【洋画】「甘い生活」

イタリアの巨匠、“映像の魔術師”ことフェデリコ・フェリーニ監督の「甘い生活(La dolce vita)」。

1960年の公開。若い頃に観たと思うけど思い出せない。3時間近くの長尺だけど、そんなに難解でもなく楽しめた。

1950年代のイタリア・ローマが舞台。

ゴシップ新聞の記者マルチェロを中心に、上流階級の人間たちの、今でいう“パリピ”な連中の生態がテーマ。

現代からしてみると、そんなにハチャメチャでもないが、ブルジョワ連中の、その場限りの乱痴気騒ぎや、どこでもやっちゃう男女のアバンチュールなど、モラルの欠けた刹那的で退廃的な様子を、記者マルチェロ自身の生活や仕事を通して描く。

マルチェロの友人らは、俳優や有名人をカフェで待ち伏せして、見つけたら、プライベートでも何でもお構いなくバチバチ写真を撮って、新聞や雑誌に売る仕事。マルチェロとつるむ友人の1人がパパラッツォという名前だが、パパラッチの語源はココからきている。

マルチェロが夜中に、アメリカの女優シルヴィアと共にトレビの泉で水浴びする有名なシーンをはじめ、ローマ帝国時代の様々な遺跡、ローマの有名な高級カフェ、ホテル等、ローマの観光名所がたくさん。

歴史あるローマの街と、享楽と退廃の人々を魅力的に組み合わせるなんて、さすがフェリーニだね。政治でも宗教でも、いろんな要素が示唆的に導入されている。

モノクロ・フィルムだけど、映像がとてもキレイ。ローマを舞台にしたデカダンスそのもの。

でも、スーツやドレスで着飾って、美(=女)を讃える詩のようなセリフが躊躇することなく出て来るのは、やはりイタリアならではだろうね。

マルチェロは、ジェームス・ディーンに似たイケメンで、取材対象者でもお構いなく口説いてモノにする。

永遠に続くかと思われた熱狂と狂乱の日々も突然、絶望と死によって終わりが来る。海に近い別荘で遊び呆けてた連中も、海岸に打ち上げられた腐臭を放つデカいエイを目にする。海岸の向こうでは、顔見知りの美しい少女がマルチェロに声をかけるが、波音に消されて何を言ってるかわからない…。

不気味な姿のエイと、可憐な少女の対比は、何をメタファーとしてるのだろう。

光でも影でも、秩序でも堕落でも、人間の最も輝く青春時代は、短くて儚くて、とても虚しいものとでも言うのだろうか。

フェリーニのこういう世界は素晴らしいね。いろいろと教えられる映画だ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。