【邦画】「新・喜びも悲しみも幾年月」

木下惠介監督の、1986(昭和61)年の作品「新・喜びも悲しみも幾歳月」。

1957(昭和32)年に、デコちゃん(高峰秀子)と佐田啓二の主演で作られた。これは、大原麗子と加藤剛の主演だ。

木下監督の晩年の作品(次の作品が最期)だからか、特別、トラブルもなく、女性がダメ男に蔑ろにされることもないが、夫が灯台守をするある一家の、転勤、交流、子供の成長と独立、祖父の死と、13年に渡る歴史を描く。

京都、青森、東京、静岡、大分と転々とする中で、変わり行く者と巣立つ者、死に行く者と、変わらぬ者はないというように、やはり、木下監督なりの“無常感”を表したヒューマンドラマとなっている。

さすがに時代が移り変わって、前作ほど、厳しい灯台守の仕事は描かれないが、息子の海上保安庁の仕事は映される。

加藤剛の妻役の大原麗子が、ことのほかカワイイ。夫や子供たちに対して、愚痴や不満をよく言うのだが、嬉しいことがあると、飛び上がって喜んだり、夫に抱き付いたり、とても愛らしい存在である。

そして、夫と父親の関係が重要視されている。祖父の存在が夫婦の愛や家族の子供たちとの絆を際立たせている。

祖父を演じたのは植木等だが、前半の飄々とした老人ぶりが植木等らしくて面白い。後半は、死に行く者の想いが叙情的に描かれている。

自分の両親の最期が思い出されて、ウルウル来ちゃったよ。しかし、植木等のように、息子家族に受け入れられて、優しくされて、いろいろあったけど満足する最期だったと思える老人は多分、少ないのでは。木下監督の理想とする家族なのかもしれない。

この家族を理想とする、若き紺野美沙子もカワイイ。彼女と結婚する田中健も、娘と結婚する中井貴一も、海の男よろしく若くて毅然としている。

家族のない俺も、柄にもなく、家族ってなんだろうか?と考えちまったね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。