【映画】「アングスト/不安」

“異常”という言葉がピッタリのアングラ映画「アングスト/不安」(1983・オーストリア、ジェラルド・カーグル監督)を観た。

オーストリアで実際に起こったヴェルナー・クニーシェックという男が、仮釈放中に一家3人を殺害した事件を映画化したという。

殺人鬼、狂気、グロ、非日常、異常心理、アングラで、音楽がクラウス・シュルツと来れば、俺の好む材料が揃ってるから、コレは観ない訳にはいかないね。

主人公の男(クニーシェック)が、住人が留守にしてたある屋敷に忍び込み、帰ってきた病気の年老いた母親、若くてキレイな娘、知恵遅れの障害者の息子の3人を、不本意ながらも次々と殺してしまうという流れ。殺人で10年獄入り、出所したその日に既に殺人計画。

仮釈放後のクニーシェックが一人語りで、次の殺人への願望から、周りを見ながら感じてる不安、殺人に至る心理状態、変質的な欲望などが、内省的に追い詰められるように示される。

さらに、肉迫するように人物のすぐ間近でカメラが撮ってると思えば、まだドローンがない時代に、まるでドローンを使って撮ったように上空からの離れたショットになったり、クニーシェックが走れば、カメラもすぐ後ろを一緒に走って、なんとも斬新な、アヴァンギャルドなカメラワークに驚く。

殺人の被害者のことよりも、殺人鬼クニーシェックの、自分の計画通りに行かずに、上手くいかない、失敗の末の行き当たりばったりの生々しい行動という醜態が晒し出されて、彼の不安や苦悩が中心に描かれている。

それとは別に、被害者が飼ってたダックスフンドのキュートさが暗い展開の中でも際立ち、狂気を描くのに一役買ってる。

初公開当時、世界各地で上映禁止となったらしいが、無機質な異常が最初から最後まで続くこんな映画は禁止になって至極当然だ。恐ろしくてエグ過ぎる。別にこんな映画、観なくても全然平気だし。俺は絶対観るけどね。

あのギャスパー・ノエが偏愛してやまない、今までに60回は観たというこの映画はジェラルド・カーグル監督唯一の作品。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。