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「元気な?」

「元気な?」 とも太郎(1996年頃)

底冷えのする冬の地下道
ダンボール集めて作った家
一緒に住んでる相棒が
嫌がるから 屋根はつけてないんだ

 寝るとき ちょっと眩しいけど
 仕方ないね 仕方ないね

おっちゃん 東京(こっち)に来る前は
大阪で料理人やってたんだよ
女房に 子供が8人もいてさ
上の娘は今頃 あんたくらいかね

 いまでも ちゃんと仕送りしてるよ
 金が入りゃね 金が入りゃね

おっちゃん まだまだ若いから
稼げば アパートにも住めるよ
けど 年寄りだとか 身体が悪いのだとか
ここにゃ 色々いるから

 仲間を見捨てるわけいかないから
 ここにいるんだよ ここにいるんだよ

 そういうこと 忘れちまったら
 人間終わりだね 人間終わりだね

あんたもしっかり頑張んなよ
口じゃ色々言えるけど
大切なのは そうじゃなくて
誰が山に登るかってことさ

 あんた まだまだ これからだから
 何でもやれるさ 何でもやれるさ

◇◆◇

1995年から3年ほど、新宿で働いていた。
その頃、新宿の地下道にはホームレスの人たちが暮らしていた。
僕はその人たちがどんな人たちなのか興味があって、
一晩一緒に過ごしてみた。

その時、そこで暮らしている男性から聞いた話を詞にした。
なんとなく、曲はつけられなかった。
たぶん男性の人生を思って、自分には荷が重いと感じたんだと思う。

あれから30年経つ。
男性はどうしているだろうか。
笑顔で暮らしているかもしれない。
もう亡くなったかもしれない。

こうした出会いのひとつひとつが、
いまの僕を作ってくれてるんだなぁ…と思う。
感謝。

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