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日米の大学研究の違いから考える、産学連携の課題と可能性

前回記事の続きです。

日本の産学連携はうまく行くのか?

日米の違いはスタイルの違いに過ぎず、一概にどちらが良いとか悪いと言えるものではありません。
日本のスタイルもよい面もあり、実際に基礎科学を中心に米国より先行している分野もあります。
一面だけを切り取ってああだこうだと議論をするのは軽薄かもしれません。

でも、日本の大学を取り巻く環境は年々厳しくなっています。
日本のGDPは頭打ちで、これまで大学の研究を支えていた科研費の「原資」は先細りです。

文部科学省は以前から危機感を持っており、「これからは科研費頼みではなく、自力でお金を稼いで来てください!」と各大学に発破をかけています。大学が動きやすくなるように独立行政法人化し、様々なプロジェクトを組成して補正予算を通し、直近では何とか増額に持って行っています。(こうした努力には、頭が下がります。)

では、この試みはうまく行くでしょうか?
もちろん、これまでやったことのない新しいことを手掛けるのでスムーズにうまく行くはずはありません。
でもそれを差し引いても、「最も大事な部分」にメスを入れなければ、うまくいく確率は低いと思います。

「最も大事なこと」とは、日本の大学に根付いているアカデミック至上主義的な考え方を刷新することです。

いざ、産学連携プロジェクトを始めてみると・・・

事例をひとつお話します。
某企業が某名門国立大学に多額のお金を投資し、産学連携プロジェクトを立ち上げました。
学内の研究者がそのお金を使って研究を行うには、研究計画書を出して投資委員会で承認を受ける必要があります。
(私は企業側の関係者として関与していました。)

研究計画書のフォーマットは企業側が指定しており、その中には「期待される研究成果とその事業的な価値」といった項目が含まれます。企業としては当然、投資した金額以上のリターンを事業で回収する必要があるからです。
非の打ちどころのない研究計画書を作成いただいた先生も多くいらっしゃったのですが、中には「こんな論文が書ける」とか「こんな社会的な意義がある(金儲けなんてちっぽけな話ではない!)」といった計画書も散見されました。

そういう研究も世の中に間違いなく必要なのですが、慈善事業目的ではなく事業投資として考えた場合、なかなか厳しいものがあります。
当然「書き直し」や「この案件は却下」ということになるのですが、大学側から「この先生は学内で偉い立場にある方なので、ここは何とか目をつむって・・・」という要望が出て来たのにはとても驚きました。

最も、これまでアカデミックな成果を主眼に科研費を申請されてきた先生方に「企業向けの計画書を」とお願いしても限界があったことも事実です。学内のパワーバランスにも配慮する必要があります。
でも、そういった「体質」から変えていかないと日本の産学連携はうまく行きづらいと思います。

どの大学が有望か?

文部科学省もすべての大学がこの変化に付いてこれるとは考えておらず、国内のトップ大学を中心に選抜を行って一部の大学だけを着実に生き残らせる戦略を選択しているように思います。

しかし、私は既存のトップ大学が「よい位置」にいるとは考えていません。
確かに、知名度、研究設備と環境、優秀な人材などの様々な利点を抱えています。
でも、トップ大学だからこそ旧態依然とした体質が染みついており、トータルで見るとマイナス面の方が大きいように思えるからです。

ではどこが有望かと言うと、例えば京都先端科学大学です。

ニデック(旧・日本電産)創業者の永守さんが旧・京都学園大学に私財を投じて再スタートした大学です。
ニデックの主力であるモーター分野をはじめとした研究や人材育成を、企業側のニーズを起点に組み立てることができれば、米国型の産学連携にぐっと近づくと思います。
優秀な教授陣を他大学から積極的に採用しており、名門大学と遜色のない指導が受けられる体制が整っています。

少子化で多くの私立大学は経営が厳しくなっています。
京都先端科学大学のように、既存の大学を企業主導でリニューアルする取り組みは、日本型の勝ちパターンのひとつとして有望だと思います。

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