【邦画】「キッズ・リターン」

北野武監督の、1996年公開の6作目「キッズ・リターン(Kids Return)」。

バイク事故後の復帰作で、淀川さんが年間ベストに挙げてたから観た。

北野監督の映画は、デビュー作は映画館で観たけど、後は観たり観なかったり。「アウトレイジ」が思いの外つまらなかったし。

彼の映画には暴力を象徴するものとしてヤクザが度々出て来るが、俺が、ヤクザやヤンキーの自己満足の世界・文化がチョー大嫌いなこともあって、あまり観たいとは思わなかった。

この作品も、ヤンキー(不良少年)、ヤクザが中心となるけど、多分、監督の幼少時からの下町での体験がベースになっているのだろう。

ボクシングでのしあがる少年らの話がメインだが、高校を出て、社会に投げ出された彼らが、オトナの理不尽な世界に遭遇して、上手くいかなくて空回り、挫折して破滅の道を辿る、もしくは欲望・誘惑に負けて元に戻ってしまうという、階級や収入、育った場所によって人生がほぼ決まってしまうような人間社会のしがらみというか、宿命みたいなものを描いたのではないかと思う。友達と一緒の時だけ、全てを忘れて明るく希望や未来を語り合うような。だから、多くの視聴者が共感できる部分が多いのだ。

走ったり歩いたりの「動」に加えて、止まって役者の表情だけによって展開をわからせるシーン、突然放り込まれるお笑い、役者にあまり語らせない、コマ割りによる間を多用する…北野監督の特徴は健在だ。

ガキは、不器用で衝動的で暴力的な、自分自身が理不尽な存在だけど、理不尽なオトナ社会に組み込まれると、大人しく物分かりよく、自ら型にハマろうとするのだ。特に不良少年たちは。北野監督は、そんな少年たちを暖かく優しく愛を持って見つめている。

この映画、2もあるんだな。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。