【邦画】「二百三高地」

YouTube東映公式チャンネルで「二百三高地」(1980年、舛田利雄監督)を観た。

鹿児島高校生だった時、担任の右翼の先生にタダ券をもらって、友達と劇場で観たと思うが、3時間越えとこんなに長かったかしら。

受け止め方によっては反戦とも賛美とも取れる、“強制号泣”映画であった。

ということで後半、俺もボロボロ号泣。昔、観た時も泣いたかなぁ?また、上手い具合に「防人の歌」が流れるし。

明治の日露戦争での、乃木希典大将を中心とした旅順戦に焦点を当てたものだが、乃木をはじめとした有名な軍人や政治家の活躍のみならず、前線で戦う兵の生死や苦悩などの様子もちゃんと盛り込んでいる。

日本の軍人精神って、明らかに勝ち目もないのに、ただ闇雲に突っ込むような戦い方を、なぜやるのだろうか?駆り出された兵は当然、撃たれてバタバタと死んでいく。あちこちで壊滅、全滅、死者多数が相次ぐし。

トルストイなど、ロシア文学が好きだった、あおい輝彦演じる将校が、乃木他に向かって叫ぶ。
「ロシア人は全て自分の敵であります…。最前線の兵には体面も規約もありません。あるものは生きるか死ぬか、それだけです。死んでいく兵たちには国家も軍司令官も命令も軍旗も、そんなものは一切無縁です。灼熱地獄の底で鬼となって焼かれていく苦痛があるだけです。そんな部下たちの苦痛を乃木式の軍人精神で救えるのですか!!」。

ラストの、明治天皇を前に乃木希典が泣き崩れるのと同様、まさに慟哭の叫びだ。乃木希典は、明治天皇崩御の日に、妻と共に自刃している。

なによりも、このシーンが号泣のピークになるけど、戦争は憎しみの連鎖しか生まない。決して国のために自分を犠牲にするのではない。時の権力者、政治家や官僚のために命を捨てるのだ。

想像力を働かせることのできないアホな大衆は、この映画を観て、こうした犠牲が今日の…云々のたまうが、結局、武士道や騎士道などの精神を美化して、自分たちの優位性を見出していく。そして、それが憎しみの連鎖につながっていくのだ。戦争は、一部の権力者が起こすというよりも、大衆が、一つのイデオロギーにファナティックに陥ることで起こるものである。しかし、それが人間の歴史というものだろうな。

夏目雅子の清楚な美しさが際立ってる。どんなイデオロギーであろうが、国家だろうが、戦争だろうが、男女の愛に優るものはないということでもあるね。例え悲劇で終わろうともだ。



脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。