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寮美千子さんとの出会い。やっぱり、世界はもっと美しくなる。

詩人で、作家の寮美千子さん。

絵本から、純文学、ノンフィクションとあらゆるジャンルを手がけ、題材も先住民文化から宇宙天文までと幅広い、パワフルな作家さんである。

寮美千子さんとのご縁

その寮さんと、20数年前にご縁をいただいた。

当時は、作家活動の傍ら、即興演奏で詩を朗読するというライブパフォーマンスをされていた。近所に住んでいたジャズドラマーのTさんが、よく寮さんとコラボしており、そのご縁で、パフォーマンスもよく拝見したのだった。

詩人というイメージとはかけ離れた、よく喋りよく笑う、明るくて楽しい方だった。

長女が生まれた日に、寮さんはご著書を持って駆けつけてくれた。(自宅出産だったので、海老名の自宅まで来てくれた)

*初産の時のことはこちらから。

全部で10冊くらいいただいたと思う。

寮さんは、その1冊1冊に、まだ名前のない長女へのメッセージを書いてくれた。

きょう 生まれたばかりの 赤ちゃんへ 
月や星や 鳥や獣や 木や花たちと なかよくできる 
やさしい人に 育ってください
はじめて見る たんぽぽの花は
どんなふうに 見えるんだろうね
たくさんの きれいなものが
あなたを 待っているよ
この 地球のうえで

今読んでも、あの時の感動と喜びが蘇る。

というか、長女誕生後20年以上経ってみると、なんだかいろんな思いが去来して、しみじみ迫ってくるものがある。

当たり前だけど、やっぱり詩人だなぁ、と思う。

なんて豪華なプレゼントだったんだろう、と改めて思ってしまう。

なかでも長女のお気に入りは「こっぺくんほっぺ」だった。

この本、長女だけじゃなくて、うちの子どもたち、3人とも大好きだった。
この本を読んでは、子どもたちとよく「ほっぺ」した。
ほんと、今となっては懐かしすぎて泣ける。

そのうち私たちは火事に遭って、引越しを余儀なくされてしまい、寮さんとのお付き合いも途絶えてしまった。

火事のことはこちらに。よかったら覗いてみてください。

世界はもっと美しくなる

3年くらい前の夏、ふと立ち寄った渋谷の書店で、『世界はもっと美しくなる』を見つけた。

著者の欄に寮さんのお名前を見つけて、一人で大興奮した。

プロフィールには、奈良県に移住され、少年刑務所の「社会性涵養プログラム」で講師をされていた、と書いてあった。

全く、20年っていう歳月は、いろいろなことを体験させてくれる。

私たちだって、多分人様から見れば、ずいぶんと冒険してきたネェって言われるんだろう。

『世界はもっと美しくなる』は、少年刑務所に入った受刑者たちが書いた詩集。

犯罪を犯す前に、実は被害者だった子どもたち。
今、どんな心情でいるのか。
犯罪を犯すまでは、どんな暮らしをしていたのか。

詩の教室で、言葉を紡ぐことを体験した子どもたちは、閉ざしていた心を少しずつ開き、自分の言葉で詩を綴り始める。

お母さんへの思い、お父さんの背中を見て感じていたこと、自分を否定し続けてきたつらい過去、受け入れられる環境に出会ってどう変化したか....。などが、訥々とした言葉の端々から見えてくる。

心打たれるし、グラグラ揺さぶられる。書店で危うく号泣しそうになった。

長男の誕生日プレゼントに

待ち合わせていた夫がやってきたので、一度は書店を出たものの、書店の前の信号が青になって横断歩道を渡り始めた時、身体に稲妻が走った。

「『世界はもっと美しくなる』を、長男(真ん中の子)の誕生日プレゼントにしよう!」

確かその頃14歳くらいだった長男は、間違ったことや曲がったことが嫌いで、問題行動をする同級生なんかをよくこき下ろしていた。

その長男が、『世界はもっと美しくなる』に出会って変わった。

今までは不良みたいなやつは許せなかったけれど、そういう奴らにもいろんな事情があるんだなってわかった。奴らが悪いんじゃない。彼らも、犠牲者なんだね。

ちょうど反抗期も終わりかけていた頃だったので、心身の成長とともに、感性も繊細になっていたのかもしれない。プレゼントした私の方がちょっと驚くくらい、ストライクゾーンだったようだ。

言葉の力を教えてくれた寮さん

こうやって寮さんとの出会いを思い返してみると、うちの子どもたちは、寮さんによって、言葉の力を教えてもらってきたんだな、と改めて感じる。

みんな寮さんの絵本が大好きだったし(毎日毎日読んだし)、20年近く経ってまた再会したのも、まだ教えてもらえることがあったということかもしれない。

寮さんにはその後お目にかかっていないが、こうやってご著書で縁がつながっているようで、なんだか嬉しい。

いつかもし、再会することがあったら、寮さんに伝えたい。

あの時生まれたばかりの赤ちゃんは、ちゃんと寮さんの願い通り、月や星や鳥や獣や木や花たちとなかよくできる、優しい子に育ちましたよ、と。

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