『スカイウォーカーの夜明け』脳内補完の後に

(2020年1月末にFacebookのNoteに記した文章の転載)

 今年の1月は、映画館に2回足を運んだ。2回ともスターウォーズを観るためだ。12月に2回観ているわけだが、一定の脳内補完期間をとり、年明けにあらためて観賞した。
スカイウォーカーの夜明け 脳内補完の道(←補完内容はここを参照)
 納得のいかない部分を、自らつじつまを合わせて観るとどうなるか。結果として、自分なりの補完内容は、なかなかしっくりくるものだった。ダース・シディアスの復活は、フォース・ゴーストの類ということで理解して矛盾なさそうだし、その辺は前月ほど気にならずに観られた。とはいっても、やはりもう少し意外な敵の登場が有った方がいいという気持ちは消えないが…
 最大の難点を、あまり気にせずに観られたせいもあってか、J・J・エイブラムスが用意した、ファン向けサービスポイントを、それなりに楽しむことも出来た。ファンサービス的に一番良いと思ったのは、最後にレイがRed5でエクセゴルに向かうところだろう。EP5でXウイングを動かすことを諦めたルークが、今作ではレイのためにXウイングを海中から引き上げるというのは、まぁ、出来すぎたシチュエーションなのだが。一ファンとして騙されて熱くなった感じ。わざとらしいくらい、ここぞというところで現れるランドの援軍。一瞬だけ映像に登場するウェッジ。レイに立ち上がるよう励ますジェダイの先人たち。どれもコテコテのファンサービスで、単作で観た観客にどれだけ訴えかけたかとかいう心配そっちのけで楽しんだ。
 というわけで、脳内補完の後、なるべく面白いところに目を向けようとして、1,2回目よりかは楽しく観られたわけだが、新たに気づいた点なども出てきてしまった。

①レン騎士団と生き残ったルークの弟子たち
 EP8「最後のジェダイ」のルークの話から明らかになるのは、ルークが建設したジェダイ寺院では12人の弟子が育成されていたということ。そしてカイロ・レンの乱の後、12人のうち半分は殺され、半分はカイロ・レンとともに去った(もしくはいずこかに消えた)ということになっていた。この殺されずにカイロ・レンについた数名がレン騎士団になったのかと思ったが、EP9「スカイウォーカーの夜明け」で登場したレン騎士団は、フォースの使い手ではなく、シスの信奉者(シス・エターナル)の殺し屋。つまり、能力的には普通に強い殺し屋たちだった。となると、カイロ・レンによるジェダイ寺院破壊で生き残ったルークの弟子はどこに行った?生き残りがいたというのが、ルークの勘違いというのは考えにくいので、やはりどこかに身を隠したか、ダークサイドに寝返ったかのどちらかしかなさそうだが… これ、何かの伏線なんでしょうか?

②カイロ・レンとレイの年齢 手駒としてのオーチとスノーク
 カイロ・レンはEP6「ジェダイの帰還」後に生まれたことは間違いない。そしてEP6「ジェダイの帰還」からEP7「フォースの覚醒」の間隔がだいたい30年くらいとされているので、EP7時にカイロ・レンは30歳未満だったことになる(アダム・ドライバーの年齢もほぼ一致)。
 一方レイがパルパティーン(ダース・シディアス)の孫ということになると、色々と疑問が湧いてくる。レイの回想でしばしば出てくる、ジャクーでレイが両親と引き離されるシーン。あの実行犯は、シスの下僕オーチだという事が明らかになるが、オーチは誰の命令で動いていたのだろう。そして回想シーンの一件の発生年代はいつなのだろう。また、生存時期のダース・シディアスの命令による行動なのか、死んで復活した後のダース・シディアスの命令によるものか。スノークの命令というのも不自然だ(スノークが命令を下せるのなら、オーチなんていうちんけな下僕を使わず、ファースト・オーダーの一個大隊をジャクーに派遣して優秀な孫を回収させればいいはずで、オーチはあくまでスノークとは別系統の手駒と思われる)。
 生前のダース・シディアスの命令なら、オーチによるレイの両親殺しはEP6よりも以前ということになり、EP6時点でのレイの年齢は4,5歳よりは確実に上で、EP7での年齢は34,5歳か、それよりももっと上ということになる。下手をすると、カイロ・レンより10歳くらい年上の可能性も出てくる(これは役者の外見から有り得ないことだ)。
 復活後のダース・シディアスの命令なら、シディアスがどの時点で、アクティブにオーチなどに命令を下せるほどの復活を果たしていたかという点が問題になる。また、レイの出生がEP6よりも後の場合、シディアスがレイ出生に、ダーク・サイエンスを用いて関与したという、前の「脳内補完」で考えた説の可能性は薄くなる。また、シディアスがレイの出生を知るのも難しく、その素質の優劣を知るのは更に困難だろう。
 レイの出生がEP6直前くらいであれば、EP7でのレイの年齢は30歳ちょっと。見た目にはちょっと矛盾するか(EP7時のデイジー・リドリーは23歳)。これだと、シディアスがレイの連れ去りと両親の殺害を命令したのがEP6後のせいぜい4,5年程度ということになる。EP6後の4,5年後では、スノークもファースト・オーダーも動き出していないと考えて良い時期で、シディアスの手駒はオーチくらいだったという説明は出来る。ギリギリ、シディアスがレイの出生に関与したという可能性も保てる。なぜ、オーチのようなあまり能力の高くなさそうな下僕に、重要任務を任せていたかの説明もつくのがこの段の説だが、レイの年齢的にやや難がある。
 レイの出生がEP6直後なら、シディアスがレイの出生に特別な作為を加えた可能性はなくなる(そしてレイがダーク・サイエンスの申し子だという脳内補完での説は崩れ去る)。また、死後にゴーストになったシディアスが、レイの出生を知ったとしても、そこまで魅力有る能力を持った孫であるとの確信を持ちえたのか、説明が難しい。遠いエクセゴルから、レイの素養について感知できていたのだろうか。レイとシディアスの関係性はどんどん遠くなる。
 思い切ってレイのEP7時の年齢を23歳(当時の役者の年齢)と断定して逆算すると、レイの出生はEP6の7年後。さらに、オーチによるレイの連れ去り未遂がEP6の11,12年後ということになる。つまりシディアスは、死後ずいぶんたってから孫の出生を知り、連れ去り等を命じたことになる。この時期になると、もうファースト・オーダーは建軍にかかっていてもおかしくない時期だ。フィンも幼少期に誘拐されてストームトルーパーにされているので、EP6の11,12年後くらいには、ファースト・オーダーは大規模な幼児誘拐システムを構築しているはずなのだ。なぜそんな時期に、オーチに最重要人物の捜索・誘拐を命じたのか。しかもオーチは、命令によってか、単純に単細胞だったためなのか、レイに辿り着く最有力手段である両親をあっさり殺害するほど能がないヤツである。役者の年齢からすると、この説が最も有力だが、レイとシディアスの関係性が最も遠くなるし、なぜオーチに重要任務を任せた?という疑問は更に拡大する。
 どの説をとっても、レイの年齢、シディアスとレイの関係性、ファースト・オーダーの構築程度との整合性が、いまひとつしっくりこない。

