見出し画像

ラジコン用ドリフトタイヤを3Dプリンタで作ってみた記録

最近、古いラジコンを引っ張り出してドリフトタイヤを履かせて楽しんでいる。

もはや骨董品のTL01

昔買った硬質ゴム製のドリフトタイヤを使っていたが、速度が出すぎるような気がしたのでタミヤの樹脂製ドリフトタイヤを使ってみた。初めは滑りすぎるかと思ったが、表面が荒れてくると少しグリップするようになり、ジャイロの調整を加えるといい感じにコントロールできるようになった。

しかし数回走らせて気づいたのだが、このタイヤはめちゃくちゃ減るのが早いのである。2200mAhバッテリー4本分走った段階で3分の1ぐらいになってしまった。ホイール付きのタイヤで2本1000円ぐらいだったが、4本で2000円のタイヤがゴリゴリ削れていくのはコスパが悪すぎると感じた。

僕は3Dプリンタを持っているから、タイヤの自作を考えるのは自然なことだった。海外の3Dプリントデータ共有のサイトを見ても作っている人はそれなりにいるようだった。

黒のPLAを買って、ホイールの寸法を測り、とりあえずタイヤを作ってみた。インフィル100%、幅24mm、内径53mm、直径は64mmとした。コストは1本50円ぐらいだ。この値段なら売っても儲かりそうだが、それはまともに使えたらの話だ。

とりあえず作ったドリフトタイヤ

スポンジテープを使ったホイールへの取り付けなど慣れない作業もあったが一応綺麗にできたのではないだろうか。ただし、3Dプリンタ特有の問題がいくつか発生していた。次の画像は3Dプリントで発生する継ぎ目の画像だ。

FDM3Dプリンタ特有のシーム

この様な段差がドリフト走行にどの程度影響するのか調べる必要がある。
次にこれは私の3Dプリントの調整不足のせいなのだが、積層方向に小さな割れが発生している。

小さな割れ

ドリフトタイヤはすり減っていくものだから段差や割れはそのうち削れて無くなるのではないかと考えていた。そして日をおいて実際に走行してみた。

まず、走らせてすぐ気づいたのは、このタイヤは滑りすぎるということだった。タミヤの樹脂製ドリフトタイヤよりも余計に滑り、速度は出ないしコントロール性も良くなかった。これは素材の問題なので違う種類のフィラメントを使って対応するか、グリップを稼ぐためにパターンを刻むなどする必要があると思った。

そして、5分ぐらい走ってからタイヤを確認すると上記の3Dプリントの継ぎ目は綺麗に削れて見えなくなっていた。この点については予想通りで、うまく行ったと思っていた。

さらに走らせてバッテリー2本めが無くなろうかという頃に異音が鳴り始める。タイヤを確認すると次の画像のようになっていた。

ささくれたタイヤ


タイヤの割れ

タイヤ表面がささくれたようになり、表面が剥がれるように割れが生じていた。綺麗に削れてほしかったのだが、うまく行かなかった。これは失敗だ。

家に帰ってこの失敗の原因を検証してみた。
まずノギスでタイヤの直径を測る。どれくらい削れたのか確認する必要がある。すると1mmぐらい削れた所で剥離が発生しているようだった。

1mm削れると表面を覆っているウォールと呼ばれる層が無くなり、内部のインフィルと呼ばれる部分に到達する。密度はどちらも100%だが、ウォールとインフィルではプリント時にノズルが通過するパターンが異なる。この境界部分で割れが発生しているのではないかと考えた。これを仮説①とする。

Gコードの断面図
赤と緑のラインがウォール、内部の黄色い部分がインフィル

もう一つの説は玉ねぎの皮のような同心円状の構造自体に問題があって剥離が起きている、という説でこれを仮説②とする。

仮説①の対策として思いつくのは全体の構造を均一にすることだ。まずはウォールの厚みを大きくしてインフィルが存在しないバージョンを作った。すべてのラインが同心円状に並び均一になっている。このバージョンは印刷スピードが速く1時間でプリントできるが、仮説②が真の場合、うまくいかない。

すべてをウォールにしてインフィルが存在しないバージョン

もう一つのバージョンはウォールを無しにして全てをインフィルにしたバージョンだ。インフィルは断面を並行する線で埋め、次の層では90度直行する方向に平行線で埋めるというパターンを繰り返す。仮説②が真の場合はこちらを採用することになる。このバージョンはプリント時間が2時間かかる。両方うまく行った場合は印刷時間の短いウォールのみのバージョンを採用することになる。

ウォールが無く全てがインフィルのバージョン

天気に恵まれなかったり、利用している公園のスペースが空いていなかったりでなかなか走らせることができなかったが、日をおいて2回目の走行を試すことができた。

2回目の実験走行で分かったのはコントロール性についてはジャイロの設定でなんとかなるということだった。ジャイロの設定を少し強めることでコントロール性は改善できた。さて、バッテリー2本を使い切り、タイヤの状態はどうなっただろうか。

仮説①は正しかったようで全体の構造を均一化したことにより両方のタイヤにおいて大きな割れやささくれは発生しなくなった。

ウォールなし、インフィルのみのタイヤ
ウォールのみインフィルなしのタイヤ

仮説②についてはある程度正しい、という感じでウォールのみのタイヤでは走行に支障ない程度の小さなささくれが発生していた。クオリティについてはインフィルのみのタイヤに軍配が上がる。この状態でもある程度答えは出ているのだが、さらに走行を続けてタイヤの状態を見ることにした。

3回目の実験走行、ここまで書いていなかったが実験走行では車両の右側にウォールのみのタイヤ、左側にインフィルのみのタイヤを装着して走らせている。右前のタイヤをA、右後ろタイヤをB、左前タイヤをC、左後ろタイヤをDとしている。

私のTL01は重心バランスを変えるためにフロントオーバーハングにバッテリーを搭載するという無茶な改造をしている。なので前タイヤのほうが荷重がかかり負荷が大きい。また、フロントにはキャンバー角がついているためタイヤは台形に削れていく。

バッテリー4本分走ったAのタイヤ

問題が発生しているのはAのタイヤで、前回発生した小さな剥がれが大きくなってきた。Bのタイヤは同じウォールのみのタイヤだが負荷が小さいためかごく小さな荒れがあるだけで今のところ問題はない。しかし、このまま使い続ければAのように問題が出るかもしれない。CとDのインフィルのみタイヤについては市販のタイヤと遜色ないレベルで綺麗な表面を保っている。

結果がはっきりとしてきたので結論を書く。仮説①、②共に真だったと思う。3Dプリンタでドリフトタイヤを作ることは可能。ただしタイヤ内部にウォールとインフィルの境界があってはならない。プリント設定ではインフィルを100%にしてウォールの厚みを0する。こうすることで綺麗な表面を保って削れていくドリフトタイヤが出来上がる。これを今回の研究の結果としよう。

これで激安ドリフトタイヤを作れるようになった。形状や材質のカスタマイズも可能だし、ホイールと一体成型してもいいだろう。まあ肝心の腕前は残念なんですけど。修行するか。それではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?