Nature Briefing 2023/09/25付

Your asteroid package has been delivered
小惑星からの”送り物”

小惑星ベンヌからの大量の岩石と塵のサンプルが、日曜日、米国の砂漠に無事投下されました。このサンプルは3年前の短いタッチダウン中に確保され、オシリス・レックス宇宙船に掴まれたまま20億キロメートルを移動しました。NASAはサンプルを純粋な状態に保つために純窒素中で保管し、DNAの構成要素である核酸塩基など、太陽系の起源を解明する手がかりを探索する予定です。このマイルストーンは、2005年に小惑星イトカワからいくつかの粒子を収集し、2019年に小惑星リュウグウから数グラムの物質を収集した日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって完了した過去2回のサンプルリターンミッションに基づいています。オシリス探査機は現在、化学組成がベンヌとは異なるまた別の石の小惑星アポフィスへの軌道上にいます。

元記事:Nature

BACKSTORY……NATUREレポーターの視点から
Alexandra Witze:Nature特派員

昨日、ユタ州の高地砂漠のはるか遠くで、小惑星科学者と航空宇宙技術者たちがオシリス・レックスのタッチダウンを祝っていました。ミッションのメインパラシュートが開き、地上への安全な降下が保証されると、メディアテントにいる私たちには隣のVIPテントから歓声が上がるのが聞こえました。その後、私たちは記者会見のためにアメリカ陸軍ダグウェイ試験場にある巨大な航空機格納庫に案内されました。そこでは、着陸後にサンプルの回収を手伝ったNASAブランドのヘリコプターの横で人々がハイタッチをしていました。あたりは高揚感に満ちていました。これは、不思議と探検が語られる世界においてちょっとした良いニュースでした。
アレクサンドラ・ヴィッツェ:Nature特派員

Brain patterns show depression recovery
脳波のパターンがうつ病の回復を示す

研究者らは、重度の治療抵抗性うつ病患者を助けるために脳深部刺激(DBS)を用いて脳内でどのような回復が見られるかを測定しました。DBS は、埋め込まれた電極を介して神経活動を変化させる電気パルスを送信します。10人を対象とした小規模な治験では、研究者らはこの機会を利用して脳の活動を測定するセンサーも共に埋め込みました。9 人の参加者が 24 週間の治療後に大幅な改善を示し、そのうち 6 人の記録を使用して、神経活動の観点から治療が成功した場合のモデルを作成しました。この結果は、今後臨床医が再発を検出して治療を微調整し、治療が本当に効果があることを確認するのに役立てられる可能性があります。

元記事:Nature
参考:Cingulate dynamics track depression recovery with deep brain stimulation

Will AlphaFold transform drug discovery?
AlphaFold は創薬を変えるか?

Google Deepmind の AlphaFold は、タンパク質の 3D 構造を高精度で予測できることを 2020 年に証明し、より迅速で安価な創薬の可能性に化学者は大きな期待を寄せました。ほとんどの薬物はタンパク質上のさまざまな部位に結合することで機能しますが、AlphaFold は科学者がこれまでほとんど知らなかったタンパク質の構造を予測できるようになりました。しかし最近の研究では、AlphaFold の優れた能力はまだ薬物結合部位の確固たる手がかりには結びついていないことが示されています。そして、AlphaFold の一連の予測のすべてが現実世界を正確に反映しているかどうかも、まだ明らかではありません。

元記事:Nature
参考:How accurately can one predict drug binding modes using AlphaFold models?

⇒直近では順天堂大学・北海道大学・東京大学の合同研究チームがAlphaFold Multimerを用いて新しい細胞内のたんぱく質品質管理の仕組みを明らかにしたと発表している。
人工知能を駆使し、新しいたんぱく質品質管理の仕組みを解明―発達・てんかん性脳症発症機構の解明にも繋がる成果― :順天堂大学
Mechanistic insights into the roles of the UFM1 E3 ligase complex in ufmylation and ribosome-associated protein quality control;SCIENCE ADVANCES :18 Aug 2023 Vol 9 Issue 33

⇒タンパク質は複数のアミノ酸で構成されているが、これらはタンパク質の折り畳みと呼ばれる過程で自発的に折りたたまれ、天然状態の三次元構造となる。DNA配列にはアミノ酸の配列に関する基本情報は含まれるものの、折り畳みや構造については物理的なプロセスによって決定するためDNA配列から予測することは難しい。これらの三次元構造を決定する方法としてはX線結晶構造解析、低温電子顕微鏡、核磁気共鳴などの実験技術があげられるが、いずれも高価で時間がかかる。
 AlphaFoldはタンパク質の構造予測を実行する人工知能プログラムである。このプログラムは、タンパク質の折り畳み構造を原子の幅に合わせて予測する深層学習システムとして設計されている。

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