③デス・スター残骸での決闘の後、レイはなぜオク=トーに行けたのか?
 デス・スター残骸での決闘の後、レイはカイロ・レンのファイターを奪ってオク=トーに飛んだ。そして、ルークが感動的な演出のもとにオク=トーからエクセゴルに行く道にヒントを与えることになるのだが… しかしその前に、なぜレイはファースト・オーダーの機材でオク=トーに飛べたのか?EP7を観ればイヤというほど分かるように、オク=トーの場所は超機密事項といってよい。ファースト・オーダーが無辜の民をどれだけ殺戮してでも手に入れたかった情報である。そしてEP7でついにファースト・オーダーはその機密情報を入手できなかった。当然、カイロ・レンのファイターにオク=トー行きの航路データが有るはずが無い。オク=トーは、エクセゴルと同じく銀河の未知領域に有り、航路を知っていても航行が困難な領域に存在する。単にレイが航路を暗記していたということは有り得ない。宇宙はそんな、「二丁目の角を左に曲がって三軒目」みたいにはいかない。ここは、レイは航路データをバックアップしていたレジスタンスの拠点でデータを取ってオク=トーに行ったとでもすれば、説明できなくもないが、地味に気になった点である。
 実は全く同類の問題として、自らのタイ・ファイターと、その中にあるウェイファインダーを奪われたカイロ・レンは、どうやってエクセゴルに行けたのかというのも謎だ。これもどこか、ファースト・オーダーの拠点で位置情報のバックアップでもとっておいて、それを参考に飛んでいったのだろうか。

④ルークの緑のライトセイバーはどこへ行ったのか?

ライトセイバー

 これについて、ファンの間でほとんど言及されないのが実に不思議。新3部作で大いに焦点が当たっているのは、アナキンからルークに受け継がれた青のライトセイバー。EP9「スカイウォーカーの夜明け」では、これがもう象徴的な意味を持つに至ってしまっている。そしてラストシーンで登場するレイの黄色いライトセイバーに、ファンの興味は一気に移ってしまっているが… しかし、あの青のライトセイバー、もともとはEP5でどこかに紛失してしまったようなものだし、仮にどこかで回収されたにせよ、ルークにとっては青も緑も同じくらい大事。いや最も大事なのはEP6「ジェダイの帰還」で自ら作製した緑のライトセイバーの方では?個人的に、あの緑のライトセイバーの形状が好きということもあるのだが、EP9では一顧だにされなかったのが実に不思議で、ファンの間でもほとんど話題にならない。あの緑のライトセイバー、実はEP8「最後のジェダイ」でも登場するのは回想シーンのみ。つまりルークがベンの寝込みを襲おうとするシーンで出てくるだけ。遠隔ビジョンでカイロ・レンと戦うルークは、スプレマシー内で真二つになったはずの青のライトセイバーを握っていた(本当はカイロ・レンはあのセイバーを見て、おかしいと気づくチャンスはあった)。EP9でも緑のライトセイバーは、ルークとレイアの修行回想シーンでのみで登場するが実物は出てこない。回想シーンでしか出てこないということは、ルークはもうどこかで紛失してしまっていたのか?それともXウイングとともにオク=トーの海中に投げ捨てたか… 誰も気にしないのが本当に不思議。
 青のライトセイバーはアナキンから受け継いだもので、スカイウォーカーの名を引き継ぐものに継承されるシンボルである、という意味を付与したかったのだろうけれども。緑のライトセイバーには実に気の毒だし、行方がどうにも気になって仕方がなかった。
 さて、これらの新たなる疑問を抱えつつ、5回目を劇場で見るか、もうDVDでいいやとするのか、迷うことになってしまうのだが…(つづく)

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