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ブラチスラバ①[2024.2.24]

朝、ブダペストのホテルを出てブダペスト中央駅に向かう。駅は大通りに沿っているので、道を間違えることはない。この日も空はどんよりと曇っている。夜の間に雨が降ったのか、道にはところどころ水溜りができている。だが、空気はそこまで冷え込んでいない。

スーツケースを引きながら歩いていると、不思議な形をした建物が道路を挟んで右手に見えてきた。向こうから手前に弧を描きながら反り上がる形をした建物と、それに対をなすように向こうからさらに奥へ反り上がるような形をした建物だ。地図で調べると、ここは民族学博物館で、世界各地のコレクションが集まっている模様。ブダペストに滞在している間は、こんな建物があるとは知らなかった。また来ることがあれば、行ってみよう。

歩道の端は植木が等間隔に並び、その土壌は雨のせいでぬかるんでいる。時折、細い道でスーツケースがぬかるみの中にはまってしまい、車輪の動きが悪くなった。

ホテルを出て1時間ほど。ブダペスト中央駅に着いた。スーツケースを引いた人がぞろぞろと歩いている。電光掲示板でブラチスラバに行く電車の乗り場を確認した。プラハ行きの電車に乗れば良い。電車はすでに到着していた。

発車までまだ時間があるので、ホテルで食べたパン2つでは物足りないお腹を満たすことにした。駅の左奥にピザやサンドを売っている店がある。若い女性の店員が対応してくれた。パニーニを頼んだ。

店の前のベンチはすでに占領されていたので、乗り場近くで立って食べた。ついでに、泥のために動きの悪くなったスーツケースの車輪をパニーニを包んでいた紙で拭いた。

電車に乗り込んだ。中はコンパートメント形式になっている。まるでホグワーツ行きの特急に乗り込んだようで、気持ちが高ぶる。いくつも部屋が並んでいるが、どの部屋に座ればよいかよくわからないので、空いている部屋の手前の席に座った。

思えばブダペストはとらえどころのない街だった。俯瞰して眺めると美しい。ブダ地区とペスト地区がドナウ川で整然と分けられており、家々も綺麗に並んでいる。だが、実際に街を歩いてみると雑然とした印象を覚える。整然さと雑然さの入り混じった街、というのが2日間の滞在で感じたところだ。

おばさんがコンパートメントに乗り込んできた。空いてる?と聞くのでどうぞ、と言うとおばさんは僕の真正面に座った。

電車が発車してすぐに眠気に襲われた。再び目が醒めた時、もうおばさんはいなくなっていた。僕は窓側の席に移った。金髪で8ミリぐらいの坊主頭の若い男性が入ってきた。僕はしばらく車窓を眺めながら、ぼんやりしていた。

途中の駅で、また若い男性が乗り込んできた。Wi-Fiは使える?と聞くので、使えると思いますよ、と答えた。彼はノートパソコンを取り出し、机の上で作業を始めた。

12時前にブラチスラバ駅に着いた。降りる際にノートパソコンを使っていた男性と話をした。どこから?と聞くので日本から、と答えた。遠いね、と彼は驚いた。タイやベトナムは行ったことがある、と彼は言った。プラハまで行くのかと聞いてみた。すると、自分はスロヴァキアの人間だが、プラハで働いていると言った。2年前に大学を出たらしい。ブラチスラバで観光をするのに良いところはないか、と聞いたがあまり良い返事は帰ってこなかった。それよりもチェコは良いところだから楽しみな、と彼は答えた。

彼に別れの言葉を言って電車を降りた。コンパクトな駅を出ると、小綺麗なロータリーが見える。ロータリーの前には長いベンチがいくつか並んでいる。左手にはハンバーガーの店が2つほど出ている。直感的に、良い街だと感じた。

まず荷物を預けなければ。再び駅構内に戻った。構内の表示でスーツケースを預かってくれる場所を見つけた。一日預かってもらって7ユーロ。超過による追加の支払いはないという。なんて親切な場所なのだろうと思った。イタリアでは平気で10ユーロ以上した。

この街に何があるのかあまり知らなかったので、とりあえずブラチスラバ城の方へ歩いていくことにした。駅の出口から真っすぐ進み、右へ曲がる。すると歩道橋が見えてくるので、橋を渡って広い道に出る。

歩いていても特にお店というお店がない。どこで昼食を食べられるのだろう。スーパーもなさそうだ。どこかで食料と水を調達しておかねば。

ブラチスラバ城もすぐそこ、というところまで来た。交差点で当たりを見回すと、左手の方から多くの人がこちらに歩いてくるのが見える。そっちの方に行ってみよう。左手に進み、階段を降りると、そこは石畳と古風な建物に囲まれた旧市街だった。トンネルをくぐると、お店がたくさん並ぶ通りに出た。

だが、どの店も昼食にしては値段が高い。周辺を色々見て回って、ようやく手頃なレストランを見つけた。中に入ると甘い香りに包まれた。若い男性が出迎えてくれた。

ザワークラウト。酢キャベツである。発祥はドイツだと言われているが、広くヨーロッパで食べられている。キャベツの上にカリッと焼かれたベーコンが散りばめられている。特段酸っぱいということはないが、日本で食べたことのない味がする。ベーコンとよく合っているのだが、最後の方は少し飽きてしまった。一緒に頼んだエスプレッソを飲み干して、店を出た。

街は本当に落ち着いた雰囲気で、歩くのが心地よい。建物もカラフルで、見ていて楽しい。

大聖堂がある。せっかくなので中に入ってみた。美しいステンドグラスが何枚か並んでいる。

十字架から外されたあとのイエスを運ぶ人々。表情だけでなく、まくられた服や腕の筋肉が巧みに表現されている。

あたりを見回すと、みんな横長の椅子に腰掛けている。ここにいるととても落ち着くので、周りの人に習って僕も腰を下ろした。しばらく何も考えずにぼーっとしていた。

さて、そろそろ城に向かわなければ。椅子から腰を上げて、大聖堂の外に出た。

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