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台湾問題についての我が国の見解

 現在台湾有事を巡っての議論が盛んですが、これについて日本とアメリカの立場が異なることはあまり注目されていないように思います。
 アメリカは台湾が中国の一部であることを前提としていますが、これは日本とは異なります。
 台湾問題について重要なことは、日本は台湾が中国の一部であると認めたことは、歴史上一度もないということです。
 過去に大明帝国が台湾を領有していたという説がありますが、それについては歴史学上議論の別れるところであり、少なくとも日本は当時も今もその立場を承認していません。
 歴史上明確なのは、台湾がオランダの植民地であったことと、日系河洛民族の鄭成功により台湾が独立し「東寧王国」となったということです。鄭成功の子孫は日本に住んでおり、日本は東寧王国による台湾独立を事実上承認していたと推察されます。
 その後、東寧王国は大清帝国により亡ぼされましたが、大清帝国は中国ではなく満洲の王朝ですので、台湾が中国の一部になった訳ではありません。事実、大清帝国は台湾を「化外の地」、つまり「中華では無い領域」として支配していました。

(※大清帝国は大元帝国<モンゴル帝国>より帝位を譲られて成立した国であり、大明帝国<中華帝国>の後継国家ではありません。)

 なお、日本政府は当初大清帝国による台湾支配を認めていませんでした。そのため明治維新後も台湾は清の一部では無いと解釈して台湾出兵も行いましたが、その後イギリスの仲介で台湾を清の一部であると認めました。
 日清戦争により大清帝国は日本に対して台湾を割譲しました。これは満洲から日本への割譲であり、中国から奪った訳ではありません。
 大清帝国から中国が独立し中華民国が成立した際、そもそも中華民国に大清帝国の領域全てを領有する正統性があるかは異論がありますが、少なくともその時点ですでに大清帝国に台湾は含まれていませんでしたから、中華民国に台湾が含まれないことは明白です。
 大東亜戦争において中華民国は日本に宣戦布告する際、日清戦争の講和条約である『下関条約』の破棄を通告しました。これにより『下関条約』で割譲された台湾についても中華民国は奪還を目指すこととなりましたが、『下関条約』は満洲と日本の間に結ばれた条約ですから、中華民国のそのような措置は無効です。
 戦後中華民国が台湾を実効支配しましたが、これについて池田勇人首相は国会で「あなたがカイロ宣言、ポツダム宣言等からいって、台湾が中華民国政府の領土であるとお考えになるのならば、それは私の本意ではございません」と表明しており、日本政府は中華民国による台湾領有も認めていません。
 実際にはその表明よりも以前に、中華民国は亡び中華人民共和国が成立しています。現在の日本政府は中国の正統政府は中華人民共和国であるという立場であり、その中華人民共和国による台湾の領有権主張について「理解し尊重」するとしていますが「承認」はしていません。
 これについての説明は政権により微妙にニュアンスが異なりますが、私は立憲民主党の党員ですので民主党政権時代の閣議決定を引用すると「台湾の領土的な位置付けに関して独自の認定を行う立場にない」ということになります。立憲民主党の内部で当時の閣議決定を変更するべきであるという主張は、聴いたことがありません。
 一方のアメリカは、台湾が中国の一部であると認めた上で中国国内の民主化勢力として「台北政府」を捉えており、日本とは根本的な立場が異なります。
 「台北政府」が台湾独立を宣言できない要因の一つは、アメリカの圧力があると推察されます。
 日本としてはそうしたアメリカとの立場の違いを踏まえ、台湾問題に対しては独自の立場で臨まなければならないと考えます。


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