性像を体現するのが、まさにこの女性報道官たちだと言えます。

前職でアメリカの政治の現場を取材をしてきた私は、こういった女性の報道官たちと毎日のように顔をあわせてきました。世界情勢が動いている時に、アメリカ政府の見解をカメラの前で伝える彼女たちの一言は、世界に大きな影響力を与えます。このような非常に緊張感に満ちた仕事をする報道官ですから、いつも堂々とした姿を見せる必要があるのもうなずけます。

しかし、私が現場で見てきたのは、テレビで見られるような、彼女たちの自信にみなぎった姿ではありませんでした。苦労や悩みを抱えながらも、自分流のやりかたを見つけて弱みや困難を乗り越えている、私たちと同じ1人の女性の姿でした。

今回は、そういったあまり知られていない、アメリカの女性報道官たちの人間味あふれるエピソードを紹介します。私自身も彼女たちの生き方から多くの勇気をもらいました。きっとあなたにとっても新たな視点が見つかるのではないでしょうか。



女性の報道官が活躍するアメリカ

アメリカの国務省(外交政策を担当する省庁で、日本の外務省に相当)報道官には、過去に多くの女性たちが就いてきました。

報道官は、政府のメッセージを伝えるために重要な役割を果たします。女性がこのポジションに就くことは、女性のエンパワーメントを象徴し、さらに女性が社会でリーダーシップを発揮し社会に貢献できることを示していると言えます。

報道官として活躍する彼女たちの姿は、アメリカだけではなく、世界中の女性にとってインスピレーションとなっていると感じます。

自分の弱みを笑いとばすサキ報道官

サキ報道官は、日本でも一番有名なアメリカの女性報道官ではないでしょうか。

日本ではホワイトハウスの報道官として知られているサキ報道官。私が彼女に初めて出会ったのは、彼女が国務省の報道官に就任した2014年。

当時30代だった自分と同じ年齢の彼女が、アメリカ政府の顔となることに、自分はもうそういう年なのかと、感慨深くも衝撃を受けたことを覚えています。

30代のサキ報道官が、アメリカ政府の重要なポジションについたことを、アメリカで活躍する強い女性の象徴として日本に紹介したいと考えた私は、サキ報道官へのインタビューを試みました。超多忙な彼女のスケジュールをなんとか調整してもらい、インタビューが実現しました。

インタビューが終わり一緒に会見室まで移動した彼女は、そこで予想もしなかった秘密のアイテムを見せてくれたのです。それは、会見室の壇上の下に隠された台。160センチでアメリカ人にしては小柄のサキ報道官。「私は背が低いから、この台で身長の低さをカバーしているのよ」と気さくに暴露してくれたのです。世界中のジャーナリストたちから厳しい質問を浴びせられ、いつも凛とした姿で応えるサキ報道官ですが、こういった工夫をして、場合によっては弱みともとれる部分をカバーしていたのです。

その後、彼女が国務省の報道官を退任し、シンクタンクで研究員をしていた時、私はワシントンDCの道端で妊娠中の彼女に出くわしました。彼女との立ち話での彼女の一言が今も印象的です。

「(大きくなったおなかを抱えながら)見ての通り、もうすぐ2人目が生まれるわ。でも、子育てと仕事でほんとうに大変。家の中はしっちゃかめっちゃかになっているわ!」と苦笑していました。

でも、仕事が大好きだから、子育てと家事は夫と分担をして、なんとかやりくりしているのだということを、ざっくばらんに話してくれました。

当時、同じように子育てと仕事の両立に苦しんでいた私にとって、サキ報道官とのこのたわいのない会話は、大きな勇気となって残りました。彼女のようなスーパーウーマンに見える人でも私たちと同じようなことに悩みながらがんばっているのか、なかなか気付けない彼女との共通点に気づいたのです。

職場での苦難でも自分にできることをしていたナウアート報道官

単独インタビューを受ける当時のナウアート国務省報道官(2017年)

ヘザー・ナウアート報道官は、2017年から国務省の報道官を務めていました。

彼女と同じ様に子どもを持つワ―ママとして私が驚いたことは、自分の職場である記者会見室に、2人の幼い息子たちを時々連れてきていたことです。そんな日は、会見の冒頭で「今日は息子たちが社会見学で来ています」と息子たちのことを紹介してから、いつものように会見が行われます。

報道官として多忙なナウアート報道官ですが、「母親」としての自分のイメージを隠すことはせず大切にしているという印象を受けました。普段は、世界情勢に関して激しいやりとりをする記者たちとも、会見が終わった後には子育てやお互いの子供の様子について和やかな雰囲気で気軽に話している姿を見ることができました。会見室で見るのとは異なる彼女の優しい表情はがとても印象的でした。

華やかなルックスもあいまって自信に満ち溢れているようにみえるナウアート報道官ですが、実は、誰でも経験があるような困難に直面していました。それは「上司からのいやがらせ」です。

報道官の仕事の一つには、国務省のトップである国務長官の外国訪問への同行があります。しかし当時の国務長官は、個人的に親しい側近だけを連れていくという前例のないやり方。そのため、ナウアート報道官は、長官に同行できない状況で、国務省の見解を伝えるという報道官の仕事をしなくてはいけませんでした。秘書のあなたが、社長に部屋に一切入室させてもらえず、仕事ができない、そんな状況に例えることができるでしょうか。

しかし、そんな問題に直面していることを感じさせない明るく前向きな姿勢で、ナウアート報道官は自分にできることを少しずつこなしていきました。長官以外のスタッフとの信頼関係を築くことに力を注ぎ、長官とは別に外国の視察訪問に挑戦したり、SNSを使って新しい発信を試みたりと工夫を重ねていました。彼女のこういった取り組みは少しずつ評価されていきました。

自信の裏に隠された努力

彼女たちのエピソードは、自信に満ちあふれて見える人々でも、私たちと同じ様な問題を抱え、目標を達成するために努力していることを示しています。

自己肯定感や自信は、生まれながらに備わったものではありません。自信は、努力、忍耐力、そしてリスクを取る意欲から、時間をかけて築かれるものであることがわかります。彼女たちは、特別な人ではなく、私たちが日々直面するような課題や難題に同じように直面し、努力をしています。

今回は、一見私たちとは遠い世界の人に見える女性報道官の素顔を紹介しました。彼女たちにできるのだから、私にもできるはず、そんな風に、ぜひ、自分の可能性を最大限に発揮するために一歩進んでみてください。

#私の仕事

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