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ウィーン①[2024.2.20]

リュブリャナのホテルで朝食を取る。簡単なサンドがエントランスにあったので、購入した。

決して美味しくはないが、噛みごたえが合って朝食には十分だ。このホテルは本当に素敵だ。部屋は綺麗だし、エントランスにはテーブルがいくつもあって、来客がカフェを楽しめるようになっている。長テーブルではパソコンを広げて作業をしている人もいる。センスの良いBGMも空間に彩りを加えている。

緑茶のセルフサービスがあったので、ポットからお湯を入れて飲んだ。一日でリュブリャナを去るのが惜しい。

チェックアウトをすませ、駅前のバス停に向かった。今日はすぐに乗り場を見つけることができた。朝は少し冷え込んでいて、息を吐くと白い煙がでる。ラフマニノフの2番が聞きたくなった。空気の冷えた朝や夜は、この曲が似合う。スーツケースで手が塞がっていてイヤホンをつけられないので、鼻歌で歌った。

9時15分頃、昨日と同じようにミニバンのような車が迎えに来た。運転手は昨日ヴェネツィアからリュブリャナに運んでくれたミニバンの運転手とそっくりだ。スキンヘッドでいかにもスラブ系という顔立ち。あまりに似ているので、吹き出しそうになった。名前を呼ばれたので返事をし、スーツケースをトランクに預けて後部座席の奥に乗り込んだ。隣の席にはスラブ系の若い男性が座りこんだ。

途中2回のトイレ休憩を挟み、13時過ぎにウィーン西駅に到着した。予定よりも1時間ほど早い。ここで降りるのは自分だけのようだ。運転手にお礼を言い、まずはホテルに向かうことにした。

ここ数日、残金が気になっている。こちらはほとんどの店でカードが使えるので心配する必要はないが、概ねの予算をできるだけ守りたい。したがって駅で荷物を預かってもらうといった支出は控えたい。

ウィーンの街中を歩いていると、不思議と海外に来た感じがしない。なぜだろう。建物は明らかに日本と景観が違うが、ヨーロッパの建物にしてはシンプルな外見なのかもしれない。白を基調としており、飾り気が少ない。そして、道路はきれいに舗装されている。道路だけ切り取れば、右通行・左通行の違いさえあれど、まるで日本にいるようだ。

45分ほどスーツケースを引きずり、ホテルに到着した。部屋の鍵を受け取り、荷物を置いた。縦長で狭い部屋だが、差し支えない。安心して外に出た。

何か口にしたい。お腹が空いている。街中をぶらついてみることにした。ホテルを出て左に進むと、フランクフルトの店がある。入ろうかと思ったが、もう少し見て回ることにした。

角を右に曲がると、スーパーマーケットが現れた。入ってみよう。様々な食品の香りが混じっている。決して悪い匂いではない。

中はかなり広い。果物から肉、チーズ、お酒まで何でも揃っている。ホテルの近くに便利なスーパーがあるのは安心だ。奥まで進むとパン売り場がある。様々なパンがそれぞれのケースに入っている。安いものは200円ぐらい。シンプルなバゲットと、ピザのような惣菜パンを袋に詰め、レジに向かった。

レジの店員は無愛想だ。表示された金額を支払い、店のドアの近くで買ったパンを食べた。おいしい。スーパーのパンでこれだけ満足できるとは。

腹が満たされたので、シシィ博物館に行ってみることにした。シシィとはオーストリア帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の皇妃エリザベートの愛称である。

学生料金で安く入ることができた。展示室に進むと、静かな空間の中でみんなガラケーのような音声ガイドを耳に当てている。はっきり言って異様な風景である。自分も音声ガイドを頼めばよかったと少し後悔した。

エリザベートは結婚は束縛だとはっきり言っている。フランツ・ヨーゼフはエリザベートを深く愛したが、2人の生活は決して円満なものではなかったという。また、エリザベートは継母との関係で居心地の悪さを感じていたようだ。

そんなエリザベートは何かと理由をつけては旅に出て、なかなかウィーンにいようとしなかった。とりわけハンガリーによく赴いたとのこと。だが、60歳の時、旅行中にスイスとフランスの間に横たわるレマン湖でイタリア人のアナーキストに暗殺される。

ヨーロッパ一の美貌を兼ね備えていると言われたオーストリア帝国の皇妃の最後は、無政府主義者による暗殺だった。当日着ていた服の写真が展示されている。なんだか悲しい気持ちになった。

シシィ博物館の近くには、オーストリア国立図書館がある。ここは世界で最も美しい図書館の一つだと言われている。こちらも学生料金で安く入館できた。

マーシャル・プランの展示がある。1947年、国務長官のジョージ・マーシャルはハーヴァード大学の卒業式にてヨーロッパを救済する策を発表した。その10ヶ月後、議会でEurope Recovery Lawが通過する。これは、アメリカが16のヨーロッパの国々に130億ドルものカネ(ローン)・モノを与えるというプランだった。展示によれば、英米仏ソによって分割管理されたオーストリアはそのうち9.6億ドルを受け取ったとのこと。マーシャル・プランは戦後アメリカにおいて最も成功した政策となった。

外に出た。陽はすでに沈み、あたりは暗くなってきている。近くにマクドがあったので、中にはいった。今日は慣れ親しんでいるものを食べたい気分だ。ダブルチーズバーガーとポテト、コーラのセットを頼んだ。オーストリアのマクドも非接触で購入できる。入口のデバイスで注文し、カードで払えば店員が席まで持ってきてくれる。もっとも、自分はカウンターで受け取ったのだが。

2人席を見つけて座った。左隣は若い女性2人が、右隣りは高齢の男性2人が話し込んでいる。前の長机では学生が6人ほどでワイワイと話している。

ハンバーガーを頬張って、外に出た。ウィーンでは市庁舎が有名だという。近くにあるみたいなので、行ってみよう。

ウィーンの中心部は夜でも安心して歩くことができる。街が綺麗だと治安も良いのだろう。

ライトアップされた市庁舎が見えてきた。とても市庁舎とは思えない。もっと近くに行ってみた。

幻想的な色にライトアップされている。とても綺麗だ。市庁舎の前の広場はスケートリンクになっており、市民はスケートに興じている。みんな楽しそうで、見ているこちらも幸せになってくる。端的に言って素晴らしい空間だ。こういう場を提供できるウィーンの力量に感嘆した。

自分も少しでもこの空間に溶け込もうと、フランクフルトを買った。マスタードがぎっしりと詰まっていてとても美味しい。明日もここに来て食べたいくらいだ。

もっとここにいたかったが、帰るのが遅くなってはいけないので、名残惜しさを噛みしめながら広場をあとにした。

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